ベトナムでも数少ないLED製造地元企業/ランイーベトナム有限責任会社

青色発光ダイオードの発明は日本発

 発光ダイオードの発明は画期的だ。電気を光に変換する技術として世の中を大きく変えた。現在パソコンやスマートフォンなどの画面にはLED液晶パネルが使用され、家庭や職場、工場内を照らす照明として電球や蛍光灯に変わって、LED白色灯が使われている。
 わたしの父はかつてNTT武蔵野通信研究所に勤める技術者だった。わたしがまだ子供の頃、その父が「発光ダイオードは赤や黄色を発色できても、まだ青色を発光する素子が開発されていない。もし青色ダイオードを発明できれば大発明になる」そう教えてくれたのだ。
 発光ダイオード(LED)の歴史は意外と古い。1906年英国のヘンリー・ジョセフ・ラウンド氏が炭化ケイ素に電流を流すと黄色く光ることを確認。その後、米国の科学者ニック・ホロニアックが赤色LEDを発明、以後、黄色、オレンジ、黄緑のLEDが誕生した。
 白色光を生み出すためには三原色の一つである青色発光ダイオードの発明が不可欠で、世界中の研究者、科学者が必死に取り組むも不成功に終わった時代が長く続く。
 突破口を開いたのは1964年、赤﨑勇が東大の研究所で「窒化ガリウム」が青色LEDとして有望とみなし、研究を続けるも失敗が続く。赤﨑は名古屋大学に移って研究を続け、天野浩氏と出会い、二人の共同研究が結晶生成技術を確立した。
 その後、日亜化学工業の中村修二氏が製品化を実現、20世紀中には開発されることはないだろうといわれた青色LED、強いては白色光を発するLEDの製造に道を開いた。
 彼ら3名は2014年ノーベル物理学賞を受賞したことは記憶に新しいところだろう。 
 青色発光ダイオードが発明されると、その後はあっという間に世の中にLEDを用いた製品が次々と開発されていく。
 そのひとつが光源として使用される高輝度白色発光ダイオードだ。電球などに比べて10分の1の電力しか必要としない省エネルギーの光源であり、蛍光灯のように水銀などの人体や環境に悪影響のある化学物質の使用もない。その寿命も10年と長く、光源の交換頻度も減らすことができる。まさに夢のような技術であり、ノーベル物理学賞を受賞したのもうなづけるだろう。 

省エネLEDライトの製造はB to Bで

今回ご紹介するのはランイーベトナム有限責任会社。同社はLED照明という電子製品を生産する数少ないベトナムローカルの製造企業だ。社長の名前はグエン・ヒュー・チュオン。工場はハノイ市ホアイドゥック県にある。2024年に創業したばかりだ。
 同社の主な製品は、主に事務所、オフィス照明に用いるLEDライトパネル各種と工場や倉庫などで使用されるLEDハイベイと呼ばれる照明を主に生産、輸出している。
 オフィス向けのLEDライトは、各種サイズ、明るさを取り揃え、オフィスで使用される白熱球や蛍光灯を代替する。LEDライトの耐用年数は10年、その間電球の交換は不要だ。従来の照明の明るさに匹敵する光をだしながら、使用電力量は5分の1だそうだ。耐用年数が長く、使用電力量もわずかとあっては、省エネルギー、コスト削減にも役立つ。環境にやさしい上に、企業経営にとってもうれしいはずだ。
 LED照明は軽量なこともあり、地震などの災害で天井の照明が落ちてきたとしても、その下で働く工員や従業員にも安全性は高い。白熱球や蛍光灯ならば、地震で破壊されれば、ガラスが天井から降ってくる。チュオンは、だから日本など地震の多い地域にあってはLED照明は安全性にも優れている。ぜひともオフィス、工場の照明としてLED照明を採用してもらいたいという。
 主な輸出先は、米国、韓国、日本だとのこと。中国の「安かろう、悪かろう」の製品と対抗するために、良い品質の商品をリーズナブルな価格で、かつ、保証期間も通常より長い3年から5年という長期間を顧客に保証している。
 米国へは自社のLAN-Eブランドで、韓国と日本向けにはOEM、つまり顧客のブランドで生産しているという。自社ブランドの小売販売網を築くのは、まだ創業してまもない企業にとっては容易ではない。まずはB to B、企業向け販売に注力している。

ランイー(LAN-E)社のEはElectric(電気)、Ecology(環境)、Economy(経済的)

 ランイー社の社長、チュオンは、ベトナムの企業として名の知れているPhenikaa社に21年も勤めていた。主に石材を扱ってきたそうだ。
 同社が投資をして発光ダイオード、LED照明の生産・販売を2018年にはじめた。チュオンはその事業の責任者となったが、コロナ禍に突入したことで、事業がふるわず、撤退を余儀なくされた。
 しかしチュオンはその事業を諦めきれず、同社を退職すると同時に、ランイー社を設立し、昨年からLED照明の生産、販売を開始したのだという。本事業は必ず成功するとの確信を彼は胸に抱いているようだ。
 社名のランイー(LAN-E)は、LANという言葉には結合、接続といった意味をもたせ、EはElectric(電気)、Ecology(環境)、Economy(経済的)といったいくつかの言葉の頭文字からとっている。いずれも現代の企業経営にとっても重要な要素だ。それを社名に込めているのだと語るチュオン。
 現在の生産キャパシティは月産15,000製品という。日本の企業からのOEM生産委託に期待している。
 米国への輸出にあたりLED照明の技術基準であるETL証明書を取得し、ISO9000番も取得した。
 チュオン地震は日本を訪れたことはないそうだが、前職では日系企業との付き合いは多く、日本人の友人もたくさんいるという。ゴルフコースを一緒にまわったりなど、チュオンはプライベートな関係も築いてきたそうだ。だから、日本企業との関係はさらに発展させたいという。
 LED照明といっても、中高級品を中心にラインナップをはかり、品質の低いものには手をだしたくないという。中国製品との差別化が課題だ。
 部品は中国や日本から一部輸入しているが、部品の現地調達比率を35%以上とすることで、はじめて原産国ベトナムとして原産地証明書を発行できるとあって、その調達比率を確保するためにも心を砕く。
 チュオンはタインホア省出身の45歳。ハノイに出てきてからはすでに21年が経ち、両親もハノイに住んでいる。
 ベトナム政府は情報通信産業に加えて、ポスト中国の電子・電気産業の一大生産地となることを目指している。しかし、その多くが外資系企業を誘致することが想定されている。ただ、ベトナムの経済発展には、ベトナム資本、ブランドの電子・電気企業の裾野あっての産業発展であろう。その中にあって、同社はベトナムでも珍しいベトナム資本の電子機器製造企業だ。
 ベトナムの経済発展の中で、チュオンのLAN-E社が大きな企業に成長するであろうことを期待したい。

文=新妻東一

グエン・ヒュー・チュオン社長

ランイーベトナム有限責任会社
LAN-E Vietnam Limited Company

プロフィール

2024年ハノイ市ホアイドゥック県に設立されたLED照明製造・輸出企業。社長はタインホア省出身のグエン・ヒュー・チュオン。主な製品はLEDライトパネルとLEDハイベイ照明。主に米国、韓国、日本に輸出。日本企業からは同社をOEM生産委託先としてほしいとの希望がある。

>> この企業のプロフィール情報を見る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメントは利用できません。

おすすめ記事

カテゴリー一覧

ビジネスに役立つベトナム情報サイト
ビズマッチ

ページ上部へ戻る