震災ボランティアから政治家秘書を経て、民間企業ベトナム駐在に

  • 2021/5/10
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ニイヌマ・ベトナム/箕輪佑耶インタビュー

 ファーストフード店でバイトをするごく普通の22歳の大学生だった箕輪。もしあの災害と、その後なにかに突き動かされるように飛び込んだボランティアの経験がなければ箕輪はここベトナムに存在していなかっただろう。2011年3月11日、東日本大震災。彼はその2週間後、ボランティアとして宮城県南三陸町に向かった。自動車にいっぱいの救援物資を詰めて。

 「なにかしなければならない、そう思ったんですよ。ファーストフードチェーンは大企業だから地域で被災して困っている人たちに手を差し伸べるだろうと思ってた、でも彼らはなにもしなかった」

 箕輪がボランティアとして飛び込んだ先は地元の政治家や市議会議員から構成されている支援ボランティア団体だった。そこになにも知らない大学生がたった一人やってきた形だった。場違いな気もしないではなかったが、夢中で被災者支援にとりくんだ。

 南三陸町は街の8割が津波で流された。高台にあった小学校とホテルだけが残った。2週間経ったものの、どこからが海でどこからが川でどこからが道かわからない。一面海水だった。自衛隊もまだきたばかりで、停電のため通信手段すらなかった。

 「500人におにぎりとみそ汁を配れ、といわれ被災者に届けました。2週間ぶりにあたたかい食べ物にありつけた、親族がまだ行方不明なんだ、などと被災者ひとりひとりの言葉に100回ぐらい泣きました」と箕輪はいう。「自衛隊が用意してくれるお風呂に週に1回しか入ることができない被災者に比べたら都会で水がでないくらいなんだ!と頭にきました」

 母親に反対されてまで被災地に向かった理由はと箕輪に尋ねると「衝動的だった、しかし何かひとびとの役にたちたい、という思いでしたね」と答えがかえってきた。「自分でまずは悩む前に行動する、やってみる、悩んでいる時間は無駄だなと、そのとき知りました」

 同年4月上旬には統一地方選があり、ボランティアで知り合った議員から地元の市議会選挙を手伝ってくれと箕輪は頼まれ、政治の世界に飛び込んだ。その議員は落選するも今度は国会議員秘書をやってみないかと誘われ、5月連休明けには衆議院議員会館で与党民主党の議員秘書をはじめた。

 「別に政治家になりたかったわけではなかったのですが」と苦笑する箕輪。最初の1年は議員が活動するための車両やホテルなどの手配に明け暮れた。2年目からは消費者庁、法務省などと消費者問題にかかわるプロジェクトにもかかわった。議員のみならず官庁の官僚たちから「根回し」「調整」を怠れば議員の思いも叶わないのだ、と教えられた。

 しかし2013年の国政選挙で秘書をしていた議員は落選。箕輪は失業した。箕輪はあっさりと政治の世界を離れ、地元草加市の職業安定所で職探しをした。ファーストフードチェーンという「大企業」に失望していた彼は中小企業に就職先をもとめた。最初に連絡をしたのが現在勤めているニイヌマ株式会社だった。営業職1名の募集だった。

 「早速電話すると『すでに2名採用した』との回答でした。でもせっかくだからと隣町の工場に経歴書を届けにいった。「採用担当者はわたしの経歴書をみて『議員秘書の経験があるのか、面白いやつだ』といって、営業ではなく生産管理、輸出入管理の事務方として雇ってもらいました」

 就職したニイヌマ株式会社は大正2年創業の老舗企業で本社は石巻だった。震災で多大な被害にあいながらも再建し、建設土木資材、福祉、LED製造から農業まで中小企業ながら多角的に事業を展開、国連サミットで提唱された「持続可能な開発目標(SDGs)」にも積極的に取り組む企業でもあった。「それは入社後知ったことで、ニイヌマの就職には『縁』があったんですね」と箕輪。災害などで苦しむ人たちにも手をさしのべる人間でありたいとの思いを理解してくれる企業と出会えたのだった。

ベトナムでの箕輪佑耶

 シンガポールに支店を設けるとの計画のもと、箕輪は輸出入管理を担当していた関係でシンガポールやタイ、マレーシア、インドネシアに出張をくりかえし、展示会に出店して自社のLED製品を紹介した。しかし商談は簡単にはまとまらなかった。

 シンガポール支店設立との計画は頓挫した。彼がひとりで最後に臨んだタイでの展示会でLED照明の強い引き合いがあり、いったん日本に帰ったが1週間後に再びタイを訪れると、とんとん拍子で初契約ができた。箕輪のはじめての海外営業実績となった。

 タイに代理店が設定できた。タイの代理店を足場にベトナムへも営業の手を広げた。ベトナムでも自社製品の売買契約が成立した。ベトナムでは代理店に頼らず、独自に販売網をひろげようとニイヌマ・ベトナム株式会社を設立したのが2年前だ。

 ベトナムで苦労や失敗したことはと問うと「ローカル社員に恵まれ大きな失敗や苦労はしたことがないですね。ベトナムはビジネスでもお酒でのつきあいが重要だったり、約束の時間に遅れてきたり、納期が守られかったりするがそれはすべてベトナムの文化だと思って受け入れています」と大らかな箕輪。「以前はお酒はあまり飲めなかったのですが、いまならショットグラスに30杯ぐらいならベトナム米焼酎でも正気は保てます」と頼もしい。

 同社のLED照明と蓄電池技術には注目が集まっている。JICAの実施する2020年度第2回「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の普及・実証・ビジネス化事業にこのほど採択されたのだ。同事業でニイヌマは自社のもつ簡易な太陽光発電と蓄電設備によって、電力供給が用意でない山間・遠隔地域において短期間での電力供給を実現し、その発電量や電力利用状況をクラウド経由で分析・検証を行い、客観的な電力需要の把握方法検証に取り組むものだ。この実証事業により再生可能エネルギーで環境への負荷を抑えつつ、電力事情の悪い地域住民への持続的な電力供給を可能とするものだ。

 同社はLED照明、蓄電設備に加えて中部高原のコントゥム省には農地を確保し、芽キャベツやケール、イチゴの生産も開始している。

ベトナムの子供たちと箕輪佑耶

「僕の特技は誰とでも仲良くなれること。どうやったら相手が喜んでくれるかを考えて、いわれたこと以上のことをしてあげる、すると彼らは喜ぶんです。そして今度はこちらから甘えてみせると皆快く応じてくれます」そんな人たらしの面もある箕輪だ。

 このコロナでもう1年以上も家族に会えていないという。「この4月で息子は小学校に入学したんですよ。オンラインで連絡はとりますが、会いたいという気持ちが募ってきてしまうのでかえってつらいですね」そういう箕輪は父親の顔をしていた。

文=新妻東一

ニイヌマ・ベトナム/箕輪佑耶
プロフィール
氏名 箕輪 佑耶(みのわ ゆうや)
生年月日 1988年(昭和63年)1月7日
出身 埼玉県草加市
趣味 サッカー(ハノイジャパンFCに所属)
マラソン(ハノイランニングクラブに所属)
家族 妻・息子1人・娘1人
いまのテーマ 人との出会いからサスティナベーションな未来を創ること
プロフィール
氏名 箕輪 佑耶(みのわ ゆうや)
生年月日 1988年(昭和63年)1月7日
出身 埼玉県草加市
趣味 サッカー(ハノイジャパンFCに所属)
マラソン(ハノイランニングクラブに所属)
家族 妻・息子1人・娘1人
いまのテーマ 人との出会いからサスティナベーションな未来を創ること
<これまでの経歴>
埼玉県立草加高等学校卒業
中央学院大学中退
学生時代は7年間ファーストフード店でアルバイトをしていました。
2011年 国会議員事務所にて勤務
2013年11月 ニイヌマ株式会社に入社
2016年 海外事業部所属
2018年 タイローカル代理店に1年間出向
2019年1月 ベトナム赴任
2019年3月 ニイヌマベトナム設立
現在に至る
2011年 国会議員事務所にて勤務
2013年11月 ニイヌマ株式会社に入社
2016年 海外事業部所属
2018年 タイローカル代理店に1年間出向
2019年1月 ベトナム赴任
2019年3月 ニイヌマベトナム設立
現在に至る
<ベトナムでの取り組み>
ベトナム日本商工会議所(JCCI) 建設部会所属 理事
生活環境委員会 委員
ハノイ宮城県人会 幹事・事務局
ハノイU-40会 代表
ハノイ初心者の会 共同幹事
ベトナム日本商工会議所(JCCI) 建設部会所属 理事
生活環境委員会 委員
ハノイ宮城県人会 幹事・事務局
ハノイU-40会 代表
ハノイ初心者の会 共同幹事

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