日本企業との付き合い長く、本業の鋳造品、鉄鋼構造材、アルミ建材で日本向け輸出増を希望/ドンアイン・リコジ機械株式会社

 ハノイ郊外ドンアイン県にあるタンロン工業団地。住友商事によって1997年から開発された日系の工業団地だ。キャノン、パナソニック、ヤマハなど日本の大手企業、製造メーカー98社が進出している。ベトナムの工業団地の中でも特に成功した工業団地だといっていいだろう。実はあまり知られていないことだが、この工業団地は住友商事とベトナム企業が合弁で経営している。その合弁相手が今回紹介するドンアイン・リコジ機械株式会社(CKDA)社だ。コロナ感染者が急増するなかで、今回会議ツールのTeamsを使用して国際貿易部のグエン・ミン・フエ氏にお話を伺った。

 フエは2008年同社に入社した。工場に隣接したドンアイン県にある社宅に家族で住んでいるという。3人の子どもの母親でもある。製品の輸出入業務を担当、海外出張では中国、台湾、インドネシア、UAEに行ったことがあるという。残念ながら日本に出張へいったことがないそうだ。日本に出張行ったらどこへ行きたいですか?と尋ねると、出張にいっても仕事をして帰るばかり、これまでついでに観光することなどなかったと笑う。会社を愛することにかけては人一倍だと自称するフエは結構モーレツ社員なようだ。

 CKDA社は1963年、ハノイのドンアイン県に国営の機械製造・修理会社として発足した。主に農業機械や産業機械の修理が中心の「小さな工場(こうば)」だった。70年代、80年代を通じてはメーカーというより機械修理工場として存続したが、90年代に入りドイモイ政策が本格的になると、同社は住友商事との合弁で工業団地の経営に携わると同時に、本業である機械工業への積極的な投資を開始する。

 1998年にはデンマークからDISMATIC社製の生砂も型枠も不要な自動鋳造ラインを、2000年には熱処理ラインを導入し、2001年からアルミ建材製品の製造をも開始するなど積極的な投資を行なった。

 2001年にはドンアイン機械(Cơ khi Đông Anh)という社名の頭文字をとったCKDAを商標登録し、ベトナム語の品質(Chất lượng)、エコノミー(Kinh tế)、納期遵守(Đúng hạn​​)、安心(An tâm​)​という意味をもたせた。

 2006年には国が所有する一人有限責任会社となり、2014年には株式会社化を果たし、社名もCKDA-LICOGI株式会社となり、LICOGIグループ参加企業となった。LICOGIグループは水力発電所や鉄道、自動車道などのインフラ建設のベトナム大手企業だ。

 フエによれば同社の主力製品は3分野に分けられるという。鋳造製品、鉄鋼構造材、そしてアルミ建材の3つだ。

 一つ目の鋳造製品は同社の売上の30%を占めている。主な製品はセメント製造に欠かせない粉砕行程であるボールミルに使用される粉砕ボールだ。15mmから100mmまでの大きさのクロム鉱でできている。採掘された石灰岩を粉末に粉砕するのに用いる。年間6千トンを生産している。

 ベトナム建設省によれば、ベトナムにおけるセメント産業は急成長をとげ、2020年には生産能力は年間 1.13億トン、セメントの輸出は年間3千万トンと中国、インドに続く世界3、4位の生産能力を有する国なのだ。CKDA社の粉砕ボールはすなわちベトナム・セメント産業の縁の下の力持ちといえる。70%は国内で使用されている。残りの30%は日本、韓国、タイ、オーストラリア、UAEにも輸出されているそうだ。

 ボールミル用のクロム、マンガン、ニッケル鉱の付属金属部品も製造しており、こちらは年間2千トン。80%は国内向けだが、20%はカンボジアやイタリアにも輸出されている。

 第2の主力製品である鉄鋼構造材は売上の30%を占める。ハイフォンやサパなど、ベトナム各地の運動場、スポーツセンターや倉庫に用いられる鉄鋼の構造材を提供し、同社のベトナム国内における市場占有率はなんと80%だというから驚きだ。

 ドイツの鉄鋼・工業製品メーカーのティッセンクルップ社を通じて輸出も行なっている。主な輸出先国はサウジアラビア、ナミビア、フィリピンとのことだ。

 本製品は年間2万トンを生産している。

 同社の売上の40%を占める商品は主力商品3番目のアルミ建材だ。年間8千トンを製造している。売上の割合が同社で一番多い商品だ。ベトナムでの工場や住居などの建築ブームが続く限り需要は大きい商品だが、国内には競合メーカーがひしめきあい、輸出においては中国との競争を強いられるので、商品市場では過酷だ。国内向けは全体の80%、輸出は20%を占めている。

 同社は従業員800名、2021年度の売上は約1兆ベトナムドンで、米ドル換算すれば4500万米ドルである。

 日系企業との取引はぜひ拡大したいという。特に日本と中国との不安定な政治・外交関係から中国との取引を望まない、あるいは中国に依存したくない日本の取引先は歓迎するとフエはいう。

 フエの日系企業に対するイメージはいったん仕事をはじめたら浮気しない、技術的な問題に直面したら助けてもらえるというメリットを感じている様子だ。日本企業が商品の品質に厳しい、要求が高いのは織り込み済みだという。同社が住友商事をはじめとする日系企業とつきあってきた歴史が長いからだろう。

 コロナ禍の影響はとフエに問うと、売上には大きく影響しないものの、外国の取引先がベトナムの工場を訪問することができない上、工場内で寝食しないと工場を稼働できない制度をベトナム政府がとったために従業員に食事や寝る場所を与えるためのコスト増に昨年は悩まされたという。再びコロナ感染者が急増している中で同社の従業員も現在100名ほどがコロナ感染者となって休んでおり、生産にも影響しているとフエは語る。

 インタビューの最後にフエに読者への一言をお願いすると「日本の企業とはぜひ取引を拡大したいので、ぜひその点を強調してほしい」と頼まれた。頑固だけど、一度取引をはじめれば他に浮気したりせず継続的に取引をし、技術を有して勤勉である、というのがフエの日本企業のイメージだそうだ。その期待を裏切らないような日本企業との取引が拡大できることを祈っている。

文=新妻東一

ドンアイン・リコジ機械株式会社
Dong Anh Licogi Mechanical Joint Stock Company

1963年、国営ドンアイン建築・機械工場としてハノイ郊外に設立。1995年ドンアイン機械会社に名称変更。1997年、住友商事とともにタンロン工業団地を設立。1998年から積極的に設備投資を行い、鋳造、立体構造鋼材、アルミ建材などでベトナムのトップシェア企業に発展。2014年には株式会社化され、ドンアイン・リコジ機械株式会社となる。国内への供給のほか輸出にも積極的。特に対日輸出増をめざす。

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