小さくてもキラリと光る会社でありたい〜真のグローバルビジネスとは?<前編>/Wons Vietnam.,JSC 二宮徳仁
- 2026/01/22
- 日系企業インタビュー
2026年の最初の「日系企業インタビュー」は、ベトナムで日越のビジネスマッチングサービスを行っており、今ご覧になっている情報サイト、Bizmatchの運営会社でもありますWons Vietnamの二宮徳仁社長です。Wons社の強みや数多くの日越企業を見てきたからこそわかるグローバル企業の考え方についてお話し頂きました。なお今回のインタビューは新春特別企画として、前編・後編の2本立てでお送りします。
目次
1.Wons社の強みとは?
① 日本からベトナムへ〜コロナ禍で生きた、自社の強み
土佐谷:まずは御社がベトナムに進出したきっかけをお伺いできますか?
二宮:親会社が日本でコンタクトセンター事業をやっています。コンタクトセンターには、24時間対応というものがあるのですが、時差を使ってうまく回していけるような方法はないかな?と思ったことがひとつ。もうひとつは、元々Wonsは、“World Office Network Service”ということで、ITの技術や集めた情報を活かして、全世界の様々なオフィス・業種をビジネスネットワークでつなげるような会社になりたい、と思って始めた会社でした。いつかは海外へと考えていたので、約2年拠点探しのために様々な国を回りました。
土佐谷:それはアジアだけではなく、ヨーロッパなど他の地域も含めてということですか?
二宮:もう色々です。ただ自分の中では、“親日の国であること”を条件にしていました。実際色々な国を見て、いきなり世界中のあちこちで拠点を作って運用するというのは、かなりハードルが高いな、と思いました。ですので、まずは自分たちが会社を設立して、色々な企業さんとお付き合いさせて頂き、グローバルビジネスのあり方を吸収して、そこから将来のグローバル展開に繋げようと考えました。やはり自己資本でやれることは限りがあるので、色々な業種の様々なベトナム企業さんの経営のやり方とか、取引先の作り方とか、どんなビジネスが儲かる/儲からないか、ベトナムで儲けている会社さんは、どういうポイントで儲けているのかということを情報収集したいという目的もありました。このBizmatchは、ちょうどコロナの時期も重なったこともありますが、いろんな企業さんの情報を収集して、それを無料で掲載して、お客様をつなげていくことで、いろいろ得られるものがあるんじゃないかということでスタートしたんです。

海外拠点を探しに、世界を回っていた頃。

初めてベトナムに来た頃。
② 時間をかけて作り上げること=Wons社のビジネスの基礎
土佐谷:コロナ禍で動けない中、お客様と繋がれる場所として、サイト立ち上げた訳ですね。
二宮:本当はもっと泥臭くつなげていきたい、という思いがありました。Wons Vietnamは2020年1月に設立した会社なのですが、コロナで約2年半、あまり活動ができませんでした。僕自身、時間をかけて集めた情報は、とても価値があると思っていて、それは日本で行っている上場企業さんの下請け業務、コンタクトセンター業務を通じて、僕らみたいな小さな企業が勝っていくためには、お金だけでは買えない“時間がかかること”を軸に、ビジネスの基礎作りを作っていかなきゃいけない、と。お客様のプロファイリング情報を収集し、積み上げていくということは、自社の強みでもありました。コロナ禍で、強みの中で活かせることからスタートせざるを得なかったことが、結果的によかったと思っています。
土佐谷:御社の強みについて、もう少しお伺いできますか?
二宮:日本の企業も含め、僕たちの会社が徹底しているのはB to Bビジネスで、25年くらいやってきました。お客様の声など、オペレーターが集めた情報をビッグデータとして解析をして、それをどうサービスの改善とか新商品の開発につなげるかということが、実はWons Japanのコアなコンピタンス。コンタクトセンターの規模としてはすごく小さな会社ですが、なぜ大手であるNECさんとか富士通さん、キヤノンさん、光通信さんが、僕たちの会社を重宝して下さるかというと、通常コンタクトセンターは外部に業務委託をしますよね。ですから、自ずとコンタクトセンターと本社のノウハウは別々になってしまうんです。本社側はコンタクトセンターの状況がわからない、だから無駄が発生します。例えば、コンタクトセンターに電話をすると。「サービスの申し込みは1番」「解約は2番」「その他は3番」と案内されます。それを僕たちは、100件の入電の内、何割がここに流れていて、というのを数字で取るんです。その時に配置されている人数は適正なのか、この1件処理をするのに、なぜここまで時間がかかったのか、を考え、適正な人数を発注者にアドバイスします。セカンドオピニオン的な仕組みが、発注者側からすると、外部のプロジェクトチームを持つことで、業務の監査・管理・業務効率化ができる、と思って頂けるのです。
土佐谷:データの分析やアドバイスは、コンタクトセンター事業を始めた当初から行っていたのでしょうか?
二宮:いいえ。当初、Wonsはパソコン教室、パソコン修理事業やホームページ制作事業など、地域に根ざした事業をやっていました。これらをより活性させる企画はないかな、と考えていた時に、Yahoo! BBショップの運営に関するコンサルティング事業に携わり始め、そこで色々ビジネスを学ばせて頂きました。時が流れ、次第にWonsで何かきちんとしたビジネスをやりたい、と思った時、これからはITがいろいろ普及するだろうけど、これから高齢化社会になるし、サポートのビジネスが絶対に必要とされる、ということで、Wons独自のコンタクトセンターを立ち上げました。
土佐谷:当時、サポートビジネスを行っていた企業は珍しかったのではないでしょうか?
二宮:僕たちは早かったですね。リモートでつないで、お客様と電話でやりとりするということを日本ではじめたのは、実は僕たちの会社なんです。
土佐谷:そうなんですね!あれは、便利なサービスですよね。
二宮:最初に僕らがやっていたのは、出張サービスのサポートでした。直接お客様のところに行かなくても解決できる方法はないかな、と思った時に、すでに韓国ではリモートサポートビジネスが早く始まっていました。「このビジネスは、今後絶対に日本でも必要とされる」と思い、韓国企業から日本の総代理店の権利を譲って頂き、日本で展開していきました。今では当たり前のサービスですが、当時は画期的でした。小さなコンタクトセンターが生き残るためには、戦略が必要です。僕たちの会社は、そういった情報がいち早く入ってくる会社だったんですよ。

Wons社のコンタクトセンターが立ち上がった頃。

コンタクトセンターの様子。
③ 企業秘密は一切なし!“ギブ・アンド・テイク”が、より良い結果を生む
土佐谷:画期的なサービスであればあるほど、独占したいと考えがちです。御社はリモートサポートの仕組みを企業秘密にしなかったということでしょうか?
二宮:僕たちは、常にすべてをオープンにしています。最初はお試しみたいな形で、僕らに仕事を依頼して頂くと、こういう価値を提供できますよ、というのを伝えて、徐々に浸透させていく感じです。当然、僕らがそのノウハウを持って自分たちで拡大した方が、一時的な売上利益は上がります。しかし、取引先の自社コンタクトセンターであったり、他の委託先―僕らのライバルになりますが、そこに拡散し、競争環境ができると、不思議なことに自然とまた自分たちに有益な情報が集まってくるようになるんです。僕らはそれを誰でも使えるようにマニュアル化にしていくのですが、他社はどこもやらないので、それも自分たちの価値に繋がります。成功ノウハウを組織で共有し合う、という考えは、僕がソフトバンクのビジネスをさせて頂いている時に聞いた話で、すごく心に残りました。
土佐谷:ギブ・アンド・テイクですね。
二宮: なので今の会社も、業務委託を受託する際は、すべて僕たちが得たものを、すべてオープンにしていくようにしています。
土佐谷:簡単そうですが、それを実行できる会社は少ないでしょう。日本の会社は、自分たちの強みを同業他社に見せることをしません。有益な情報を持っていたら、守りに入ってしまいます。
二宮:100人規模の会社だからこそできることかもしれませんね。
土佐谷:会社の規模を大きくするというよりは、現状の規模を維持しながら、いろいろなことをやっていくのが、理想というお考えですか?
二宮:小さくてもキラリと光る会社でありたい、と思っています。会社は規模が大きくなればなるほどコントロールが効かなくなります。これは、これまで色々な社長さんをお会いして感じたことです。株主総会、定期取締役会で監査とか主幹事証券とか出資者のベンチャーキャピタルが、いろんなことを言ってきて、自分がやりたかったではない方向に進んでいく状況を、たくさん目にしてきました。客観的に見て、5億から20億くらいの規模の会社を経営してる会社の社長が1番自由。自分が投資したい先に投資できたり、従業員への還元も含めて自分の意思を反映しやすいんです。
土佐谷:二宮社長から見て、現在の自社の規模感はいかがでしょうか?
二宮:コロナ禍では、政府のバックもあり、全国に有象無象のコンタクトセンターができました。その後、コロナが終息し、一気に予算が縮小された時に価格競争に陥り、多くの会社が淘汰されていきました。幸い僕らはそれを耐え抜き、今とても良い状況です。今後も年商6億から8億円規模をキープできたらと考えています。
土佐谷:先ほどのお話にもありましたが、売上が上がりすぎるのも良くないということですね。
二宮:良くないですね。こういう労働集約のビジネスは、抱えれば抱えるほど業務を切られたときのダメージが大きい。
土佐谷:でも御社のような良い会社であれば、是非ともお願いしたい、というお客様も多いと思います。身の丈にあった規模を保つために、依頼をお断りするケースもあるのでしょうか?
二宮:僕らは、“営業利益が○○%取れないビジネスは受けない”と決めています。それはクオリティを担保できないからです。僕たちのビジネスは、解約率を下げたいとか、もっとお客様の利用率を高めたいとか、マーケティングの手法を使った問題解決に価値を見出そうとする、同じ価値観持つお客様や他にはない価値をわかって下さるお客様に刺さるようです。そこでうまくバランスが取れているのかな、と思っています。

Wons社の地域イベント参加の様子。
2.ベトナム人スタッフのやる気をどう引き出すか?〜Wons Vietnamで行っていること
土佐谷:企業には、それぞれ“理念”があります。日本では、研修や社内ミーティングなどで、二宮社長の考え方を直接、従業員の皆さんに伝えることができます。言葉や生活環境、文化が違うベトナムで、企業理念や二宮社長のお考えをベトナム人が理解することは、とても難しいことと思います。企業理念の伝え方において、両国でやり方を変えているのでしょうか?
二宮:国に関係なく、企業理念の浸透は、規範からスタートすると考えています。考え方や価値観は説明しても、なかなか浸透しない。それは日本であっても同じです。理屈は理解できても、一人一人育ってきた環境が違いますから、完全に共感するのは難しい。例えば、レスポンス。僕たちが社内で決めているルールは「3時間以内には何らかのレスポンスをする」です。準備ができてから回答しよう、という考えを否定する訳ではないのですが、ルールに従っているかどうかがすべて。守れなかったらマイナス、80%できたらプラスマイナスゼロ、90%できたらプラス1、完璧にできたらプラス2という形で、給料と連動させています。
土佐谷:実にシンプルで、わかりやすい!
二宮:こうすることが最終的に、お客様のことを考えることに繋がる、と考えています。このあたりは、日本の会社の評価システムが役に立っていると思います。
土佐谷:ベトナムにおいても、考え方のベースは日本と一緒ということですね。
二宮:逆にベトナムで学んだことを日本で共有することもありますよ。
土佐谷:評価は誰が行っているのですか?
二宮:自己評価、同僚、上司の3名です。3名の平均が最終得点になります。3ヶ月連続プラス評価になると給料が上がる仕組みにしています。
土佐谷:どのくらいの頻度で行っているのですか?
二宮:毎月です。給料日前に本人と合意して、毎回関係者で評価会議もします。
土佐谷:毎月とは驚きました。3人が評価し、その上、評価会議ですから、かなり時間がかかりますよね。
二宮:従業員が多いと、こういう丁寧なフォローはできません。どういう対応が僕らのいう理念なのか、行動に置き換えて浸透させています。行動に反して評価が下がったら、自己責任。上がったら、自分の努力。これは、セルフマネジメント力を高めていくことにも繋がるんです。
土佐谷:公平な評価をするために、“見える化”しているところが素晴らしい。ベトナムでここまで徹底するというのは、すごいことだと思います。
二宮:コンタクトセンター事業で養ったデータ解析が、我が社の強みですから。でも、彼らも納得できないものは納得できないって言いますよ。そこについては、きちんと説明したり、「あっ、そうだったんだ」と、こちらが修正することもあります。
土佐谷:評価基準ひとつとっても、御社が時間をかけながら、システマチックに物事を進めていく会社なんだな、ということが伝わるお話しですね。
二宮:Wons Vietnamの規模を一気に大きくしないのも同じ理由からです。企業文化や運営の仕組みを確立しながら、色々な企業さんのビジネスモデルを吸収したいな、と思っています。僕の経営スタイルはすぐに結果が出ず、ものすごく時間がかかります。でもそれが育った時、おそらく他社さんが簡単には追いつけなくなっているものに仕上がっているという自負があります。例えば、営業資料的なものもひとつひとつフォーマット化、つまり“型”を教えていっています。
土佐谷:Wons Vietnamで働いているベトナム人の皆さんは、日系企業で働いた経験をお持ちなのですか?
二宮:経験がある人/ない人、どちらもいます。日系企業に勤めた経験があるスタッフも「今までこんな細かいことやったことないから大変」と言いますが、慣れてきたら飄々(ひょうひょう)とこなしています。
土佐谷:先日の「ベトナム情報レポート」のベトナム人経営者へのインタビューにもありましたが、ベトナム人は長期的な目標を立てることが難しいと。優秀なスタッフさんに長く働いているために、工夫されていることはありますか?
二宮:「何をすれば給料が上がるのか」ということは、リアルな話で、とても重要だと思います。
「これを頑張ったら、半年後こうなれる」とか、「これをあと3ヶ月頑張ったら、こう給料が上がる」という物事の積み上げが大切。ですから、そこは明確にするようにしています。
土佐谷:理念と行動、評価がうまく連動すると、社内に良い連鎖が生まれますね。
二宮:僕らは「我が社の理念を実践している人は誰ですか?」というアンケートで選ばれた人の行動を分析しているんです。コンピテンシーを分解して、それを評価基準にして、定量を入れる。定量を決めるというのが、ものすごく大事。定量化できないものを評価項目にしたらダメなんです。
土佐谷:評価項目は誰が決めているのですか?
二宮:評価する人が集まって、みんなで話し合いをして決めます。


<後編に続く>
文=土佐谷 由美

<プロフィール>
二宮 徳仁(Ninomiya Norihito)
1972年/大阪生まれ
WONS VIETNAM JOINT STOCK COMPANY CEO
株式会社ウォンズ 代表取締役
◆略歴
5歳の時に、父親が故郷で水産業をしたいと、家族で愛媛県宇和島市に移住。
高校卒業後、プロミュージシャンを目指し大阪へ。
20歳直前に、母親の大病を機に夢を諦め、故郷に戻り、父親の会社を手伝うも、仕事中の不慮の事故で、右目を失明。その後、世界中の大手水産業者に魚を供給している、水産総合商社の社長との出会いでITビジネスへ転身、「世界規模で活躍し、夢を与えられる経営者になりたい」と決意。
1998年 ウォンズを創業
2000年 ウォンズを法人化、代表取締役に就任
2018年 トクシングループのサービス企画責任者として、ベトナムエリート人材を日本の中小企業に紹介する「Tokushin+Japan50」をリリース
2020年 WONS VIETNAM JOINT STOCK COMPANY設立
◆趣味:旅行
ベトナムの好きな場所:バンメトート(ベトナムの中部高原地帯にあり、“コーヒーの街”として有名)
→人々の自然な笑顔や豊かな生活を見ていると、住んでいる人たちがみんな幸せと感じる街だから。
*ウォンズ社(日本法人)や二宮社長については、こちらでも紹介されています↓
https://www.wons.co.jp/news/interview-wons01/
https://www.wons.co.jp/news/interview-wons02/
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