Bizmatchベトナム企業インタビュー第2回:SEIKI Innovations Vietnam/ダン・チャン・カインCEO

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SEIKI Innovations Vietnam社員一同

〜日本に学びつつ、良い点を受け継ぎ発展めざす精密機械メーカー

 セイキ・イノベーションズ、という社名をはじめて耳にしたとき、てっきりSEIKIは「精機」という漢字だろうと推測し、同社は日本の資本の入った合弁企業か日系外資100%の企業に違いないと思い込んでいた。

 ZOOMの画面の向こうにあらわれた同社の最高経営責任者(CEO)であるダン・チャン・カインに開口一番、まず社名について伺った。

 「SEIKIはもちろん、日本語の精機、つまり精密機械を製造する会社という意味で名付けました。ある日本人の先輩が私を応援してくれてはいますが、セイキ・イノベーションズ社は私の会社でベトナムの会社なんですよ」という。

 2015年、ハノイから車で1時間のバクニン省ホアンソン工業団地に2千平米の工場を建設した。主な製品は精密機械部品、配電盤、ラック、型、冶具、作業台、台車、棚などの工場設備部品の製造、プレス・CNCなどの加工、溶接、塗装組立の委託加工も引き受けている。主に日本のほか米国、豪州、中東、韓国への輸出、あるいはベトナム国内の外国合弁企業が主な取引先だ。

 「3年前には大阪のある企業に配電盤の輸出に成功し、継続的なお取引をいただいています。ベトナムの日系企業2社とも経常的に取引があります。特に私の会社にとって日本は大きな市場です」とカイン。

 当社の売上は2021年1月から現在までは約500万米ドル、従業員・工員数は95名とのこと。カインは「売上もまだまだ小さいんですよ」と謙遜してみせた。

 カインはハノイ市ザーラム県に1971年に生まれた。その風貌と精密機械メーカーのCEOであることから、私は彼が機械工学などの技術を大学で学んだのかと思いきや、カインは「いや、大学では英語、法律を学び、弁護士の資格も持っています。その後経営学修士も取得しました。自分は何が専門かと問われれば、法学でしょうか」という。

 法律家である彼がなぜ現在の精密機械メーカーの社長をしているのか。それは彼が大学院卒業後に本田技研工業のベトナム駐在事務所に勤めたことにはじまる。

SEIKI Innovations Vietnam/ダン・チャン・カインCEO(右から2番目)
ダン・チャン・カイン(右から2番目)

 当時はまだホンダ・ベトナムの工場もなく、駐在事務所でオートバイのセールス・マーケティングを担当となった。

「当時は仕事が忙しくて、日系企業に勤めたけど、日本語を学ぶ時間もなくてね、以来日本語はしゃべれないんだ」と笑う。

 ホンダ・ベトナム社は1996年に営業許可証を取得し、1998年にはオートバイ第1工場がオープンする。カインは当時新設する工場のために人事から経理、購買など工場の開設に必要なありとあらゆる仕事をまかされたという。

 「工場というのはあらゆる材料を加工することで美しいモノに生まれ変わります。私はその工業によって創り出された『美しいモノ』が大好きになったのです。機械部品の製造は工業の中心にあり、その裾野産業は自動車・オートバイなどの製造にはなくてはならないものですし」と彼が精密機械メーカーの代表者となる夢を育んだ最初は日本のホンダに勤めたことがはじまりだという。

 カインはその後総合商社・ニチメン(現・双日)に入社し、4年間輸出入業務について学んだ。2005年にはバクニン省の日進電気の会社設立から工場の立ち上げを経験し、ここでも工場のAからZまでを学ぶと同時に会社の代表取締役として仕事をまかされ、経営から輸出入、法律問題まで工場経営の責任者として働いた。

 2011年にはフォスター社で8ヶ月を過ごしたあと、ベトナム資本の電機メーカー・カンガルー社でオーナー経営者のもとで働き、今度は企業経営のみならず、企業オーナーという仕事の重要さについても学ぶことができたと述懐する。

 カインは転職を繰り返しながら、自らが経営者、オーナーとなるための「学び」を得て、そして自分の会社を興す決意を固めていったのだ。自らの会社であるSEIKI Innovations社を6年前設立した。

SEIKI Innovations Vietnam/ダン・チャン・カインCEO

 同社のモットーは「ベトナムの価格で、日本の品質を」というものだ。カインはこれを次のように説明する。これはお客様へのお約束というべきもので、品質が第一であること、それも日本の企業のように常に新しいことを学び、倦むことなくカイゼンにカイゼンを重ねること、しかしだからといってコストが高ければ仕方がない、コストはベトナム価格に抑えるということだと。

 「自分は日本の文化について何か学んだことはないのですが、日本人とともにはたらいて、彼らの仕事のスタイル、やり方に影響を受け、学ばせてもらいました。文化の違いはありつつも日本のそれは受け入れやすいものでした。ただ自分は日本の企業文化、働く文化を無批判に受け入れるのではなく、合理的なものは受け入れ、わたしには不適当だと思える、不合理な点はフィルターにかけた上で受け入れています」とカインはいう。

 たとえば、日本人は上下関係が非常に厳しく、目下のものが目上の人に反対意見を述べるのは難しい文化だと感じたという。彼はそこで社内では年齢に関係なく、従業員や経営者、管理職との間ではオープンでフラットな関係を築くようようにつとめているという。

 また日本人は従業員に信頼を寄せるかわりに「報・連・相」を求め、現場を大切にするなどの良い点があるが、とかくそれらの仕組みを複雑化させがちなので、それを単純化して適用するなどしているともいう。

SEIKI Innovations Vietnamオフィス風景

 日本と取引していてなにか仕事上の難しさはあるかと尋ねるとカインはこう答えた。

「私は、輸出先の国の文化や仕事のやり方を学び、それに合わせて輸出取引の交渉を行います。韓国なら韓国、日本なら日本の文化、取引の仕方をね。あとは日本人もその法律、原則に則って仕事をしますよね。私も法律家ですから、法律、原則に従って仕事をするだけです」

 カインには3人の子供がいる。二人の娘と一人の男の子だそうだ。長女は23歳、現在ドイツに留学中だという。今年50歳を迎えたカイン。日本の企業文化を学び、仕事のスタイルを覚え、それを取捨選択して自らの工場経営に活かし、さらなる会社の発展をめざしている。日本にとっては彼らはいつか怖い存在になるかもしれない。

文=新妻東一

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