事例紹介

機械加工部品の不良に関する交渉サポート

フラットユニストラットの端部に溶融亜鉛メッキの溜まり

プロジェクト概要

日本企業G社が発注した部品の不良発生を受け、ウォンズベトナムが製造元との調整・翻訳・交渉を担当。原因特定から補償合意、再発防止策の策定まで主導し、信頼関係を維持しながら円満な問題解決を実現。

フラットユニストラットの端部に溶融亜鉛メッキの溜まり
フラットユニストラットの端部に溶融亜鉛メッキの溜まり

お客様からのご依頼相談内容

製造業務向け加工部品の販売を手がけるG社より、ベトナム国内の製造工場と連携し、高強度ユニストラットの共同開発・製造・販売を行いたいとの依頼を受け、ウォンズベトナムチームはI社とベトナム企業T社とのマッチングを成功させました。その結果、G社はT社に対し、溶融亜鉛メッキ処理が施されたフラットユニストラットおよびケプユニストラットの製造を発注されました。

これまでにG社はT社へ数回の注文をしており、製品製造後はランダムに製品を抜き取りオンラインによる品質確認をしていました。両社で注文製品の図面を見ながら専用の検査器具を使い製品の寸法、表面の傷、歪みなどをチェックしています。さらに、梱包前には製品の写真、梱包後の荷造り写真を撮影しI社へ送る流れになっています。

しかし、今回の注文は至急製造し、船便に乗せる必要があったためオンライン検査を行う時間を取ることが難しい状況でした。今までT社はG社の注文で一度も不良品を出したことがなく、図面どうりの製品が納品をされていました。そのため、今回はスピードを優先しオンライン検査と梱包前の製品写真撮影を省き、梱包後の写真のみを撮影しG社へ写真を送る流れになりました。


今までの注文では不良品がありませんでしたが、今回の注文において、フラットユニストラットの端部に溶融亜鉛メッキの溜まりが見られたほか、端部断面の寸法が事前に合意された図面と異なっていたことが確認されました。さらに、ケプユニストラットのメッキ処理においても色ムラが発生し、G社より品質に対する懸念が示されました。G社よりこの問題を解決したいとご依頼を頂きました。

プロジェクトの目標

本プロジェクトの目標は、製品不良の原因を明確にし、製品検査基準の再確認および対策を協議・実施することにあります。

また、不良品の製造に伴う責任の所在および賠償費用の負担について両社で話し合いの場を設け、将来的な問題発生を防止するための改善策を決めることを目指します。

プロジェクト進展の流れ

ステップ1: 不具合報告の受領と原因調査・品質資料要求

G社より品質に問題のある製品の画像および不良箇所の説明を受け、BIZMATCH(ウォンズベトナム)は即座に、製造元であるベトナムのT社に連絡し、不具合の原因調査とオンライン会議の開催を依頼しました。 

さらにBIZMATCH(ウォンズベトナム)から以下の資料の共有をT社へ要請しました。

  1. フラットユニストラットの検査シート
  2. ケプストラットの検査シート
  3. フラットユニストラットおよびケプストラットの塗装仕上げ報告書
  4. 今回の製品および過去納品分の製品写真

その間、ウォンズベトナムチームはG社とT社の間で締結された契約書を再確認し、特に品質基準、違約時のペナルティ、賠償手続きなどの条項を精査しました。これにより、今後の対応における法的な流れを明確にしました。

ステップ2: 品質資料の翻訳・比較検討・報告書作成

T社から必要な品質検査資料および塗装仕上げ報告書を受領後、ウォンズベトナムチームは迅速にベトナム語から日本語へ翻訳し、今回の不良の製品とT社のカタログ製品および過去製品と比較・検討を行いました。
その報告書をもとに、情報をまとめG社に報告書を提出し、T社およびG社との間で早期にオンライン会議を開催するための調整を進めました。

ステップ3: 賠償協議に向けた会議準備

両社の会議時には、賠償についての話し合いが必要なため、T社には賠償についての決済権のある社長の同席を依頼しました。会議日時と出席者が確定した後、ウォンズベトナムチームは社内で事前準備会議を開催し、以下のような議題を含む会議資料を作成しました。

  • 不具合の原因
  • 品質検査基準の見直
  • 不具合発生時の対策協議
  • 将来的な防止策の提案
  • 不良品に対する責任範囲と補償費用の負担の明確化

ステップ4: オンライン会議の実施と補償合意

会議時はベトナム企業T社の通訳と進行はウォンズベトナムチームが担当し、事前に両社の情報や要望を整理していたため、会議は円滑に進行しました。T社は品質管理工程での不備を認め、G社に謝罪を行いました。
また、T社は今回のロットに関して一部補償を行うことで合意し、今後同様の問題が発生しないよう対策を講じると明言しました。加えて、新たな品質検査ルールを提案し、G社もこれを了承しました。

G社スタッフが商品の検品
G社スタッフが商品の検品

スタッフが大変だったこと

1. タイトなスケジュールと迅速な対応へのプレッシャー

T社からの製品納品直後、G社より品質に関する懸念が示されました。今回は返品や交換対応では納期が間に合わないため、品質基準を満たすためにG社は自社工場で追加加工を実施しました。結果的にその修繕は発注者であるG社の努力と労力をかけたことで納品基準に求められる品質を担保できましたが、再発防止の協議と発生したコストに関する交渉は避けられない問題になりました。G社およびT社の双方とも、迅速に原因を特定し責任の所在を明確にすることを求めていました。こうした中、ウォンズベトナムチームは、限られた時間の中で両方社との連携・情報調整・解決策の提示に奔走することとなりました。

2. 双方の利益を公平に守るための調整力

ウォンズベトナムチームは本案件において中立的な立場を保ちつつ、G社(顧客)とT社(製造パートナー)の間に立ち、公平な判断と対応が求められました。G社の正当な利益を守る一方で、T社との長期的な協力関係も維持する必要があり、技術的なトラブルを含む事案においては、交渉や説明に高度なバランス感覚と慎重な対応が求められました。

3. 初期段階での情報の不透明さ

対応初期において、T社からは製造工程および品質検査に関する情報が十分かつ明確に提供されておらず、不具合の原因分析や責任範囲の明確化に困難を伴いました。

しかしその後、ウォンズベトナムチームが積極的に状況を把握し、追加資料の提供を要請したところ、T社は快く協力に応じ、必要な情報を迅速に提供してもらえました。その結果、問題解決に向けた対応が円滑に進むようになりました。

4. 技術的に複雑な課題への対応

不具合の根本原因が原材料・加工工程・品質管理のいずれにあるのかを正確に特定するには、製造方法と工程、品質チェックの方法と工程の実態の解明、原因となったボトルネックの究明力が必要となりました。限られた時間の中で間接的な立場から原因となった実態を解明することは、ウォンズベトナムチームのミッションとなりました。 

ユニストラットの製造工程
ユニストラットの製造工程

プロジェクトの成果

1. 問題の根本原因を明確化

ウォンズベトナムチームは、継続的な努力と専門的なアプローチを通じて、本件における不具合の根本原因を明確にすることに成功しました。
具体的には、T社は自社でユニストラットを製造後、検品をして溶融亜鉛メッキ工程を外注していることがわかりました。またT社はその溶融亜鉛メッキ後に外注先で検品を行わず、輸送倉庫に直送した事実が判明しました。つまり最終出荷前の品質検査を怠ったことが、基準に満たない不良品がT社へ納品される結果になったことを究明しました。この成果は、ウォンズベトナムスタッフがT社より提供された溶融亜鉛メッキ工程に関する報告書や製品画像をもとに詳細な分析を行い、その内容を踏まえてT社と直接やり取りを重ねながら事実確認を進めたことによるものです。

2. 補償交渉の成功

ウォンズベトナムチームは、T社とG社の間に立ち、中立的かつ円滑な調整を行った結果、T社に対して不良品の再製造にかかる一部費用を負担することを了承させることに成功しました。

会議に先立って、製品画像や検査報告書などの客観的な資料を整理したことに加え、技術的および品質管理の観点からT社の製造工程における過失を両社で共有・確認できたことが功を奏し、スムーズな交渉と合意形成につながりました。

さらに、両社の立場や契約内容を十分に理解し、感情的な対立を避けて冷静かつ論理的に話し合いを進めたことも、交渉成功の大きな要因となりました。

3. 是正および再発防止策の策定

T社は今後同様の問題が発生しないよう、メッキ工程の見直し、品質検査の強化など、具体的な是正措置を講じるとともに、再発防止に向けた体制の構築を約束しました。

具体的には、溶融亜鉛メッキ工程における作業手順および管理基準の見直し、ならびに最終出荷前の品質検査項目と判定基準の強化が含まれます。さらに、検査担当者への再教育の実施、及び工程内での中間検査体制の導入についても検討が進められていました。

特に、T社との協議の中で、工程上の問題点を段階的かつ論理的に明らかにしたことが、T社側に自社の課題を認識させ、改善の必要性を納得させる大きな要因となりました。

加えて、ウォンズベトナムチームが中立的な立場でG社・T社双方と継続的な対話を行い、対立を回避しながら建設的な解決策を模索したことにより、T社としても信頼関係を維持した上で改善に前向きに取り組む姿勢を示しました。今後、T社は改善策の実施状況について定期的に報告を行い、ウォンズベトナムチームおよびG社と連携しながら再発防止体制の構築と運用を強化していく予定です。

4. 協力関係の維持と信頼の強化

何よりも重要なのは、ウォンズベトナムチームの迅速かつ的確な調整により、G社とT社の間の協力関係が損なわれることなく、むしろ相互の信頼関係が強化されたことです。

両社は引き続き今後の取引を継続する方針であり、G社からはウォンズベトナムチームの専門性と対応力に対して高い評価と感謝の意が寄せられました。

ベトナムスタッフが工夫したこと

1. 視覚的な資料の活用による情報共有の効率化

 文書による説明だけでは問題の実態を十分に伝えることが難しいと判断し、ウォンズベトナムチームはT社に対して、製造工程・不良品の詳細画像、ならびに過去の出荷分との比較画像の提供を依頼しました。これにより、G社および技術チームはより明確かつ客観的に状況を把握でき、原因分析も一層精度の高いものとなりました。その結果、各関係者が具体的な根拠に基づいて協議・判断を行うことが可能になりました。

2. 「Win-Win」型の解決策を提案 ― 協力関係を維持する建設的アプローチ

責任追及や補償請求に偏ることなく、ウォンズベトナムチームは双方にとって有益な「Win-Win」型の解決策を提示しました。具体的には、T社が製造工程、特に最終検品体制を見直し再発防止に取り組むことを条件に、G社は協力関係を維持し、将来の取引における商業条件の優遇も検討するという内容です。このアプローチにより、対立ではなく信頼と改善に基づく持続的なパートナーシップが築かれました。
この「Win-Win」とうい考えはウォンズベトナムの経営理念のひとつでもあります。

3. 品質管理体制の強化に向けたガイドラインの構築

ウォンズベトナムチームは今回の対応を一過性の対処で終わらせるのではなく、品質管理体制全体の強化に結び付けました。発生した不具合を踏まえ、G社・T社と連携し、今後の同様製品に適用可能な品質チェックリストを策定。明確な基準を設けることで、製品の一貫性と信頼性を高めることを目指しました。

4. 関係各所との情報連携と透明性の確保

問題解決プロセス全体において、ウォンズベトナムチームはG社・T社双方との密接な連携を維持し、進捗・データ・結論などすべての情報を正確かつ誠実に共有しました。お互いの齟齬が起きぬよう議事録は会議前、会議後に日本語、ベトナム語の議事録を作成し、G社、T社へ共有をしました。G社、T社が議事録内容を確認後、両社に確認のサインと捺印をしてもらい、議事録データは両社で保管をしています。このような方法を徹底することで、誤解の防止と信頼関係の維持に寄与しました。

日本人スタッフが工夫したこと

グローバル化が進む現代において、異なる国の企業同士が協力する機会はますます増加しています。それに伴い、新たなビジネスチャンスが生まれる一方で、技術基準の違いや商習慣、価値観の相違に起因するトラブルや誤解、さらには紛争が発生するリスクも高まっています。

こうした国際間の取引においては、可能な限りトラブルの発生を未然に防ぐことが重要であり、万が一問題が生じた場合でも、まずは直接または間接的な交渉・協議・調整によって、互いに納得できる共通認識と合意を形成することが最優先されるべきです。
無用な争いは、関係各社の信頼関係や企業評価に悪影響を及ぼすだけでなく、時間的・経済的損失を伴う可能性が高いためです。

ウォンズベトナムチームは、ベトナムと日本、異なる国の企業間の協業を支援する立場として、常に中立・公平な視点から問題の核心を把握し、双方の正当な利益が守られるよう努めてまいりました。クライアントである企業の立場を理解しつつも、製造パートナーへの配慮も忘れず、長期的な信頼関係を築くための橋渡し役を果たすことを目指しています。

G社とT社は互いの考え方や業務の進め方についてより深く理解し合うことができ、今後の製品づくりや品質管理に関する共通の基準を新たにすり合わせることができました。
T社は、発生した不具合に対して原因調査と是正対応を行い、誠意をもって一部補償にも応じたことで、G社に対して責任ある製造パートナーとしての信頼を維持することができました。
一方、G社側も今回のT社の対応を通じて、その問題解決能力と誠実な姿勢を評価し、今後の製品改善に向けた確かな取り組みと品質向上へのコミットメントを確認することができました。結果として、両社にとって実質的なメリットと信頼関係の再構築につながる有意義な調整となりました。

今回の案件対応を通じて、ウォンズベトナムチームのチームは実践を通じた貴重な学びを得ることができました。問題の本質を見抜く分析力、多角的な視点から判断を下す思考力、そして多国籍環境での交渉力など、今後の国際業務において不可欠なスキルが一層強化されました。これらの経験を糧に、私たちは引き続き、複雑化する国際取引の中でお客様の利益を最大限に守る支援役として邁進してまいります。

プロジェクトリーダーの総合評価

ベトナム企業と取引を進める上で、重要なことのひとつは契約書でルールを明確化しておくことです。ウォンズのベトナム人スタッフの強みは、ベトナム企業の商取引に関しての注意点を熟知していますので、この契約交渉プロセスをとても重視して交渉をしてくれることです。また同時にベトナム企業側にも日本企業と取引する上で、注意をしてもらうこと、遵守してもらうことを事前に説明をして理解を深めてもらった上で契約締結をしてもらいます。

合わせて日本企業側には、ウォンズの日本人スタッフが契約の注意点を説明の上、契約条件になぜこの条項を取り入れるのか、またベトナム企業と取引する上での注意点やアドバイスを事前に説明をして、両国企業の相互理解を経て、相互取引をスタートしてもらいます。

今回のベトナム企業T社は、日本企業との取引が初めてだったこともあり、契約条件を理解してもらうことにベトナムスタッフも苦労していました。タフな交渉が必要でしたが、お互いの関係を健全に維持するために必要な契約条件をベトナム企業側に正しい理解をした上で締結してもらっているため、問題が生じた際の責任の所在やコストの負担についての揉め事は最小限に抑えられます。

また日本企業側は不良品のトラブルが起こると慌ててしまうことが多いですが、ベトナム企業の特性として、きちんと話し合えば柔軟に対応してくれることをお伝えして安心してもらいます。両国で品質に関する考え方の違いからギャップが生じることはありますが、ベトナム企業の言い分をきちんとヒアリングして、一定の理解を示すことで、問題の本質や実態を明らかにすることができます。逆に問題に対してベトナム企業側へ責任追求が強すぎると、正論だけでは本質や実態が明らかにできなかったり、取引継続が難しくなるケースをよくお聞きしています。

今回のケースも当初は、溶融亜鉛メッキ後に輸送倉庫へ商品が直送されていた事実は明るみになっていませんでした。少しずつ根気よく紐解き、原因を究明したウォンズベトナムスタッフの努力と貢献は、日本企業G社からも高くご評価をいただけました。

ビジネスに役立つベトナム情報サイト
ビズマッチ

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