日本建築に魅せられ、和風建築・内装に特化したインテリア建設会社/チュオンラムヴィエン有限会社

 「もともと東洋建築に興味がありました。中国の建築や内装でも美しいものもありますが、それは表面的な美しさなんです。日本の建築には精神が宿っている、作り手の性格や美しさが建築や内装の細部に現れていると感じるんです」
 今回のインタビュイーである建築家であり、チュオンラムヴィエン社の社長、ホアン・チュンは、なぜ建築、内装に日本風を選んだのか?という問いに対して、そう答えた。
 日本人としてはいささか面映いぐらいの言葉だが、彼は日本の建築を評して、真顔でそう語った。
 
 ホアン・チュンが率いるチュオンラムヴィエン社は、建築・内装会社だ。そのホームページには、匠(Takumi)ファニチャーというブランド名もある。ホテル・リゾート、レストランなどに投資するベトナムの現地企業あるいは日系企業に和風・日本風の建築物や内装インテリアを提供する企業だ。設計・施工と同時に日本の障子や畳、フローリングといった建築資材の提供も行う、ベトナムにあってはユニークな企業だ。
 ベトナムでは大都市やその近郊において日本料理店や和風の温泉リゾートブームが訪れている。以前はベトナムにやってきた日本人が日本人向けに営業する日本料理店がほとんどだったが、今は寿司や刺身、ラーメンなど日本料理が好きなベトナム人向けにサービスを提供する店が大繁盛している。
 私の家族も暮らしているマンション群の一角に日本料理店があり、いつもベトナム人客で満員だ。日本人の私が食べても日本で食べる料理のクオリティとほぼ変わりはないレベルの料理をリーズナブルな価格で食べられるとあって、ベトナム人に人気がある。我が家では、月に一度ほど、このレストランを訪れて、寿司やチーズ鶏カツ、餃子などを必ず頼む。ベトナム人の妻はなぜかサンマが好きで、必ず焼き魚定食を頼むほどだ。
 また、ベトナムは各地に温泉が出る。最近では、古都フエやハロン湾などの観光地に程近い温泉地に日本式の温泉宿がつくられ、日本を訪れなくとも、日本式の温泉が楽しめるとあってベトナム人に人気を博している。
 そうした日本料理店や温泉宿を造るにあたって必要となるのが、日本風の建物や内装だ。同社はそうした需要に応えて、日本式の建物や内装、必要なインテリア用品の販売を事業のメインに据えているのだ。

 チュオンンラムヴィエン社の前身は2008年に創業した。同社の社名が正式に登記されたのは2014年とのこと。そこから数えても10年の経験を有する会社だ。
 創業者のホアン・チュンは1980年生まれの44歳。元々生物学でDNAの研究などをしており、イスラエルにも留学した経験もある。彼は生物学と同時に興味のあった建築学も学び、そして仕事には建設業を選んだのだそうだ。なかなか異色の経歴の持ち主だ。

 同社は日本風な建築物、日本式庭園などの設計、施工に加えて、内装・インテリア用の製品の生産、据付も行っている。伝統的な様式に現代的な技術を加味したものを提供できると自負している。
 資材の取り扱いも行っている。サンゲツの床材や壁紙、カーテンをはじめとする日系メーカーの資材の扱いもあることが同社の強みでもある。障子や畳といった純和風の資材も扱える。
 主な顧客はベトナムの国内外の日本式の建築物、内装を希望する投資家、不動産デベロッパーやリゾート、レストランの経営者だ。従来は日本の投資家が多かったようだが、現在では日本風の建物を好むベトナム人経営者や投資家も有力な顧客だそうだ。
 先にも述べたが、最近はベトナムの温泉地で、日本風の温泉宿、リゾートを開発するベトナム人業者も数多く見かけるから、そうした動きに同社が対応しているのだともいえよう。
 同社のもう一つの特徴は、ベトナム労働・傷病兵・社会省の許可を得て、内装工の職業訓練を行い、特定技能ビザによって日本で内装・建築業界で働くベトナムの若者を育成しようとしていることだ。

 チュオンラムヴィエン社はベトナムコミュニティカレッジ協会(VACC)の会員でもある。VACCは96の大学、専門学校、職業訓練校や企業、個人を構成員からなる団体で、主にベトナムの人材育成に関わる組織、団体間での交流、調整をはかっている。その会員の中でも中核的な存在としてホアン・チュンは活躍している。
 彼によれば、従来の技能実習生とはいっても実態は単純労働であり、もし3年日本で働いても、実際には技能などは身につかない。
 そこで彼は自社のベトナムでの研修機関で学んだ若い人材を日本に送り込み、そこでさらに日本での建築内装業界で働くことによって、より高いスキルを身につけてもらうことを目論んでいる。
 ホアン・チュンはVACCと日本インダストリアルデザイン協会、建設技能人材機構と協力して、内装技術と日本語の講座を開設し、ハノイのコミュニティカレッジで若い人材の育成にも勤めている。
 ここで建築技術と日本語を学び、特定技能ビザを取得させ、日本へ送り出し、即戦力として働いてもらおうとする試みだ。
 日本では建設分野における人材不足が深刻なので、ぜひとも日本で働いてくれるベトナムの若者たちに大いに期待したいところだ。それも技能実習という建前で、実際には単純労働しかさせず、3年働いても技能を学ぶことのできないようでは、ベトナムのみならず、日本のためにもならないだろう。
 有能な人材にはぜひ日本で大いに働き、稼いでもらいたいものだと思う。 
 ホアン・チュンはまた外国人または外国企業のベトナム不動産への投資や土地の購入に関しても投資家に対するアドバイスを行っている。この分野はベトナムでの法整備が十分でないために、不適切なアドバイスによって騙されたり、思うような結果がでないことが多い。最初から詐欺を働くような連中も多いので、そうしたことのないよう自分は外国人投資家がベトナムに失望しないよう適切な方法について諮問している。
 彼の夢は二つ。一つは優秀なベトナムの若者を日本に送り込み、就労させるとともに技能を身につけてもらうこと、もう一つは建築、内装で日本企業との合弁や、技術投資を積極的に受け入れ、事業を拡大することだ。
 ベトナムにおける日本ブーム。食のみならず建築や庭園といった方向へもベトナム人の興味が拡大している。そうした流れを活かして、チュオンラムヴィエン社は新しい地平を目指している。

チュオンラムヴィエン有限会社
TRUONG LAM VIEN COMPANY LIMITED
TAKUMI Furniture

プロフィール

創業者のレー・チェウ・ホアン・チュンが2008年に創業した会社。2014年には現在の社名となっている。主に日本風の建築、内装、造園、そして日本の建設資材の販売も行っている。加えて建築・内装技術をもつ人材育成を施し、日本への人材を供給する仕事にも携わっている。

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