水産大国ベトナムで、スリ身、タコ、エビを海外に輸出しさらなる拡大めざす/キエンクオン輸出入水産物加工株式会社

 日本の皆さんの食卓に並ぶエビ。その2割はベトナム産だとご存じだろうか。2020年のエビの輸入量は15万トン。ベトナムからは2.9万トン(19.1%)だ。日本産は1万トン程度で日本の市場に並ぶエビはほとんどが輸入エビだ。だからあなたが昨日食べたエビの天ぷらか、フライはベトナム産の可能性は高い。
 ベトナムにおける水産業は国内総生産の5%を占め、2019年のベトナムの水産物輸出は8500万米ドル(108.8億円)、総輸出額の3%を占めている。世界的にみてもベトナムの水産物輸出高はトップ5に入る。ベトナムは水産業大国の一つだ。
 中でもタイラインド湾に面したメコンデルタ省であるキエンザン省、カマウ省において水産業は農業と共に重要な産業だ。今回ご紹介するキエンクオン輸出入水産物加工株式会社はこのキエンザン省にある。
 キエンザン省は北にカンボジアと国境を接し、西はタイラインド湾に面している。そのタイラインド湾には昨今観光開発が著しいフーコック島を擁していることで注目されている省だ。古くはカンボジア王国領であり、17世紀末に同国から総督に任命された中国・広東省生まれのマクキュウが興した半独立の港市国家ハティエンだった。ベトナムの統一国家である阮朝の領土となったのは19世紀に入ってからのことだ。
 今回も著者の住むハノイから遠く離れているキエンザン省のキエンクオン社にオンラインで、社長のダオ・ホアン・チエン氏に取材した。

 キエンクオン社は名称の通り水産加工会社だ。製品は100%輸出しているという。社長のチェン氏は1981年キエンザン省に生まれた。今年で42歳。
 同社はホーチミン市に本社を構えるフークオン・グループの子会社として2007年に創業した。フークオン・グループは水産加工会社にはじまり、不動産開発、風力発電などの再生可能エネルギー、観光運輸業など約20社を傘下に収めたグループ企業だ。
 キエンクオン社の主な製品はエビ、タコ、スリ身の3種類。主な輸出先として日本、韓国、中国、ロシア、EU、タイ、シンガポールを挙げた。工員、従業員合わせて600名を抱える。工場はキエンザン省に3カ所ある。
 2021年一年で同社はスリ身1.1万トン、タコ3500トン、エビ1000トンを輸出した。
 スリ身はエソ、イトヨリ、キントキダイなどの白身の魚を原料とし、食塩を加えて練ったものを10kg単位でブロックにし、さらにブロック2個をカートンに詰めて輸出する。
 エソという魚は耳慣れない魚だが、トカゲのような口をもち、釣り人にはたとえ釣れても外道としてリリースされてしまう魚だそうだ。小骨が多く、ハモのように骨ぎりもできない。ただすり潰して食べる分には美味なので、スリ身の原料として主に用いられている。
 スリ身は輸入国ではスリ身を焼けばチクワに、蒸せばカマボコに、茹でればはんぺん、揚げればサツマ揚げになる。私たち日本人には親しみのある食べ物だ。最近はそのヘルシーさが受けて欧米でもSurimiとして人気があるのだという。
 タコは冷凍のまま、加工せずに出荷される。エビは頭や尾、殻などを剥いて冷凍し出荷されている。「伸ばし」といってエビの頭と尾をとり、背腸をとってエビの身に切れ目を入れて伸ばした形で出荷されるものもある。これをそのまま天ぷらに揚げればピンと身の伸びた見た目の良い天ぷらができるのだ。
 日本の顧客はマルハ、極洋、ニチレイ、紀文、松田産業などスリ身や海産物の輸入加工企業が主な取引先だ。日本にはまだまだ取引ができていない顧客はあるとのこと、新規取引先の開拓にも積極的だ。
 同社は日本のみならず韓国、中国にも輸出をしている。韓国にはタコが、中国にはスリ身が売れるようだ、
 コロナ禍にあっても感染予防のため、ベトナム政府からの操業停止などの措置はなかったという。食品の生産は生活に必需であるとして、むしろ優先的に生産を続けるように奨励されたという。もちろんコロナによる感染拡大はキエンザン省においても酷かったとチェン社長は語った。

 世界的なコロナによる売上減などの影響を受けることはなかったそうだが、キエン社長にも悩みはあるようだ。それは原料の入荷量がここ数年減ってきていることだ。
 新聞報道によればタイランド湾を漁場とする漁民たちは近年、漁獲量の急激な減少に見舞われているという。
 「親子二人で4日間出漁して、売上は300万ベトナムドン(2.4万円)、ガソリン、食事代を差し引いたら100万ドン(7900円)しか残らない。これなら家に戻って、元に戻るのを待ってから漁に出た方がマシだよ」と語るキエンザン省の漁師の声を新聞が紹介している。
 国連食糧農業機関(FAO)や一部の国際組織によれば、ベトナムの沿海・近海の80%以上もの量の魚が漁獲の対象となっており、そのうち25%の量の魚が過剰に漁獲され、枯渇するにいたっており、漁獲量が著しく減少、多くの海洋生物が絶滅の危機に瀕していると警告している。
 原因は沿岸部に工業団地や住宅などの開発が急速に進み、海洋生物が誕生し、生息する環境、特にサンゴ礁などの破壊によって魚類などの生物の生存が脅かされている。また電気や爆薬といった、文字通り魚を一網打尽にするよう違法な漁獲法をとる漁民らによって、魚を取り尽くしてしまい、ベトナム沿岸の漁業が長期的には衰退しかねない。
 ベトナム政府と天然資源環境省は海洋の保全、生物多様性の維持、海洋の天然資源の合理的な開発と保全といった海洋環境汚染の防止にも努めるよう求めている。

 キエン社長は元飲食店の管理を任されていたようだが、9年前に同社に転職、今は社長となった。日本企業との付き合いで難しさはあるか?との質問に「いや、難しいところはないですね。何よりも日本企業には『信用』がある。他の国の企業と異なって日本企業の『リスク』は少ないんですよ」と答えてくれた。日本企業たるもの、彼らの信用を裏切らないように努める必要があるだろう。

 最後にキエン社長に「夢は何か」と尋ねると「海外からの需要はある、原材料を多く手に入れて、その期待に応えることです」と笑った。「ついでに売上と報酬が増えると嬉しい」とも付け加えた。
 食卓に並ぶかまぼこ、はんぺんなどの練り物やエビを前に、彼らのような企業の努力があって食卓に並ぶ商品だということを日本の消費者は忘れないようにしたい。

文=新妻東一

キエンクオン輸出入水産物加工株式会社
社長 ダオ・ホアン・チェン

2007年創業。親会社は不動産、風力発電、観光輸送業、水産加工を手がけるフークオン・グループ。スリ身、タコ、エビを海外輸出100%。

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