小さくてもキラリと光る会社でありたい〜真のグローバルビジネスとは?<後編>/Wons Vietnam.,JSC 二宮徳仁

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引き続き、Bizmatch運営会社のWons Vietnam.,JSC 二宮徳仁社長にお話を伺います。前回は、Wons社の強みやWons Vietnamでの取り組みについて伺いました。今回は、二宮社長が自社のビジネスマッチングサービス事業を通じて感じる日本企業とベトナム企業との違いや、ベトナムで感じることやご自身の会社への思いについて語って頂きました。
*前編はこちら↓
https://vn-bizmatch.com/japanese-42/

3.日本企業とベトナム企業のグローバル展開の違い

土佐谷:ビジネスマッチングのサービスを通して、日本企業とベトナム企業で違うと感じることはどんなことでしょうか?
二宮:今ベトナムに進出している日本企業のうち、9割以上は本社の下請けとして事業をされています。ベトナムマーケットで成功されている企業は1%にも満たないのではないでしょうか。以前、ベトナムと日本の企業の成長について、研究してみたことがあるんですが、スタート時点ではそんなに変わらないんです。でも5年経った頃から、ベトナム企業は一気にドライブがかかる。投資のスピード、拡大のスピード何もかも。最初から国内だけでなく、世界にも目を向けているというか、販売できない期間でも、営業を怠らずにやっている。最初から世界に出た時の体制をイメージしているんですね。
そのあたりは、裕福なベトナム人家庭の子育てにも表れていると思っています。長女はヨーロッパに、長男はアメリカに、次男は中国に留学させるなど、自分たちの儲けたお金を未来に投資する。実に戦略的ですよね。子どもたちは、それなりの大学に行くからそこで人脈ができる。ベトナムに戻ってきた時には、経営スタイルに関してもグローバル感覚を身につけているので、お父さんができなかった全国展開、世界展開を息子の代で実現できる訳です。中国や韓国のやり方を見て、「自分たちがやる場合、どうやれば勝てるか」ということを、きちんと研究しています。このあたりは、ベトナム人は強かです。だから、グローバル事業としては、日本企業よりもベトナム企業の方が力をつけてしまうんじゃないかという危機感があります。
土佐谷:そんな中、日本の企業が生き残るためには、どうしたらいいでしょうか?
二宮:僕がBizmatchを通して日本の企業に伝えたいことは、ベトナムに下請けセンターを作る、サプライヤーを見つける、という視点だけではなくて、例えば、この前行った工場に再び訪問したら、もう次の新しい工場作ってる、という場面を目にした時、どうやったらこんなに成長できるんだろう、というところにも目を向けてほしい、と思っています。その上で、日本の企業の持つ高い技術力を武器にグローバルに展開していってもらいたいですね。
それと、Bizmatch事業の次の展開にも繋がりますが、今後、僕たちのサービスをうまく使って頂いてる企業のモデルを通して、ベトナムで今起きていることを、わかりやすく伝えたい、と思っています。現状、10件中9件が「この掲載企業と打ち合わせをしたいです」「リストを欲しいのですが、1企業いくらで売って頂けますか?」という問い合わせです。今後は、この会社と組んだらWin-Winになれるだろうな、と思える、投資を含めたビジネス展開ができる企業を増やしていければいいな、と思っています。
一方、現場では一部、ベトナム企業に対し、無料でサンプルを作るのが当たり前などと、“日本スタイルのビジネスの押し付け”が行われているようです。ベトナム企業からしたら、小ロットしか注文がないのに、要求が多い日本の企業との取引は面倒くさく、日本嫌いになってしまいます。日本にはまだまだ“お察し文化”があり、取引先が穴埋めをしてくれるケースもありますが、それはグローバル展開では全く通用しません。図面に書かれてないことはやらないグローバル企業に対し、図面には書いてないけど要求した、とクレームを言う日本企業。これでは日本は相手にされなくなりますよね。
土佐谷:グローバルの波に乗れない日本企業ですか…。
二宮:ですので、僕たちが橋渡しをする場合は、きちんとベトナム企業の言い分も伝えていきますし、ベトナム企業の気持ちを汲んだ上で、アドバイスをさせて頂きながら、成約率を上げていきます。
土佐谷:逆に御社のような仲介業者がいないと、「なんでできないんだよ」「ベトナム企業は使えないよね」で終わってしまうこともあるでしょうね。
二宮:そういう企業が、ものすごく多いんですよ。僕自身もベトナムで会社を作ってわかったことは、人件費以外は全部高い、ということ。例えばベトナムの場合、税と法律がセットになっていて、会計事務所=法律事務所になっていて、日本よりも断然経費が掛かります。“ベトナムだから全部安い”みたいな間違ったイメージを持っている経営者さんがとても多いと感じるのですが、それでは世界で戦えませんよ、と伝えたいです。
他にも、日系企業は契約書もよく見ずに判子を押して、後からトラブルになったというケースをよく聞きます。でもベトナム企業は取引する前にお互いにルールをしっかり決めて、トラブルに関してもルールを決めているからうまくいきますよね。契約に対する意識は、日本企業は低いと思います。
土佐谷:アメリカは昔から契約が多いと言われていますので、アメリカの企業に対して、「なんで契約しなきゃいけないんだ」とは言わないでしょう。ベトナムは他の地域に比べ、まだまだ人件費が安いですし、それこそ中国の代わりで、自分たちのコントロールが効く範囲だと思っている方も多いのではないでしょうか。
二宮:多いですよ。でもトラブルにならないのは、中国のレベルが高いから。中国はそこを補完してくれますが、ベトナムはまだそこまで至っていない。取引先がベトナムにある日系企業のみ、というケースも多いですからね。でもそれは、グローバルではありません。単に日本から離れた場所で、日本企業と取引してるだけにすぎません。

運営を担当したハノイ工科大学機械学部でのイベント。

Wons Vietnam社のベトナム企業訪問。

4.ベトナムで成功している会社に共通していること

土佐谷:ベトナムで成功している会社、伸びている会社の共通点はありますか?
二宮材料や商品をベトナムで調達し、加工もできて、お客様は欧米。ベトナム国内で全てを完結できる会社は、めちゃくちゃ儲かっています。でも、それば本当に難しい。だから、日本企業がベトナムの市場を取るというのは、ビジネス的にかなりハードルが高い。特に中小企業は相当厳しいと思います。サービス業はギリギリいけるかもしれませんけど、それでも結構大変でしょう。
また、戦略がうまい企業は、ベトナム企業に投資をしていて、その中で自分たちの技術を提供したり、品質管理の方法などを導入していって、その会社が育ったら、ちょっと持ち株比率を上げていくっていうようなことをしたり、合弁で新しい会社を作ったりされています。本当にグローバルな戦い方をしている会社は、すごく伸びていますね。でもなかなかそういう考え方は、まだ日本企業の中でのグローバル戦略の中にないのが現状です。今後、ベトナムを拠点に成功している企業はどうやってグローバル市場で勝ち残っているのかを分析し、広げていきたいなと思っているのですが、ノウハウを教えたくないという企業も多いので、なかなか難しいかもしれません。
土佐谷:先ほど話ではありませんが、公開したら有益な情報が戻ってくるかも知れませんが、みんながやってないことは極秘にしておきたい、という気持ちが優先してしまうことは、致し方ない気がします。

5.ベトナムで感じること、会社への思い

土佐谷:毎月ベトナムに来られ、2週間ベトナムに滞在している中で、ベトナムでインスパイアされることはありますか?
二宮:グローバル感覚ですね。僕の会社は中小企業ですけど、マーケティングに力を入れる部分に、ものすごく共感しています。もうひとつは、育ってきた環境も教育も文化も違っている仲間たちと同じ目的とか方向性に向けるために作った仕組みが、日本の会社に逆輸入してより良くなっていく、という点です。また僕は経営者として、最初は自分たちで考えたビジネスモデルを、自分たちでやっていく方法だけを考えていたのですが、どこかの会社と組む、共同出資をして事業をやっていくというのも選択肢としてありかも、と思考が変わってきました。
土佐谷:描いていた企業像が、少しずつ変わってきたということですね。ベトナムは家族経営も多いですし、人とのネットワークがものすごく強いですよね。
二宮:ベトナム人はよく「私の会社」とか「これは私のマンション」と言いますよね。でも実際は、2~3%の株。それでも持っていれば、堂々とオーナーシップを持っている、と言います。大風呂敷を広げている部分もあるかもしれませんが、「株を持っていたら、自分の会社。だから私の会社としてやる。」というのは、日本人にはない感覚です。
土佐谷:日本で自社の持ち株会に入っていたとしても、”先々この会社が発展したら、ちょっとお小遣いがもらえるかな”くらいの感覚。経営している感覚にはならないですよね。
二宮:このあたりのオーナーシップ感が、この国の凄さ、強さを物語っているな、と。そういう場に居合わせると、何だか打ちのめされた感があります。ラーメン店、カラオケ店ひとつ取ってみても、何人かで持ち寄ってやってるけど、“みんなが経営者”という感覚ですよね。利益は持ち株の比率できっちり分けるし、お金が不足したら持ち株の比率で金を補填しなきゃいけない。そういうリスクと権利のバランスが、ベトナムはわかりやすいんです。
土佐谷:これは生まれ育った環境や感覚なんでしょうね。私たち日本人が、「オーナーシップ感覚を持ちなさい」と教わったとしても、簡単に身に付くものではないと思います。
二宮この国の底力は、仲間や一族のつながりにある、と。子育てなど長期的な戦略も含めてです。
土佐谷:日本人経営者がベトナムに来て、そういう目線で見ているのはとても興味深いですね。

土佐谷:今日のインタビューでも二宮社長の口から、度々“グローバル”というワードが出てきましたが、その一方でも地元、愛媛愛もお強いですよね。
二宮:生まれは大阪ですが、父が出身地の愛媛で水産業をしたいということで、僕が5歳の時に家族で移住しました。
土佐谷:ITの世界に踏み込んだのが、インターネットを使った魚の販売が最初だったとお伺いしていますが、今もその事業は継続されているのですか?
二宮:今はもうやっていません。父もすでに廃業しました。ただWonsのコーポレートカラーは青なんですけど、父の会社「魚徳水産」の1事業部からスタートしているということで、それを引き継いでいます。もうひとつのコーポレートカラーのピンクは、僕らの提供するサービスは、冷たいイメージのIT企業であっても、心遣いと思いやりを持っているよ、という気持ちを表しています。
土佐谷:別のインタビューで、二宮社長は「人と人との心のつながりを大切。それはお客様はもちろん、従業員に対しても同じ」とおっしゃっていますよね。
二宮:僕の会社ではコンタクトセンター内の社員比率が高いんです。本格的に立ち上げる前に大手のコンタクトセンターを見学させて頂きましたが、オフィスやトイレが殺伐としていて、スタッフも帰属意識がまるでありませんでした。最初に“安定性”を提供しない限り、どんな綺麗事を言っても無駄だと思い、コンタクトセンターを立ち上げた時、全員正社員で雇用しました。派遣社員中心の業界ではあり得ないことでした。
土佐谷:初期メンバーは皆さん、地元の方ですか?それともその話を聞きつけ、移住された方もいらっしゃったのでしょうか?
二宮:最初の立ち上げはとにかく学校に行って、「どこにも就職できなかったやつを全員回してください。日本語が話せればいいです。」とお願いしました。だから大変でした。コミュニケーション能力がない子もいましたしね。立ち上げヘルプとして、東京から呼んだメンバーもいたのですが、みんなビビってね、これで本当に大丈夫?って(笑)。
土佐谷:初期メンバーは、今も会社に残られているのですか?
二宮:今ではもう立派になって。直接雇用の6割が10年以上勤務しています。立ち上げ当初、地元では“不夜城Wons”と呼ばれるほどのブラック企業。忘年会の景品が“休める券”でした。当たっても使えなかったですけどね(笑)。そんなめちゃくちゃな時代から、よくみんなここまで頑張ってくれたな、って思います。だからこそ、この会社に残ってよかったな、と思える会社にしたくて。だから利益にも取引先にもこだわるという感じです。

Wons社のメンバー。

Wons Vietnamのメンバー。

土佐谷:人それぞれ理想とするワークスタイル/ライフスタイルというものを持っています。二宮社長ご自身、今、何%くらい達成できたとお感じですか?
二宮:80%かな。逆にそれに満足してしまっている自分がいるんですよね。苦労して一緒に働いてきたメンバーが家族を持って、家を買って、いい家庭を築いて、若いスタッフの良い手本となっている。でもこの会社の未来を考えた時、それじゃいけないな、と。それが残りの20%。そこが海外に来ている理由かもしれません。
土佐谷:今日お話を伺って、残りの20%も近い将来達成してしまいそうに感じましたが(笑)。達成したら、また新たな目標を立てるのでしょうか?
二宮:やはり何かはしていたいですね。僕は、自分が尊敬できるとか、自分にないものを持っている人に出会うことをずっとしたかったんです。今、いろんな国に行って、いろんな人と出会えて、経営の話をしたり、今やっている取り組みの話をしたりと、自分の中である程度満足しているというか、自分の夢はある程度叶えられたな、という思いがあります。でも、それでいいのか、と考えた時に、「僕が今倒れたら、この会社どうなるんだろう」と思いました。僕より若い社員も多いので、「社長がいなくなったら…」とみんなを不安にさせることは、どうなのかな、と。今は会社を守っていける、永続できる状態に持っていくことがゴールかな、と思っています。
土佐谷:その後、また新たに企業を立ち上げたいと思いますか?
二宮:これまで創業やベンチャー企業の立ち上げなど、色々なことを経験させて頂きました。ただ、創業期にかけるエネルギーは凄まじいもので、時には非情な決断も必要です。でも正直、それはもうあまりやりたくないな、と言うのが本音です。それよりも同じような考えの方や価値観を持っている人と組んで、どちらかというとオーナー側でいたい、と思っています。社長は職業であって、オーナーとは違います。ベトナム人はオーナーが多いですよね。僕らも仕事で色々な企業さんの間を取り持つことが多いですが、最初は社長が出てきます。最初は「この社長、本当に決定権あるのかな?」と感じることが多いのですが、大切な場面では必ずオーナーが登場します。このあたりは、やはりベトナムは凄いです。これが本当のグローバル企業の在り方なのでしょうね。

文=土佐谷 由美

<プロフィール>
二宮 徳仁(Ninomiya Norihito)
1972年/大阪生まれ
WONS VIETNAM JOINT STOCK COMPANY CEO
株式会社ウォンズ 代表取締役

◆略歴
5歳の時に、父親が故郷で水産業をしたいと、家族で愛媛県宇和島市に移住。
高校卒業後、プロミュージシャンを目指し大阪へ。
20歳直前に、母親の大病を機に夢を諦め、故郷に戻り、父親の会社を手伝うも、仕事中の不慮の事故で、右目を失明。その後、世界中の大手水産業者に魚を供給している、水産総合商社の社長との出会いでITビジネスへ転身、「世界規模で活躍し、夢を与えられる経営者になりたい」と決意。
1998年 ウォンズを創業
2000年 ウォンズを法人化、代表取締役に就任
2018年 トクシングループのサービス企画責任者として、ベトナムエリート人材を日本の中小企業に紹介する「Tokushin+Japan50」をリリース
2020年 WONS VIETNAM JOINT STOCK COMPANY設立
◆趣味:旅行
ベトナムの好きな場所:バンメトート(ベトナムの中部高原地帯にあり、“コーヒーの街”として有名)
→人々の自然な笑顔や豊かな生活を見ていると、住んでいる人たちがみんな幸せと感じる街だから。

*ウォンズ社(日本法人)や二宮社長については、こちらでも紹介されています↓
https://www.wons.co.jp/news/interview-wons01/
https://www.wons.co.jp/news/interview-wons02/

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下記よりお問い合わせください。


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土佐谷由美

投稿者プロフィール

千葉県出身。國學院大学文学部史学科卒。設計事務所を経て、(株)ニトリに入社。2019年自社家具工場への出向が初ベトナム。2025年春よりフリーランスに転向。

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