日系出資で営業・技術支援の産業ガス製造販売・ソリューションを提供/SIGベトナム

 今回ご紹介するのは産業ガスのメーカーである。産業ガスといってすぐにピンとくる人は少ないのではないだろうか。最も身近な産業ガスはこのコロナ禍でもその供給が問題となった医療用酸素だろう。コロナによる肺炎で肺の機能が低下してしまった患者には酸素を吸入させる。昨年2021年、ホーチミン市をはじめとするベトナム南部で感染が拡大した際にはその医療用酸素が不足する事態に陥り、患者の家族が酸素を求めて奔走する姿も報道された。
 「ガス」は一般の我々には目に見えない、捉えどころのないものだ。産業ガスはしかし我々が思っている以上にあらゆる産業と生活になくてはならないものなのだ。
 例えばパソコンをはじめ、現在は自動車や家電などにも搭載されている半導体、エレクトロニクス製品の製造には約30種類に及ぶ半導体材料ガスという特殊ガスが用いられている。
 重厚長大産業である鉄鋼、造船、化学、自動車、エネルギー、発電といった産業にも当然産業ガスは使用されている。もちろん食品、飲料には欠かせない。あらゆる産業に産業ガスが隠れた力を発揮している。だからこそ産業ガスは産業・工業の発展に欠かせない。。

 産業ガスメーカーであるSIGベトナム社はホーチミン市から36km、車で1時間30分の場所のミーフック3工業団地にある。同工業団地に同社が工場を建設したのは今から10年前の2012年のことだ。シンガポールのSin Swee Beeグループの100%子会社として設立された。
 親会社であるSin Swee Bee社は1978年創業。産業ガスをはじめとする商品を取引する商事会社として発足したが、マレーシアを手始めに東南アジア各国に進出し、主に産業ガスの製造、販売、導入ソリューションを提供する会社として発展してきた。
 ベトナムの今後の経済発展に期待して同社はベトナムへの進出を決めた。進出した先はビンズオン省の工業団地だった。中でもミーフック3工業団地はベトナムに数ある工業団地の中でも成功した工業団地の一つで、日系企業も多数進出している。2020年のベトナム家計調査ではビンズオン省自体もハノイ、ホーチミン市を抑えてベトナムで最も収入の高い地域となり、発展の著しい地域でもある。進出を決めた当時はビンズオン省がこれほどの発展を遂げるとは思ってみなかった、この場所に立地を決めたのはラッキーだったとSIGベトナム社の責任者Peh Chee Siong氏は語る。

 当初産業ガスの工場を立ち上げたものの、顧客はゼロだったという。どうやって顧客を増やしたのですか?とPeh Chee Siong氏に尋ねると、それは本来は会社の企業秘密だね、と笑いながらも「工業団地にある工場を一つ一つ、ドアをノックして訪問しただけですよ」と教えてくれた。
 産業ガスといった商品は形がなく、とらえどころのない商品だ。そうした商品を売り込むには潜在的な顧客である工場の責任者、担当者に直接会って、まずは営業マンが自らを売り込むしかない。そのためにSIGベトナム社は地道な飛び込み営業を行ったという。まさに「営業」の王道だ。
 
 現在の同社の主力製品は、液体酸素、液体窒素、液化アルゴン、そして液化アセチレンの四種類。酸素は金属の接合、溶接に用いられるほか、医療用酸素として病院でも用いる。
 窒素は大気中に78%も含まれる、いわばありふれた気体だが、他の物質に反応しないという特性から酸化を避ける必要のある半導体、電子部品の製造には欠かせないガスだ。
 アルゴンガスは大気中に含まれているものの、その含有量は0.93%と微量であるために希ガスと呼ばれている。アルゴンガスは酸化も窒化も避けなければいけない環境に用いられる。たとえば半導体のシリコンウェハ製造、フィラメント電球の封入ガスなどが主な用途だ。
 これら酸素、窒素、アルゴンは空気を原料として、それぞれの沸点の差を利用して分離、製造する。同社はそのための分離装置プラントを構内に設けて、これらのガスを分離、製造している。
 これに対してアセチレンガスは自社で文字通り「製造」されているガスである。アセチレンは燃焼効率のよいガスで主には溶接、切断、熱処理に用いられる。溶接工場でノズルから勢いよく吹き出している青い火を見ることがあるが、あれがアセチレンガスだ。
 顧客としては食品・飲料、半導体工場のほか、幅広い工業分野、産業分野に及ぶ。

このコロナ禍では2021年、ホーチミン市を中心とするベトナム南部で感染者が急増し、1日に300名を超える死者が発生した。ベトナム政府は感染をくいとめるために製造工場に対して飲食、宿泊、製造の3つを工場内で行うのであれば生産を継続してもよいとの指令をだした。これにしたがって、その3つを工場内で対応することができなければ工場は休業となった。一方で製造を継続して行うために、工員・従業員を工場内にとどめ、飲食も寝起きも共にして製造を続けた工場もあった。
 SIGベトナム社は社内の体制を整え、工員・従業員の協力を得て飲食、宿泊、製造の3つを工場内で行い、コロナが流行する中にあっても産業ガスの継続を続けた。

 いわゆる工場で使用される産業ガスの需要は周辺工場の稼働停止で販売は大きく落ち込んだ。一方、コロナ感染の拡大で、医療用酸素の需要が急増した。いわゆる産業ガスでも病院向けの医療用酸素の品質基準はその他の産業ガスとは大きく異なった。生体に用いるから当然だ。従来は積極的に病院向けの医療用酸素の提供はこれまで同社は行ってこなかった。社会的な要請も受けて、SIGベトナム社はコロナで社会的隔離を行いながら、医療用酸素の提供に注力することになった。
 工員・従業員が工場に寝泊まりして製造を続けた。その期間は約3ヶ月。営業担当の女性イエンも「工場内に寝泊まりしてがんばったのよ」と誇らしげに語る。
 製造工場向けの産業ガスの落ち込みを医療用ガスの売上増で2021年度は2020年の落ち込みを補って対前年比で18%も売上を伸ばしている。このコロナ禍にあって、社会的な要請にこたえつつ、売上を伸ばした同社に敬意を表したい。

 SIGベトナム社は2020年、日本の産業ガス製造販売業者である大阪ガスリキッド社からの資本参加をえて、共同で事業を行うことになった。大阪ガスリキッド社は産業ガス製造に関するノウハウ、スキルを提供すると同時に日系顧客への営業活動を支援することが期待されている。
 SIGベトナム社の責任者Peh Chee Siong氏はベトナムに進出著しい日系企業への製品の販売拡大にぜひ期待したいと述べた。中国の企業は中国の、日本の企業は日本の、それぞれ取引先を信頼して契約をする傾向にある。SIGベトナム社は日本の資本がはいった「日系」企業であることをアピールして販売拡大に大いに期待しているとも語った。

 最後に責任者のPee Chee Siong氏に読者に向かって強調したいこととして、同社は商品を販売するだけでなく、安全を売る会社でありたいとのことだ。それは可燃物による爆発、爆発はしないまでも低温で取扱いに注意が必要な産業ガスだからこそ、その専門家としてお客様に安全な産業ガス導入ソリューションを提供したいという。

 シンガポールと日本企業がタッグを組み、それぞれの強みを活かしてベトナムの地でともに事業を発展しようと意気込む同社への期待は大きい。

文=新妻東一

シング・インダストリアル・ガス・ベトナム社

Sing Industrial Gas Vietnam

2012年創業の産業ガス製造・販売・ソリューション提供する企業。ベトナム南部ビンズオン省ミーフック3工業団地に立地。主な商品は液体酸素、液体窒素、液化アルゴン、アセチレンなど。ガスの充填に加え、貯蔵タンク、ISOタンクのレンタル、ガスパイプラインシステムのEPCMも提供する産業ガス総合メーカー。


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