厄介ものの侵入植物・ホテイアオイから取り出した繊維でラタン調ガーデンファニチャーを製造/アートインテリアデコレーション株式会社

 私の祖母の家には藤(ラタン)でできた寝椅子があった。軽量にして頑丈な作りをしていた。色は飴色に変色し、時代を感じさせた。縁側に引っ張り出して、その上に横になり、兄弟でひなたぼっこした記憶がある。

 藤家具は明治期に日本に導入され、定着した。1980年代にも自然な柔らかさから藤、すなわちラタン製の椅子や家具がブームになったこともある。

 ベトナムのリゾートホテルでもラタン調の樹脂製ガーデンソファーをよく見かける。プールサイドやバルコニーに置かれているものだ。みた感じも涼しげで良い。ラタン調のガーデンファニチャーはリゾートホテルでくつろいでいる気分にさせてくれる。

 今回のベトナム企業インタビューでは、アートインテリアデコレーション株式会社を紹介しよう。同社はラタン調の樹脂製およびウォーターヒヤシンス製のガーデンファニチャーのメーカーだ。

 同社の社長であるレー・ティ・タン・チュック氏に話をお伺いした。なおこのインタビューはZOOMを利用したオンラインでの取材であることをお断りしておく。

 アートインテリアデコレーション株式会社は今から10年前の2012年、ドンナイ省に創業した。ある企業で、やはり同じガーデンファニチャーの製造・販売に関わっていた創業者のチュック氏が独立して開業した。

 現在は彼女の生まれ故郷であるベンチェ省に工場を移転し、ホーチミン市二区に事務所を設け、営業活動を行なっている。

 同社の主力製品は二つだ。一つは樹脂製のラタン調ガーデンファニチャー。ソファー、カフェやカウンターバーの椅子やダイニング、サンベッドやスイングチェアーなどを製造販売、輸出している。

 同社の持つデザインは豊富で、かつ顧客からのデザインに合わせて製造することも可能だという。

 樹脂製なのでさまざまな色に着色可能な上、風雨にさらされたり、湿気や熱にも強い。屋外での使用が主となるガーデンファニチャーにとってラタンのような天然素材よりもホテルやレストランからは樹脂製の家具が好まれているという。

 もう一つの主要な製品ラインはウォーターヒヤシンスの繊維を利用した家具シリーズだ。主に屋内での使用を目的としたソファーやチェアー、棚、テレビ台、チェストなどだ。

 ウォーターヒヤシンス、和名ホテイアオイは日本の池や沼のどこにでもみられ、繁殖力が強く、船舶の運航や生態系を脅かすので、いわば外来種の嫌われものだ。南アメリカ原産で、世界各国で侵入生物として厄介もの扱いされている。

 ベトナムでも同様、ホテイアオイがいったん住み着くと池や沼はあっという間に覆い尽くされてしまう。ベトナム人はこれを豚の餌にする。河川の重金属を吸収する性質があり、食用には適していない。

 その厄介もののホテイアオイ、ウォーターヒヤシンスを加工して繊維を取り出し、縄にして、それをラタンと同じように編み込んで製品をつくる。同社では家具のほかにマット、バスケット、ランプシェードなどを製造している。

 「ウォーターヒヤシンス製品の弱点は湿気に弱く、乾燥した場所でないと、カビが発生しやすいということもあり、家具としてはあまり売れていない」とチュック氏はいう。

 生態系を脅かす厄介もののホテイアオイを加工することで造られる製品だ。ベトナムでは貧困地帯の現金収入にもなっているウォーターヒヤシンス製のラタン調家具だ。カビが生えやすいという欠点を防ぐ技術を日本企業が提供するなどして、今後はより良い商品が開発できないものだろうか。チュック氏の悩みを伺って、そんなことを考えた。

 同社の製品は国内はもとより米国や欧州がメインの輸出先だった。しかし感染症コロナの世界的な蔓延によって、輸出量が激減したという。製品がガーデンファニチャーというホテルやレストランが使用するもの。顧客の多くはコロナで客を失い、家具の新規購入や更新を控えたのだろう。

 コロナが一定収束したかと思えば、一難去ってまた一難、今度はエネルギー価格の上昇とコンテナの逼迫により、海上運賃が急上昇、空気を運ぶような家具の運送コストが膨れあがったのだ。米国向けなどはコロナ禍以前の10倍にもなったとも報道されている。

 ベトナムの輸出家具業界はコロナと海上運賃の上昇とで大きなダメージを被った。チュック氏も「コロナがあけたと思ったら、海上運賃の急騰で頭が痛い」と胸の内を明かしてくれた。

 だからこそ、運送距離の近い日本向けの輸出にたいへん期待してるそうだ。もちろん品質基準が厳しいことは承知の上だと言うチュック氏。

 最後に社長のチュック氏にあなたの夢は?とたずねると「まずは工場の従業員に以前のように十分な仕事を与えられるようにたくさんのオーダーを獲得することね」という。

 チュック氏はまだ小学生の子ども2人を抱える母親でもある。主に平日はホーチミン市の事務所で働き、週末にはベンチェ省の工場に戻る生活をしている。

 彼女たちのガーデンファニチャーが再び世界で、日本で広く輸入され、リゾートホテルや海辺のレストランなどで、旅行客がくつろぐ場に使われるであろうことを祈りたい。

 筆者もも旅行会社を経営する立場だが、コロナや運賃高を乗り越えて、一緒にがんばりましょうとお互い励ましあって、このインタビューを終えた。

文=新妻東一

同社ショールーム

アートインテリアデコレーション株式会社
ARTISTIC DECOR FURNITURE CORP

プロフィール

2012年創業。創業者はレ・ティ・タン・チュック。本社はホーチミン市、工場は現在ベンチェ省に立地している。従業員数は100名。主な製品は樹脂製およびウォーターヒヤシンス製ラタン調ガーデンファニチャー。他にテレビ台、ベッド、チェスト、ランプシェード、マットなど。主な輸出先は欧米向け。しかし品質基準の厳しい日本への輸出を希望している。年間生産キャパは360コンテナ。

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