祖母や母も続けてきた織物を今も続ける伝統工芸村に立地したタオルメーカー/タンフォン繊維有限会社

 ベトナムにおける軽工業はその出発点を伝統工芸村に持つものが多い。今回ご紹介するタイフォン社もタイビン省のランメオ村と呼ばれた織物業を伝統とする工芸村に立地している。
 タイビン省のウェブサイトによるとランメオ村、現在はフォンラーと呼ばれている地域は元々シルクの織物を生産する土地として700〜800年もの歴史を有しているという。
 タイビン省を含むベトナム北部はかつてトンキンと呼ばれ、16、17世紀には日本の交易相手として欠かせない地域であった。
 当時の日本は海外から生糸や絹織物の輸入を必要としていた。それは倭寇に悩まされた明が海禁政策をとっていたこと、その後明は女真族の侵攻によって滅び、清が成立するまで戦乱が続き、生糸や絹織物の輸出などができなかったことから、トンキンやパタビヤ(現在のインドネシア)が絹織物の産地として台頭した。
 おそらくランメオ村はトンキン産絹織物の産地の一つであったことは想像に難くない。
 トンキン産の陶器、当時は安南焼と称されたが、それと同様、中国において清の支配によって政情も落ち着くと、絹織物や陶器などの製品の輸出も再開し、東南アジアの工芸品の産地は中国の製品との競争に敗れて衰退していく。
 輸出は衰退しても国内の工芸品の産地としては生き残ったのだろう、多くの伝統工芸村がベトナム北部には残された。タイビン省のフォンラー地区はそうした村の一つだ。
 現在でも同村には1500世帯、6000人の人口に対して2000台もの織機が稼働しているという。
 1980〜1990年代には同村の織物が旧ソ連や東欧各国に輸出されるようになり、その後ドイモイ政策に伴って、綿タオルを日本や韓国へ輸出するようになった。
 そのためタイビン省のこの地域には綿紡績や織物工場が多数設立された。中には織物工場としてはじまった企業がその後不動産業、金融業にも進出し、ホーチミン市の高層ビルの一つ、ビテクスコタワーを建設したビテクスコも、ランメオ村に生まれた企業の一つだ。

 今回同社のインタビューに応じてくれたのはドー・ティ・トゥイ、同社の販売管理者だ。彼女自身もこの地域に生まれ、少なくとも母親や祖母の仕事も繊維業だったという。彼女の妹も紡績工場で働いているというから、まさに家業として繊維業を営んでいるといっていいだろう。
 ベトナムではコロナが収束しているが、今回も取材はZOOMを利用したリモート取材であることをお断りしておく。

 タンフォン縫製の創業は2003年、ハノイから車で1時間30分にあるタイビン省フンハ県タイフォン村に工場がある。ただし、会社を創業したのは2003年であり、それ以前から事業としてのタオル縫製業は行なっていたという。会社を設立したのは自社製品を海外に輸出をするためのものだ。
 同社のおもな製品は綿タオル各種だ。ちいさなおしぼりサイズのものから、ハンドタオル、スポーツタオル、バスタオルなど各種タオルの製造が可能とのこと。同社は原糸を紡績から購入し、自社の織機でタオル地を織りあげ、それを自社の染色工場で染色、漂白し、仕上げたものを裁断、縫製して綿タオルを製造している。織機は主に中国製の機械を利用している。
 主な輸出先は日本、輸出量全体の7割が日本に輸出されているという。残りの30%は韓国をはじめ、欧州、米国などに輸出されている。
 タオルやレストランやホテル、エステ・スパなどの業務用のほか、家庭用のものなど、需要家の要望に応じて対応できるという。通常は日本での再検品、再梱包を想定して、バルクで輸出されることが多いとのことだ。

 同社はタオルのほかに不織布製品の取扱もある。コロナのおかげで生活必需品となった不織布マスクのほか、レストランなどで使用される不織布の使い捨てのハンドタオルも製造、販売、輸出している。不織布ハンドタオルは湿式、乾式いずれにも対応でき、レストラン名やブランド名の包装紙への印刷による名入れにも対応している。不織布ハンドタオルは国内向けのほか、英国やサウジアラビアにまで輸出しているとのことだ。
 タンフォン社はまた貿易や商事部門にも力を入れている。取扱品目は綿糸や染料、ゴムびきの軍手、ラタン・竹工芸品だ。特にラタン・竹工芸品は客先が共通するのだろう、日本向けに輸出もしているという。
 同社の輸出能力は綿タオルのコンテナ換算で月20〜30コンテナーを輸出可能だ。ただこのコロナ禍にあって、タオルの需要が大きく減ってしまい、現在は生産能力の半分しか生産ができていないという。コロナが一定収束したとはいえ、海外の需要は復調しておらず、日本の新しい買手を探して、生産能力いっぱいまでタオル輸出したいというのがタンフォン社の希望だ。
 日本のタオルの需要家のみなさんにはぜひ700〜800年の歴史ある織物の伝統工芸村に立地し、母、祖母の家業を受け継いだと自負する人々が働くタンフォン社にぜひタオルの注文をいただければ幸いだ。

その他おすすめ企業インタビューはこちら
ベトナムの縫製工場:国営から出発し民営化、SDGsの課題にも取り組むチエンタン縫製

タンフォン繊維株式会社

タンフォン繊維株式会社
Tan Phuong Textile Company Limited

プロフィール

2003年ベトナム北部タイビン省の伝統工芸村フォンラー地区に創業。従業員数200名。主な製品は各種タオル類、医療用マスク、業務用手袋。綿糸、染料の扱いも行う。ハンドタオル、フェイスタオル、マスク、保護手袋といった商品の販路​​を拡大したい意向あり。

>> この企業のプロフィール情報を見る

さらに詳細な情報を知りたい場合は
下記よりお問い合わせください。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

マッチング企業リストを見る

Bizmatchでは、日本企業との資本提携や業務提携を希望するベトナム企業の情報をデータベース化し、一部公開しております。特定業種の企業を絞り込んで検索することなどもできますので、ベトナム企業についてお調べの方はぜひご活用ください。


サービスメニューのご案内

Bizmatchでは、ベトナムにおける戦略的なビジネスパートナーを見つけていただくための各種支援サービスをご提供しております。『ベトナムの市場を開拓したい』『ベトナム企業と商談をしてみたい』『ベトナムに取引先を見つけたい』『ベトナムの企業を買収したい』『ベトナム進出のサポートを手伝ってもらいたい』等、ベトナム企業とのマッチング実績が豊富なBizmatchに是非お気軽にご相談ください。



ベトナム企業インタビュー記事一覧へ戻る

おすすめ記事

カテゴリー一覧

ビジネスに役立つベトナム情報サイト
ビズマッチ

ページ上部へ戻る