建設業の中でも鋼構造の工場建設が天職と信じて/チェンユアン鋼構造株式会社・社長グエン・バン・ズン
- 2024/12/16
- ベトナム企業インタビュー
「鋼構造の工場建設をやるまでに、住宅建設や左官業、塗料や建築資材の販売も手がけたのですが、自分に一番ぴったりきたのが、工場建設事業でした」
なぜ工場建設のための鋼構造企業を設立したのかという私の質問にチェンユアン鋼構造建設会社の創業者、グエン・バン・ズンは、そう答えたのだった。
ベトナムにおいて、外資系企業を中心に第三次産業、つまりサービス産業への投資が増えている一方で、第二次産業のうち、製造業は産業構成のなかでも22%、GDP比でも25%を超え、ベトナムの経済発展の中でも大きな役割を果たしている。
またここへきて、NVIDIAをはじめとする海外のITハードウェア企業が軒並みベトナムへの巨額投資を決めている。ベトナムのチン首相がトップセールスで、ハノイを訪れたNVIDA創業者のジェンスン・ファンを旧市街の居酒屋街・ターヒエン通りで接待したことが報道されたばかりだ。ポスト中国のITハードウェア産業の投資先として、ベトナムへの期待に応える形で、ベトナムの指導者はIT企業の誘致に積極的だ。
今後も海外からの投資に加えて、進出企業に対して部品を供給するベトナムの裾野産業への投資が進むことも期待される。いずれにしても、工場の上屋は今後もベトナムには多数必要になるだろう。
そうしたベトナム経済の将来を見通しているズンは南部の製造業の立地場所としてトップをゆくビンズオン省に2024年、鋼構造の工場建設企業、チェンユアン社を設立した。ズンは、しかしこの建築業界においては10年もの経験を有している。
チェンユアンという社名には、ズンとその会社を支援してくれている台湾人パートナーに経緯を表して名付けたそうだ。だが、社名が台湾風の名称だからといってもFDI企業ではない。
ズンは1988年、中南部の沿海省であるビントゥアン省ファンティエット市に生まれた。ホーチミン市から高速道路が開通したために車で約2時間半の距離にあるビーチリゾートの街だ。ファンティエット市は、美しい砂丘のあるムイネーも有名で、国内外の多くの観光客を楽しませてくれている。
彼は2007年、ホーチミン市にやってきて土木建設業を学んだ。卒業後、2010年には仕事をはじめ、2014年から建設業関係の事業に取り組んできた。
当時、最初に手がけたのはビンズオン省にあるトヨタ工場の工場建屋の保守・修繕を請け負った。契約は1年のみで終了してしまったが、その時の経験が工場建屋の建設へとつながっている。
同社が社名にも用いている鋼構造は、鉄骨造ともいい、ベトナムにおいても日本においても工場を建設する際の一般的な構造である。要は、柱と梁に鉄(鋼)を使った建物・構造のことを指している。鋼構造のメリットとしては、耐久年数が長いこと、柱や壁が少なく、広いフロアを確保できること、ある程度工場で加工した部材を用いるため工期も短く、鉄骨鉄筋コンクリート造よりもコストが低く抑えることができるなどがあげられる。
現在、同社は20名の正社員をかかえ、プロジェクトの必要に応じて、必要な人員を業務契約により確保している。これにより大規模な工場建設も可能だ。
同社では、見積から設計・施工まで一貫した工場建設を請け負うことができるとズンは自負する。
同社が手がけてきた工場は大型なもので約20箇所、3千、5千、1〜2万平米の工場まで手がけたという。工場としても縫製、機械、印刷、家具製造など多岐にわたっている。
また、同社は工場に設置する倉庫や駐車場の鋼構造の建屋建設も請け負っている。特に駐車場は、工員たちがオートバイで通うため、大人数を雇うためにはどの工場も労働者・従業員向けの大型の駐車場を必要とする。
工場建設で対応できる地域はビンズオン省はもちろんのこと、近隣のドンナイ、ロンアン、ホーチミン市、ビンフックの各省へも対応が可能だ。ただし中部や北部での工場建設には対応していない。
同社の主な顧客は90%が韓国、中国、台湾、日本といった外資系企業の製造工場を請け負ってきた。たとえば10社が顧客だとすれば9社が外資系、1社がベトナム現地資本の企業だという。同社の工場の品質が外資系企業にも満足のいくものであるということがこれでもわかるだろう。
ズンはまだ日本を訪れたことがないという。仕事も忙しいので休みもとれない。事業が成功して、経済的にも余裕ができたら、ぜひ日本を訪ねたいと語るズン。
「日本は工業で大きく発展し、エアコンにしろ自動車にしろ、その製品の品質はすばらしいものがある。また、日本人は規律正しく、なにごとにおいても正確な点で、学ぶところが多い」と多くのベトナム人が口にする日本人の優れた点をまたズンも口にする。
最後に彼にその夢をたずねた。
「5千平米の工場に、50人の社員・従業員を雇い入れ、よい仕事をして、仕事を愛し、ベトナムで業界トップ10の企業に成長させたい」そう語ってくれたズン。
9歳と8歳の娘の父親でもある。今年まだ36歳。自らの事業を拡大して、大企業に成長させることも夢ではない。ズンのこれからの奮闘を見守っていこう。
チェンユアン鋼構造株式会社
CHENG YUAN STEEL STRUCTURE JOINT STOCK COMPANY
プロフィール
2024年にビンズオン省に設立した鋼構造による工場建設会社。創業者、社長はグエン・バン・ズン氏。同氏は2007年にホーチミン市にて土木建設業を学び、2011年に卒業して土木建設業関連の仕事をはじめる。2014年から土木関連事業を開始、今年同社を新たに設立した。これまでも大型工場20箇所以上を建設した。主な顧客はベトナムの外資系企業。