シーズン別おすすめベトナム観光地「春」(3月〜5月)

 ベトナムは亜熱帯に属するので、雨季と乾季の二季しかないと信じて疑わない方もおられますが、ハノイからホーチミン市まで1700キロにわたる、南北に長い国土をもつベトナムは、地域によって季節はかなり違うものです。大まかにいうと、北部、中部、南部で同じ3月から5月といっても気温も季節感もかなり異なります。
 3月から5月に春を感じられるのは実は北部と中部のみ。南部はこの時期、乾季の終わりにあたり、雨がほとんど降らないので気温もかなり高くなります。日によっては35度以上と猛暑を通り過ぎて酷暑となる季節。
 旅行ガイドブックに書かれている服装や天候に関する注意事項をよく読んで、訪れる場所の気候について事前にチェックしておけば、憂いなし!「春」の季節ならではの旅を楽しんでください。

<南部>

 ベトナム南部の雨季はおおよそ5月から11月ごろまでです。この季節は、ほとんど毎日スコールが1日1回ふります。時には1日ぐずついた天気になることもあります。ですので、多くのガイドブックには「雨季は旅行を避けた方がいい」と書かれています。ただ、ものは考えようで、1日の間、数時間雨で足止めされるのなら、カフェや博物館で雨宿りして過ごすという手もあります。スコールのおかげで街もクールダウンして、多少涼しくなったところを徒歩で観光する、という考え方もあります。
 乾季の終わりとなる3月から4月は、あまり雨が降らないため、気温は上昇しがちです。ホーチミン市で一番暑い季節だともいわれています。ただ、雨で足止めをくうことはありませんので、炎天下の中でも元気に歩き回れる方には南部を旅するにはうってつけの季節だと思います。
 ホーチミン市のみならず、メコンデルタ各省にもぜひ足を伸ばしてください。もし時間がそれほどないというのであれば、ティエンザン省のミト市のメコンリバークルーズがおすすめです。乾季にあっても満々とした水をたたえたメコン川、ニッパヤシのジャングル、新鮮なトロピカルフルーツを楽しむことができます。

 ベトナム戦争の歴史の一端を知ることができるクチトンネル観光もホーチミン市からの日帰りコースとしてもおすすめできます。車で市内から1時間半から2時間の距離にあった南部解放戦線の地下基地のトンネルをくぐり、当時の戦争の苦労がしのばれる場所です。
 ちょっと足をのばして、100年の歴史をもつ宗教、カオダイ教の総本山、タイニンの寺院を訪れてはいかがでしょう?「第三の男」の作家としてしられるグラハム・グリーンはその作品の中で、ディズニーランドのようだと評したカラフルな彩りの寺院の外観と内部を見学することができます。
 同じタイニン省には平地におわんを伏せたような山がたったひとつぽっかりとあります。バーデン山といいます。ここにはふもとからケーブルカーがあり、海抜986mの山頂までのぼることができます。もちろん徒歩でのぼることができますが2時間ほどかかります。気温はふもとより10度ほど低く、ひんやりとした風が吹いてきます。タイニン省の平地が一望できる山頂はホーチミン市からの観光客で賑わっています。大きな仏像もあります。

<中部>

 中部の雨季は11月から1月にかけて雨季となります。南部とは時期がまったく異なるので注意が必要です。また、9、10月頃は台風のシーズン。ホイアンなどでは街そのものがトゥボン川の増水で床上浸水してしまい、観光そのものができなくなりますので、この時期の観光は避けたほうが無難です。
 中部でもっとも観光に適したシーズンとは雨季が終わった2、3月ごろから4月にかけてといわれています。気温も30度程度までしか上がらず、もちろん日本からいったら暑いかもしれませんが、比較的過ごしやすく、屋外の観光にも適していると思います。
 3、4月は海水浴にはまだ気温が低い時期ですが、5月ともなれば気温も35度ぐらいまであがりますので、十分ビーチを楽しむことができます。
 中部は、ダナンのミーケビーチや各ビーチリゾートのプライベートビーチ、ホイアン近くのクアダイ、アンバンビーチにあるホテルリゾートがおすすめです。ただし、かつてはあれだけひきの長いビーチだったのが、このところ砂浜の侵食が著しく、一般の海水浴場は遊泳禁止になっているところも増えていますので、事前に確かめてからお出かけください。
 ダナン周辺の観光地として、ビーチのみならず海抜1500mの山にあるリゾート地、バナヒルズもおすすめです。こちらもふもとからケーブルカーで登り、頂上にある遊園地で絶叫マシンを楽しむこともできます。かつてフランス植民地だった時代には、洋風の別荘が建てられていたこともあり、その時代を偲んで洋館を模した建物がたっており、スマホ写真のチェックインポイントとしても人気の場所です。

 山の中腹には「神の手」に支えられた円弧の橋がかかっており、ここから臨む景色が素晴らしいものがあります。乾季であれば、山の上も晴天となる確立が高く、遠く海まで臨むことができるでしょう。
 中部の観光のハイライトはなんといってもホイアン旧市街の観光でしょう。華僑たちの会館や陶器博物館に加えて、街をそぞろ歩きするのにもうってつけです。カフェやレストランでゆったりお休みをしてから、再び歩いて狭い路地を歩きながら、黄色い壁の街並みを楽しんでください。雨季の終わったこの季節なら雨の心配もありません。
 19世紀から20世紀半ばまでグエン朝の王朝があったフエも訪れてみてください。広大な王宮や歴代の王たちの廟墓もそれぞれ趣きがあって、観光客を飽きさせません。ただし、炎天下を徒歩であるくことになるので、水分補給をお忘れなく。あまり無理して歩くと熱中症になる危険性があります。王宮内には電動カートも走っているので、徒歩が無理だとわかったら、ぜひご利用ください。

<北部>

 ベトナム北部の人たちは3月から5月のこの季節を「春」と呼びます。ただし、日本の春のようにおだやかな暖かさだと感じる日はそれほど多くはなく、晴れ間がでると急に気温があがって夏のように暑くなりますし、かと思えば冬に逆戻りしたかのように寒くなって、あわてて防寒着を取り出すようになります。
 どんよりと曇りがちのハノイも、5月ともなるとハノイの街路樹が次々と花を咲かせてくれます。俗称火焔樹とよばれるホウオウボクの燃えるような朱色の花に、ベトナム語ではバンラン、和名はオオバナサルスベリの薄紫色の花に街が彩られます。
 ハノイの中心部にあるホアンキエム湖の周辺に植えられたこれらの街路樹の花々が一斉に花開き、ハノイの人たちはアオザイを着込み、記念撮影をする姿がみられます。
 とても短い期間ですが、ぜひこの季節にこそハノイを訪れてみてください。
 また、この季節には「海の桂林」と呼ばれるハロン湾観光にもうってつけです。もちろん3、4月はまだ気候が不安定ですので、寒さや小雨に見舞われることもあるかもしれませんが、それも時の運。天気がよければ穏やかなハロン湾の景色を臨むことができるでしょう。

文=新妻東一

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