コメにこだわり30年、ベトナム米を世界に輸出/ホアンミンニャット株式会社

 2021年、日本経済新聞はベトナムがインドに次ぐ世界第2位のコメ輸出国となったと報じた。2020年ベトナムのベトナムのコメの輸出量は616万トン、これに対してタイは570万トンと19年の同国輸出量756万トンから大きく落ち込んだためだ。
 ベトナムは南部メコンデルタでの機械化が進展、単位面積あたりの収量が拡大、欧州連合(EU)との自由貿易協定の発効も輸出が堅調な理由であると日経は指摘する。
 ベトナムは日本と同じく白米を主食としている。日本で麺類といえばうどん、ラーメン、そばだが、コメ以外の原料を使用した麺を食べる文化だ。ベトナムでは麺類であるフォーやブンなどはコメを主原料としている。コメは日本以上にベトナムの生活、食文化に欠かせないものだ。
 日本で生産されているコメの品種はジャポニカ種。コメの粒が短く、炊くと粘り気が強い。ベトナムで生産されているのは主にインディカ種で、コメの粒がジャポニカ種に比べ長く、炊いても粘り気が少ない。日本人にはパサパサしていると感じられるかもしれない。
 第二次世界大戦中に日本は当時フランス領だったベトナムからコメを輸入している。当時も「外米」はぱさついていておいしくないといわれた。2000年代初頭には日本のコメの不作で緊急輸入した際にもタイやベトナムからインディカ米を調達した。日本人の口には水気の少ない、パサパサした食感はあまり好まれず、美味しくないと言う印象がある。
 近年ベトナムではコメの品種改良も進み、ソクチャン省のホー・クアン・クア氏が開発したST25はベトナム米コンクールで優勝、2019年フィリピンで開催された世界コメ会議で最優秀賞を獲得した。ベトナムでもこの品種は大ヒット、スーパーなどでもこぞってST25が販売され、我が家でも美味しいと評判だったタイからの輸入米からST25に切り替えるほどだ。
 この銘柄のコメは色が白く、粘り気があり、パイナップルのような芳香がある。ベトナム米の輸出が堅調なのはこうした弛まぬ品種改良も背景にある。

 ベトナム米を30年にわたって愛し、国内と世界に供給することに誇りを持っている男がメコンデルタ最大の都市、カントー市にいる。名前はホアン・ミン・ニュット。1971年、同じくメコンデルタの省、ティエンザン市に生まれた。1971年のことだ。
 学生時代に先生から「これからの時代にコメは必需品であり、コメに関わる仕事をすべきだ」との教えをうけ、ニュットは1993年にコメの製造販売会社に勤めた。当初は主に品質管理を受け持った。その後、その会社でコメの製造、販売のノウハウを身につけた。
 2006年、彼は4人の株主と共に現在彼が社長を勤めるホアンミンニャット社を設立した。同社はコメの生産、精米・加工、販売、コメの精米・加工から発生する副産物を利用した家畜用飼料原料の供給、コメの輸送・流通までを目的とする会社だ。
 1時間に10トンものコメを生産し、年間8万トンを輸出、国内販売する能力を有している。20%は国内向け、80%を海外輸出している。直接輸出することもあれば、ベトナム国内の輸出業者に販売することもあるので、直接、間接合わせての輸出量とのことだ。主な輸出先は東南アジア各国、アフリカ、欧州連合、米国やカタール、オマーンなど中東各国と幅広い。
 全従業員数は80名の会社だ。工場上屋・倉庫だけで1ha、敷地面積は2haという規模を有している。


 同社のウェブサイトにはコメだけで12種類もの銘柄が紹介されている。長粒種(インディカ米)、短粒種(ジャポニカ米)のほか、タイの香米(ジャスミンライス)や、ベトナムで開発された香り米各種などバラエティに富む品種を提供している。
 5%、10%、15%などの表示についてニュットに尋ねると、割れたコメの割合を示すのだという。精米の過程でコメが割れてしまう。割れたコメの割合が大きいほど、一般的には価格が安いのだ、という説明だ。
 ベトナムには割れたコメを用いた「コムタム」という白飯がある。もともとは家畜の飼料にしかならなかったコメを安く仕入れ、それを炊き、豚肉をソテーしたものをのせ、独特の甘辛いタレとともに食べる庶民の料理だった。
 最近ではこの「コムタム」が料理のジャンルの一つになって、「コムタム」を専門に提供するチェーン店まであらわれている。割れたコメが多く含まれているにもかかわらず、南部の国内市場ではコムタムが高値で取引されるようになっているとニュットは笑う。

 ニュットは日本企業との連携に期待をしている。自社の事業拡大に対する日本の投資パートナーを求めている。同時にコメの生産や梱包技術に対する技術移転、日本をはじめとする販路拡大についても日本企業とのパートナーシップを望んでいる。
 日本の家電製品やコメの精米加工技術、機械に信頼をおいているニュットは、日本の経済発展の度合いをこの目で確かめたい、そして日本の田舎を訪れて水田や畑仕事もみたいという気持ちが強いという。日本への渡航を計画していたがコロナ感染が広がり、それもまだ果たせていない。コロナが明けたら日本の訪問を果たしたいとニュットは語る。

 コロナ感染が南部で広がった2021年にもコメは生活必需品であることから、工場の稼働は保障され、他の生産工場のように稼働停止の命令を受けなかった。そのためコロナによる直接の影響は少なかったという。
 ただ、この所の物流費の高騰によって、海上運賃は従来の5倍から10倍に跳ね上がり、困難を来しているという。例えば、米国向けは従来20フィートコンテナで1200米ドル程度だったものが、現在は12,000米ドルに、欧州向けは820米ドルから7,900米ドルにもなっているというのだ。これでは商売は上がったりだ。おまけに輸出取引が振るわなければ、コメがベトナム国内ではダブつき、国内市場価格は値下がりの憂き目に合うのだと嘆く。
 ニュットはそんな中でもコメという人々になくてはならない食糧生産に従事していることに誇りを持っている。日本企業とのパートナーシップに対する期待も大きい。

文=新妻東一

ホアンミンニャット株式会社
Hoang Minh Nhat Joint Stock Company
社長 ホアン・ミン・ニュット

プロフィール

2006年ベトナム・カントー省にて創業。コメの製造販売、輸出に従事、年間輸出8万トンの能力を有する。輸出先は東南アジア各国、アフリカ、欧州連合、米国やカタール、オマーンなど中東各国。全従業員数は80名。

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