目指すは、プラスチック成形専業から組立へ/ヴーホアン・テクノロジー社ジェネラルマネージャー ファム・ヴァン・カイン
- 2025/12/25
- ベトナム企業インタビュー

こんにちは、Bizmatchのライター新妻です。今回ご紹介するのはベトナム・旧ハイズオン省、現在はハイフォン市に立地するプラスチック射出成型業を営むVu Hoang Technolgy社をご紹介いたします。
2020年、コロナ禍での設立、創業からいきなり世界的な疫病蔓延という困難に直面しましたが、2022年から本格的に事業を展開、プラスチック成形と金型製作、そして「組立」までを見据えた意欲的な事業展開を行っています。今回は同社のゼネラルマネージャー、ファン・ヴァン・カインさんに、同社の歩みと今後の展望を伺いました。
パンデミック下の船出し、今は「製造業」に注力

新妻:カインさん、本日はお時間をいただきありがとうございます。Vu Hoang社は2020年設立とのことですが、まさに新型コロナウイルスの世界的な流行と重なる時期でしたね。
カイン:そうですね。当社は2020年に設立されましたが、当時はワクチンの不足などもあり、ベトナム国内でも厳しい制限がありました。そのため、最初の2年ほどは成長が停滞せざるを得ず、2022年にようやく本格的な活動が始まりました。
新妻:当初はどのようなビジネスからスタートしたのでしょうか。
カイン:当初は中国からプラスチック原料の仕入れ・販売といった商社的な活動も行っていました。しかし、2024年からはその商流を切り離し、100%「製造」にリソースを集中させています,。一時的に売上高は減少しましたが、これは生産能力を最大化するための前向きな決断だと思っています,。
新妻:なるほど、商社機能を捨てて製造専業へ。まさに「ものづくり」へ集中しようということですね。現在の会社の規模について教えてください。
カイン:現在は約60名の従業員を抱えています。創業当初は500平米ほどの小さな工場から始まりましたが、その後2,000平米まで拡張しました。そして今、さらなる飛躍を目指して新たな工場拡張を進めています。
強みは「金型から成形まで」

新妻:Vu Hoang社の具体的な製品や強みは何でしょうか。
カイン:当社のコア・コンピタンスは、プラスチックの金型製作と、それを用いた射出成形(成形品の製造)の両方を一貫して行える点にあります。お客様からの要望に対し、金型を設計・製造し、そのまま最終製品として納品することが可能です。
新妻:主な取扱製品にはどのようなものがありますか。
カイン:多岐にわたります。例えば、サムスン向けの電子基板用治具や、家庭用コンセント、子供向けの玩具、さらには歯車(ギア)のような精密な産業用プラスチック部品も手掛けています。材料としては、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)を主力としており、バケツや椅子、食器といった日用品から複雑な機械部品まで対応可能です。
新妻:顧客層も大手との取引も多いそうですね
カイン:はい。ベトナム国内企業はもちろん、中国、そして最近では韓国企業との取引も増えています。また、間接的な形ではありますが、パートナー企業を通じてキヤノンのような日系大手の部品製造に携わった実績もあります。
台湾に留学、国際貿易学ぶ

新妻:カインさんご自身の経歴についても伺いたいのですが、台湾に留学されていたんですよね。
カイン:はい、台湾に4年間住んでいました。台湾の文化大学で学び、修士課程では国際貿易を専攻しました。台湾では観光ガイドをしたり、BBQショップを経営したりと、ビジネスの現場も経験しました。
新妻:その経験が現在の経営にどう活かされていますか。
カイン:他国の文化や商習慣を理解していることは、大きな武器になります。現在40歳の私は、2020年にベトナムへ戻り、以前から知り合いだった会長のバック氏に誘われる形でVu Hoangに加わりました。また、共同創業者の一人であるルアン氏は日本での勤務経験があり、日本語も堪能です。こうした「国際的な視点」と「現場主義」の融合が、当社の社風となっています。
未来へのビジョン:2026年に向けた「組立」への挑戦

新妻:今後の展望についてお聞かせください。現在、工場の拡張を進めているとのことですが。
カイン:はい。現在、延床面積7,200平米(1フロア3,600平米の2階建て)の新工場を準備しています。この新工場の目的は、単に成形機の数を増やすことだけではありません。
新妻:といいますと?
カイン:「組立(アッセンブリー)」への本格参入です。成形機による生産は、台数によって売上の上限が決まってしまいます。しかし、人手を介した「組立」の工程を取り入れることで、付加価値をさらに高めることができます,。
新妻:部品単体ではなく、完成品に近い形での納品を目指すのですね。
カイン:その通りです。例えば、ロボットの腕や足、胴体といったパーツを自社で成形し、それを最終的に組み立てて一つの製品として仕上げる。そのような一貫生産体制を、2026年に向けて構築していきたいと考えています。
日本の読者へのメッセージ
新妻:最後に、この記事を読んでいる日本のビジネスパーソンにメッセージをお願いします。
カイン:ベトナムの製造業は今、大きな転換期にあります。当社はまだ規模は小さいですが、「すべての関係者が利益を得られる(Win-Win)」という理念のもと、高品質なものづくりを追求しています,。私たちが持つ柔軟な対応力と、新工場での組立体制は、必ずや日系企業の皆様のニーズにもお応えできるはずです。いつか日本の美しい桜を見に行ける日を楽しみにしつつ、ここベトナムで皆様とお会いできることを願っています。
ライターのひとこと
Vu Hoang社を取材して感じたのは、彼らが単なる受託製造会社(OEM)に留まらず、明確な「成長戦略」を持っていることです。特に、商社機能を捨てて製造に特化した決断や、将来の「組立」への投資は、ベトナム製造業が「下請け」から「パートナー」へと進化している証左と言えるでしょう。
カインGMの国際的なバックグラウンドと、ルアン氏の日本経験。このコンビネーションが生み出すVu Hoang社のスピード感は、ベトナム進出を検討する日系企業にとって非常に魅力的な選択肢になるはずです。
文=新妻東一

ヴーホアンテクノロジー株式会社
Vu Hoang Technology Co., Ltd.
プロフィール
創業は2020年。ファム・ヴァン・カインは現在ジェネラルマネージャー。ハノイから約80kmのハイフォン市(旧ハイズオン省)にある。主な製品はプラスチック金型製作、射出成形で、部品の組立も行う。射出成形機各種、金型製作設備に加えて、組立工場も有している。
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