プラスチックなど工業用添加剤を自社開発、製造しベトナムでオンリーワン、ナンバーワンをめざす/トゥアンツキベトナム有限会社

 プラスチック、合成樹脂は、20世紀初頭にベークライトの工業的な生産がはじまって以来、その材質は硬いものから柔らかいもの、薄いものや厚手のもの、色も形も様々なものが開発され、用途にあわせて発展してきた。現代生活のありとあらゆる分野に浸透し、便利に使用されている。

 プラスチックが石油という化石燃料から作られていること、極めて安定した物質なため、自然環境で分解することがない。使用済みのプラスチックはゴミとなって埋め立てられ、海洋に流れ出して、環境を汚染し、動物や魚類の生存をすら脅かすまでに至っている。世界的にはプラスチックの使用が制限されたり、代替品に置き換わろうとしている。

 石油以外の画期的な原料から作り出され、廃棄した際には生分解が可能で、かつ使用時には安定した、プラスチック、合成樹脂にかわる素材が生み出される日もあるだろうが、その日まではプラスチック、合成樹脂は引き続き私たちの生活を彩ってくれるだろう。

 プラスチックはもともと熱によって簡単に成型が可能であるものの、日光や熱に弱い性質がある。そんなプラスチックの弱点を補い、プラスチックのもつ性質を長く保つための添加剤が数多く開発されている。

 今回紹介する企業、トゥアンツキベトナム社はこの合成樹脂やゴム、塗料など工業製品を製造する際の離型剤、安定剤などの添加剤を製造・販売する企業である。

 インタビューに応じてくれたのは同社の社長、カオ・タイン・トゥアンだ。ベトナムはすでにコロナ禍を脱したかのように、コロナがなかったころの通常の状態に戻っているが、引き続きZOOMを利用したリモートでの取材であることをお断りしておく。

 トゥアンは1979年生まれの43歳。日本の東京工業大学に相当するベトナムのハノイ工科大学の機械科を2002年に卒業した彼はデンソー・ベトナムに就職、3ヶ月ごとに日本とベトナムとを往復し、学びつつ、働いた。2003年から2008年の5年間であった。2009年にはユニデンに転職、携帯電話の部品の製造に関わった。

 トゥアンに「日本語は今もしゃべれるのですか?」と尋ねると「いや、今はすっかり忘れてしまって、まったく話せないんだ」と苦笑する。

 2012年には同社を退職、10年日系企業に働き、日系企業の工場生産や営業のノウハウも学ぶことができた。

 2013年、彼はプラスチックやゴム、化粧品などに用いられる添加剤を取り扱う商社「トゥアンツキ・ベトナム有限会社」を設立する。なぜ機械科を卒業したトゥアンがプラスチックやゴム、ペイントに用いられる添加剤の売買に興味をもつようになったのか、と尋ねると「実はこの仕事は僕の妻の実家の家業だったんだよ」と教えてくれた。

 彼は日系企業につとめながらも、いつか独立を夢見ていたのだろう、妻の実家の家業に将来性ありと見越して会社組織とし、その代表取締役におさまったのだ。

 社名の「トゥアン・ツキ」のツキは日本語の「月」を意味している。実はトゥアンの妻の名前はグェット、ベトナム語を漢字に直すと「月(げつ)」になる。そこで、トゥアン夫妻の共同で運営する会社であることを示すため、その社名に妻の名前を日本語にして「ツキ」という名前と自分の名前を重ね、「トゥアンツキ」としたのだそうだ。

 「家で彼女の名前を呼ぶときは日本語のツキでなくて、ベトナム語のグェットのままだけどね」とトゥアンは笑う。

 創立当初はゴム、プラスチック、ペイントなどの工業用添加剤を取り扱う商事会社であったが、2017年には工場をハノイ郊外に設立し、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、鉛系安定剤、カルシウム系安定剤を次々と自社で開発、製造・販売を開始した。

 ステアリン酸亜鉛は合成樹脂やゴムに使用し、型から容易にはがせるようにする離型剤用いられる。ステアリン酸カルシウムは、合成樹脂の安定剤の原料となるほか、生地の防水剤、製紙、ビールなどに用いられる添加剤である。鉛系、カルシウム系安定剤はPVCパイプやケーブル被覆の安定に用いられている。ニッチな商品であるものの、プラスチックなど工業製品の製造には欠かせない添加剤を商売のメインに据えた慧眼はすばらしい。

 「この分野で外資の力を借りずに独自に工業用添加剤を開発し、製造・販売するベトナム企業は当社がはじめてで、そして唯一でしょう」と胸をはるトゥアン社長。

 同社の生産量は2020年から2021年は73%増、2021年から22年で44%増で、22年は25,663トンを達成したという。ハーナム省の工業団地に2工場をあらたに建設中で、来年2023年4月には稼働を開始するという。主にステアリン酸鉛と鉛系安定材を製造する工場と、ステアリン酸カルシウムとカルシウム系安定材とを製造する二つの工場を立ち上げ、さらに生産量を37%増加させ、来年は3.5万トンの生産量を確保する予定だという。

 2013年創業、それも生産をはじめたのはつい5年前のことだ。そしてコロナ禍にあってもまったくといっていいほど影響を受けることなく、さらに2つの工場へ投資するというのだから、その急速な成長ぶりには目をみはるものがある。

 トゥアンツキ・ベトナム社の主な取引先はベトナム資本や韓国の各種工業製品メーカーが種だ。なかにはビンズオン省の日系添加剤メーカーとそのタイ子会社への輸出も行っているという。

 来年は二工場を新たに建設して、4月には稼働を開始させるので、新たな販路を求めている同社。日本市場は条件も厳しいし、品質の基準も高い。日本への輸出に成功すれば、その後の仕事もやりやすいとあって、日本市場の販路開拓にも意欲をみせている。

 「日本でのこれら添加剤の生産は採算があわなくなっている。海外からの輸入を増やさざるを得ないはず」そう語るトゥアン。

 添加剤のベトナムからの調達をお考えなら、ぜひとも同社に相談してほしい。

文=新妻東一

カオ・タイン・トゥアン社長

トゥアンツキベトナム有限会社
TUAN TSUKI VIETNAM CO., LTD

プロフィール

2013年創業。ハノイ市ハドン区に本社があり、工場は同市クックオアイ県にある。代表取締役はカオ・タイン・トゥアン。主な製品は合成樹脂、ゴム、ペイントなど工業用添加剤各種。ベトナム国内向けのほか、輸出にも積極的だ。自社開発の製品を製造・輸出しているところに強みがある。2023年4月にハーナム県に二工場が稼働する予定。

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