ベトナムのプラスチック工場や産業の概要:市場予測やベトナム工場の技術、環境問題について
- 2024/01/08
ベトナムのプラスチック産業は、急速に変化し成長している分野です。この記事では、このダイナミックな業界の最新動向を探り、市場予測、ベトナムプラスチック工場の技術発展、そして環境に与える影響など、重要な側面に焦点を当てています。
アジア太平洋地域で急成長中のベトナムプラスチック産業
ベトナムのプラスチック産業について
ベトナムのプラスチック産業は、アジア太平洋地域で急成長している主要な産業の一つです。近年、プラスチック製品の製造、加工、そして輸出において重要な役割を担っており、特に包装材料、家庭用品、建設資材などの分野でその存在感を強めています。
ベトナムのプラスチック市場の現状と成長の見通し
ベトナムのプラスチック市場は、世界的な需要の増加に伴い顕著な成長を遂げており、モルダー・インテリジェンスによると、2023年から2028年にかけて、市場規模は10.07百万トンから15.09百万トンへと成長すると予測され、年間平均成長率(CAGR)は8.44%に達する見込みです。
業界に影響を与える主要な要因
ベトナムのプラスチック産業の成長には、いくつかの主要な要因が寄与しています。一つは、国内の経済成長と人口増加が消費者需要を刺激し、生産コストの低さと労働力の豊富さが国内外からの投資を引き寄せていることです。
ワールドバンクによると、2019年にはベトナムのプラスチック産業が国内総生産(GDP)の6.7%、約175億米ドルに貢献しており、環境規制の強化と持続可能な製造方法への移行により、業界の健全な成長が支援されています。
さらに、国際的な貿易合意や市場のグローバル化も、ベトナムのプラスチック産業に新たな機会を提供しています。
ベトナムプラスチック工場の主要技術と製品
ベトナムにおける射出成形技術の応用
プラスチックの成形技術(ブロー成形や押出し成形)は様々ありますが、射出成形技術はベトナムのプラスチック産業において中核的な役割を果たしています。この技術は、高精度なプラスチック部品や複雑な形状の製品の製造に広く利用されており、特に自動車部品、医療機器、家電製品などの分野でその価値が認められています。
射出成形は、効率的な大量生産と優れた製品品質を実現するために、精密な金型と高度な制御技術を使用します。ベトナムでは、この技術を発展させながら、国際市場の要求に応える高品質なプラスチック製品を製造しています。
ベトナム工場でつくられる主な製品
現在、ベトナムには2,000社以上のプラスチック会社が存在し、そのほとんど(84%)がホーチミン市に位置しています。また、国内企業が85%を占める一方で、外資系企業は数では15%に過ぎませんが、投資資本では40%を占めており、主に以下の製品が製造されています。
カテゴリー | 主な製品 | 生産 割合 |
---|---|---|
包装 プラスチック | 食品業界用の柔らかい包装、飲料業界用の缶入りプラスチックボトル、硬い包装 | 39% |
建設 プラスチック | 水道管、ドア・窓枠 | 14% |
家庭用 プラスチック | 家具、キャビネット、皿、おもちゃ、靴 | 32% |
ハイテク プラスチック | 自動車、オートバイ、医療機器、複合材料業界用の部品 | 9% |
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プラスチックリサイクル技術とエコイノベーション
環境保護の観点から、ベトナムのプラスチック産業ではリサイクル技術の発展にも力を入れています。プラスチック廃棄物の再利用やリサイクルを通じて、資源の有効活用と廃棄物の削減を目指し、廃プラスチックを新たな製品や包装材料に変換することで、持続可能な製造プロセスの実現に貢献。
また、ベトナム政府と産業界は、海洋汚染や環境問題に取り組むために、環境に優しい製品の開発とリサイクル施策を積極的に推進しています。
プラスチックリサイクルと環境問題
リサイクル活動と市場の需要
2022年には、リサイクルされたプラスチックの市場規模は248.5キロトンに達し、2028年には409.9キロトンに達すると予測されており、ベトナム国内でも廃棄物管理の近代化と環境意識が高まっています。
海洋汚染と環境への影響
ベトナムのプラスチック消費は、海洋環境に深刻な影響を及ぼしています。2015年の研究によると、ベトナムで生産されたプラスチックのうち、最大73万トンが海洋ゴミになると推定。
また、ワールドバンクの調査によれば、ベトナムの河川沿いや沿岸地域で収集された固形廃棄物の94%がプラスチック製品で、その多くが使い捨てプラスチックでした。これらの廃棄物は海洋生物多様性を脅かし、経済にも悪影響を及ぼしています。
ベトナムにおけるリサイクル産業の現状
ベトナムの廃棄物処理インフラは、サービスへの需要増加に対応できていない現状があります。都市部の人口の92%と、農村部の人口の約三分の二が廃棄物収集サービスを利用していますが、集められた廃棄物の多くが不適切な埋立地に投棄され、水路に流出しています。
このため、廃棄物管理システムの近代化が求められており、公共・民間セクター間のパートナーシップによる資金調達が必要とされています。
ベトナムにおける日本企業が進出する上でのポイント
ベトナム市場での事業運営のポイント
ベトナム市場での成功の鍵は、建設業界を含む主要分野からのプラスチック生産需要へ応えることにあります。特に建設用プラスチック分野は、ベトナム全体のプラスチック市場の約4分の1を占めており、コロナから回復以降、インフラ整備と住宅建設プロジェクトが進み、プラスチックへの需要が更に高まることが予測されます。
また、自動車生産業界も発展しており、外国企業からの投資により、自動車組み立てと部品製造が成長しています。
イノベーションと製品開発の重要性
ベトナムのプラスチック産業における革新的な取り組みとして、サーキュラーエコノミーへの移行があります。ワールドバンクによると、ベトナムはプラスチック廃棄物の高ボリュームを持つ上位4か国の一つであり、年間280,000トンのプラスチック廃棄物が発生しています。
循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。
環境省「循環経済への移行」
2022年1月に施行された改正環境保護法により、ベトナムは循環型経済への移行を目指しており、これにはリサイクル、リデュース、リユースを促進する取り組みが含まれます。日本企業が進出する上ではこういった環境問題への配慮も必要となるでしょう。
まとめ:ベトナムのプラスチック産業の将来展望
ベトナムのプラスチック産業は、今後も強力な成長を続けると見込まれており、特に包装、建設、電子製品などの分野での需要が増加しています。日本企業が進出する上では、しかし、リサイクルなど環境問題への配慮も行いながら、ビジネスとしての成長のバランスを見つける必要があるでしょう。
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参考資料
- Mordor Intelligence: Vietnam Plastic Industry – Report & Market Share
- World Bank: Market Study for Vietnam: Plastics Circularity Opportunities and Barriers
- Research and Markets: Vietnam Plastics Market – Growth, Trends, COVID-19 Impact, and Forecasts (2023 – 2028)
- World Bank: Market Study for Vietnam: Plastics Circularity Opportunities and Barriers
- 朝日新聞GLOBE+:「「プラごみは商品だ」再生プラスチック、需要急増 ベトナム「ペットボトル村」の活況」
- Vietnam News: Foreign firms eye VN plastics
- Vietnam News: OVERVIEW OF VIETNAM’S PLASTIC INDUSTRY 2021
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