創業20年、業界30年の経験で配電・制御盤製造、設備工事請け負う/ビンナム有限会社
- 2023/12/26
- ベトナム企業インタビュー
製造企業にあって自社の工場を建設するとなると大事だ。まずは立地。原料の仕入れ、製品の搬出のためにも、港や空港からの距離や交通の便にも気を配らねばならぬし、浄水を手に入れたり。廃水処理にも適した場所でなくてはならず、電力も安定的に確保されなければならない。
立地が決まっても、工場の設計やら見積り、建築会社の選定があり、建設がはじまっても基礎や杭打ち、土間や外壁、天井を備えた上屋を建設しなければならない。
人間に例えるならば、血管や神経とも言える電気系統や、呼吸器官ともいうべき通風管や排気管などの空調や、機械に水や液体を供給するパイプ、配管も必要になる。こうした設備工事もまた信頼のおける企業に任せることが必要だ。
今回このベトナム企業インタビューでご紹介するのは工場向けの電気系統、空調通風系統および工場パイプ配管系統の設計、施工および機材の製造、設置をする企業であるビンナム有限会社だ。
同社はナムディン省に本社がある。ナムディン省はフランス植民地時代にはインドシナ半島で最大の紡績・繊維工場があった場所で、当時1万人の労働者が働いていた。ハノイから1時間30分の距離にあるナムディン市は地方都市ではありながら、ベトナム北部における工業の中心地だったのだ。そんなナムディン市にビンナム社は誕生した。
創業者は、グエン・フォン・フー、1963年生まれだ。筆者が1962年生まれとわかるとわたしのことをすかさず「アイン」と呼んだ。兄、お兄さんという意味の二人称だ。こちらは当然それを受けて、フーのことを「エム」、弟と呼ぶ。するとインタビューの会話はとても親しみのあるものになった。
同社の前身は、フォンアイン工業設備センターという名称で1995年に設立された。4〜5名の小さな「会社」とも言えない組織だったという。技術分野や、商売、サービスの要求の高まりを受けて、2005年には名称をビンナムとし、有限会社として新しいスタートを切った。
ビンナム社の主な業務は、電気の配電盤・制御盤、ケーブル・ラダーの製造、工場の電気系統、配管・通風管系統の設備工事、機械設備・生産ラインの設置などである。工場の新設には当然のことながら、修理、改修などにも対応している。工場の設備工事を依頼するには頼もしい依頼先だろう。
ビンナム社は機械設備も一貫性のある現代的なシステムを備えていると同時に20年にわたる経験と、多年にわたり勤めてきた、技師、専門家、技術者、熟練した労働者がおり、ファクトリー・オートメーションや工場設備工事業界において高い信頼を得ている。
もちろん施主や、施工監理業者、設計コンサルティング会社からも高い評価があり、国内外の顧客から品質、納期、信頼を勝ち得ているのはいうまでもないと社長のフーは自信をもって語る。
同社はまた、労働者の安全に関しても配慮し、労働者に対する研修、訓練も怠らず、ユニフォームや靴、手袋、安全帽も装着して作業をするように指導しているとのこと。また、プロジェクトの施工実施中は常に労働安全に対する検査と違反に対しては厳しく処罰するなどしている、このことから20年以上にわたり、同社が手がけてきた工事やプロジェクトでは設備や人的な安全に影響するような事故は発生していないとも語るフー社長だ。
現在資本金は200億ベトナムドン、約1.25億円で、2022年の売上は230億ベトナムドン、約1.43億円とのことだ。コロナ前なら250億ベトナムドンあったというが、やはりこのところの不況で、売上も多少落ち込んでいるという。
実は、10年ほどまえ、日本向けに設備工事を引き受けたことがあったという。しかし、当時、まだ技術力も備わっていなかった同社にとって、日本側の要求基準は厳しいものだったので、うまくいかなかったのだそうだ。
同社はこの10年で日本以外の企業に対しては、すでに設備工事や配電盤、制御盤を納めて来て、技術力も上がった、今であれば、日本企業の設備基準を満たすことができるとの自身を強めているようだ。再度チャレンジしたいとフー社長は熱く語ってくれた。
日本人の勤勉さや働きぶりにはいつも敬意をもっている、かねてより日本を訪問したいと思っていたが、来年には訪日も実現させたいとフー社長。
「実はぼくには100人もの養子がいるんだよ」とフー社長がいう。「現在、そのうち3名は日本に行って仕事をしているんだ」というから驚いた。養子が100人!
フー社長の信念として、儲けたお金は自分で独り占めするのではなく、広く社会に還元したいとの希望から、貧しい家庭の出身でも学業が優秀な子どもたちの学費や生活費の面倒をみているのだというのだ。その数がのべ100名を超えたのだそうだ。
そういえばわたしのベトナム人の知人は、ナムディン市で日本語センターを開設し、子どもたちに日本語を教え、日本への留学や就労をあっせんしている人物がいる。ナムディンにはそうした篤志家が育つ土地柄なのだろうか。教育と慈善に熱心な人たちが育つ土地柄なのかもしれない。
すでに60歳となったフー社長は、日系企業向けに自社の設備を販売、設置したいと企業家としての野心もみせながら、一方でそこで稼いだお金は広く社会に還元したいとの希望を強くもってもいる。
フー社長は、筆者に対してほぼ同年代だからわかるだろう、お金儲けより、今は社会の役にたちたいという気持ちが強いんだ、という。ナムディン市に訪れる機会があったら、もっと詳しく、自らの考えを君に伝えたいな、そう言って彼はインタビューを終えた。
短いインタビューだったが、フー社長のそれは印象深いものだった。
ビンナム有限会社
VINH NAM COMPANY LIMITED
プロフィール
2005年、ナムディン市にて創業。前身はファンアイン工業設備センターで、1995年に事業を開始。事業経験は30年におよぶ。社長はグエン・フォン・フー。主な事業は配電・制御盤製造、ケーブルラダー、通風・空調設備、配管など工場の設備工事。