ベトナム農産品の高品質化とブランディングに挑戦する農産物輸出商社/サンライズインズ有限会社

 私の妻はベトナム南部、タイニン省の出身だ。両親とも農業を営んでいた。その昔はコメを、その後はバンレイシやランブータンなどの果樹を植え、7人もの子どもたちを育てた。だが、もうその果樹園はない。娘たちは都会に出て結婚、息子たちは皆農業以外の仕事についた。その子どもたち、つまり私の甥や姪たちも都会の大学を出て、就職してした。田舎の農業を継ぐものはいなかった。そして今やその農地は都市開発計画を前に価格が高騰している。かつて日本がそうだったように工業が発展し、都市化が進むと農業はその相対的な重要性を失っていく。それはベトナムでも身近に起きていることだ。

 ベトナムは今も工業化、都市化の途上にあり、労働人口の半分近くは農業に従事している。農業はベトナムの基幹産業としていまだに重要だ。ましてや世界的に心配されているやがてくる食糧危機に直面したとき、農業と食糧生産は安全保障としても重要性を増してくる。

 以前にも紹介したが、ベトナムはコメ、コーヒー、カシューナッツ、コショウといった農産品では、その生産量と輸出数量は世界トップクラスにある。ベトナムにおいて農業は小規模生産にとどまっていること、栽培、収穫、加工技術が不十分で農産物の付加価値が低いこと、農産物のブランディングにも成功していないなど、課題は多い。

 ベトナム農業の現状から出発し、なおこれらの問題を解決して、世界市場に挑戦している企業がある。その一つが今回ご紹介するサンライズ・インズ有限会社だ。同社の副社長であるチュック氏にお話を伺った。

 同社は2017年設立のまだ若い会社だ。社長はトー・ズイ・トン。彼は20年にわたってベトナムの農産物輸出に関わった経験をもつ。サンライズ・インズ有限会社を立ち上げる前は同社社長のトンはチュックの上司だった。やはり同じく農産物輸出に携わる同じ企業につとめていた。その会社を飛び出してトンは新しい会社を立ち上げた。チュックは上司の新会社の設立の話に夢をみて、トンの創業した新会社に参加した。

 現在、同社の主な取扱品目は多岐にわたる。コメ、カシューナッツ、コーヒー、シナモン、ショウガなどの香辛料類、生鮮・乾燥フルーツ、それに水産物である魚、イカ、エビ、タコの扱いまである。

 同社はベトナム全土に輸出のための農産品加工工場を5ヶ所に有している。コメの一大山地であるメコンデルタのティエンザン、ドンタップ両省に1ヶ所づつ計2ヶ所、コーヒーは南部のビンズオン、ビンフォック省に1ヶ所づつ計2ヶ所、シナモンは産地として有名な北部イエンバイ省に1ヶ所所有している。ほかにも他社との合弁による工場も有しているとのことで、いわば農水産品の総合輸出商社のようだ。

 2021年の売上は2,500億ドン(約12億5,000万円相当)​​で、その内訳はコメ60%、生鮮・乾燥フルーツ各種20%、香辛料各種が10%、水産物その他で10%とのことだ。

 主な輸出国は欧州、アフリカ、中東、米国だ。なかでも同社の主力輸出商品であるコメはガーナ、ギニア、トーゴや、欧州が主な顧客であるという。欧州、特にドイツにはベトナムで生産されている短粒種であるジャポニカ米やタイ原産のジャスミンライス(炊いた時のコメの白さがジャスミンの花のように白いことから名付けられた、香りのよいインディカ米)が売れているそうだ。ジャポニカ米は欧州では寿司などの日本食ブームが背景にあって売れているのだろうか。

 アフリカ、中東にはST24、ST25といったインディカ米の高級品種も売れているという。このST24、25といったブランド米はホー・クアン・クアら、コメの研究者たちが20年かけて開発した品種だ。なかでもST25は2019年フィリピンで行われた「ワールド・テクニカル・ライス・コンテスト」で「世界ベストライス賞」に輝き、世界的な評価も高い品種だ。粒が長く、透明で、炊くと柔らかで、パイナップルのような香りを発し、冷めても柔らかさは変わらないという特徴があるため、ベトナム国内でも人気のある品種だ。

 また欧州にはマンゴー、ドラゴンフルーツ、ブンタン、バナナなど各種トロピカルフルーツの生鮮または乾燥フルーツが売れている。コメの日本への輸入は難しくとも、トロピカルフルーツや香辛料、コーヒーであれば日本が輸入できる可能性もある。読者の中でトロピカルフルーツの輸入販売に興味のある方がおられるのであれば、ぜひ同社にご連絡をいただきたい。

 サンライズ・インズ有限会社の副社長チュックは、ベトナムの農産物がそのブランディングに成功していないとみている。だからこそ、彼女はベトナムの農産物の品質を高め、同社の社名、サンライズのブランディングに挑戦したいという。

 需要家の要求にこたえ、需要家とともにベトナムの農産品の品質を高め、品質を管理する手法を導入し、農民たちの福利厚生の要求や環境にも配慮した農産品を世界に送り出したいとの夢があり、それを実現したいそうだ。

 そのためにも品質の要求基準の高い日本市場に挑戦したい、日本の需要家とともに、それを達成したい。ベトナムの企業でそれに成功したものはまだないからだ。

 チュックや同社の従業員たちの夢を実現すべく、まだ新しい農産品輸出企業の挑戦は続く。

文=新妻東一

サンライズインズ有限会社
SUNRISE INS COMPANY LIMITED

プロフィール

2017年創業。本社所在地はホーチミン市。社長は創業者でもあるトー・ズイ・トン。資本金200億ベトナムドン(約1億円)。主にコメ、生鮮・乾燥フルーツ、コショウ、シナモンなど香辛料、カシューナッツ、コーヒーなど農産物輸出専業商社。ベトナム国内に5ヶ所の直営工場を有する。主な輸出先は欧州、米国、アフリカ、中東など。

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