“芸術の秋”を探しに、ハノイ散策
- 2025/10/27
- ベトナム観光旅行記

10月に入り、ハノイも最高気温が30度を下回る日も増え、穏やかで過ごしやすい季節になりました。食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋。日本には実にいろいろな秋があります。今回はカメラ片手に、ハノイの町中にある“芸術の秋”を探しに出掛けてみたいと思います。
目次
1. 国宝を間近で観る <ベトナム美術博物館>
まずベトナムを代表する美術品を観に美術館へ行ってみましょうか。実は建物自体が芸術品、一見の価値ありなのです。1937年フランス統治時代にフランス人建築家のエルネスト・エブラールの設計で建てられ、当初は、フランス高官の子どもたちのための寄宿舎として使われていました。エルネスト・エブラールは他にも、ベトナム国立歴史博物館やクアバック(北門)教会(いずれもハノイ市)なども手掛けました。フランスとベトナムの伝統を融合した「インドシナ・スタイル」が特徴で、当時ベトナム人からも人気のある建築家でした。その後、1962年にベトナム政府が国の美術品をコレクションする場所として転用し、1966年に博物館として開館しました。現在では2万点の収蔵品があり、そのうち2000点が常設展示されているそうです。

建物は常設展示が行われている本館と、コンテンポラリーアートや特別展が楽しめる別館に分かれています。本館は1階から3階までが展示室、最上階に展望台と土産物屋があります。
展示室では、古い時代の出土品から現代の美術家たちによって制作されたアート作品を鑑賞することができます。もともと寄宿舎であったせいか、1つ1つの部屋が小さいため、何度もドアを開けたり閉めたりしながら館内を廻るのは、なんとも新鮮。また日本で国宝は、ガラス張りのケースで厳重に管理されていて、長蛇の列に並んで観るイメージですが、ベトナムでは音声ガイドを聞いていて、これが国宝?!と耳を疑ってしまうほど、手が届くほどの至近距離(実際には触れてはいけません)で、ガラス張りなどもなく、国宝を観ることができるのも驚きです。漆絵、絹絵、油絵など表現方法はいろいろですが、清楚な女性を描いたもの、戦争や革命をテーマにベトナム人の勇敢さや兵士に対する人々の優しさ、勝利への信念や希望を表現したしたものが多い印象を受けました。
1つ1つの展示品には、ベトナム語、英語、フランス語の解説がついていますが、2000点もあると、私のような”にわかベトナム美術ファン”では、限られた中でその作品の素晴らしさを十分堪能することは難しいでしょう。そんな時に便利なのが、音声ガイドです。チケットカウンターでお金を払い、美術館の入口付近の専用カウンターに行きます。自分のスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、無料で貸してもらえるヘッドフォンと連携します。係員が丁寧に教えてくれるので、設定は5分ほどで終わります。あとは気になる作品の前で、該当の番号を入力し、ガイドを聞くだけ。もちろん解説は言語を選べますので、どなたでも理解もしやすくおすすめです。



別館では、1階から3階が特別展やコンテンポラリーアート(現代美術)の展示、地下はバッチャン焼きをはじめとしたベトナムの焼き物の歴史を学べるスペースとなっています。
古い建物のため、本館、別館共エレベーターがなく、階段を使って館内を巡ります。敷地内には、スターバックスやレストランも併設されており、荘厳な建物を眺めながら一息つくのもよいでしょう。
ベトナム美術博物館 (Bảo tàng Mỹ thuật Việt Nam)
住所 66 Nguyễn Thái Học, Ba Đình, Hà Nội
アクセス ハノイ大教会から車で約15分/徒歩約20分
営業時間 8:30〜17:00 *月曜は休館日
入場料 40000VND (約240円)
音声ガイド 50000VND (約300円)
ウェブサイト https://vnfam.vn
2.フレンチヴィラのアートギャラリー&カフェ <Manzi ArtSpace and Cafe>
ベトナムの巨匠たちの作品を観て大満足したところで、他にもいろいろなアーティスト作品も堪能したくなってきましたね。ベトナムの若いアーティストの作品が観られるギャラリーを探して、今度は観光がてら旧市街を散策してみましょう。
やってきたのは、外観からして趣のある1軒のフレンチヴィラ。アートギャラリーはどこかと、カフェの前でウロウロしていると、すかさず若い店員さんが声を掛けてくれました。建物の奥に進むと、注文カウンターがあり、その横にある階段を上ると2階にアートギャラリーがあります。壁には所狭しとアート作品がずらり。気に入った作品があれば、その場で購入することもできます。




アートを鑑賞した後は1階のカフェでひと休みしませんか?カフェスペースにも、アート作品が展示されているので、まるでギャラリーでお茶を楽しんでいるかのようです。建物が通りから少し奥まっていることもあり、のんびりと穏やかな時間を過ごすことができます。


幸運にも私が訪れた日はオーナーのチャムさんいらっしゃいましたので、色々お話を伺うことができました。ベトナム人のアーティストたちが自立できるようにと、カフェで得た収益をもとにギャラリーを運営し、彼らの作品を発表できる場を提供したいという思いで2012年にこの場所にカフェとギャラリーをオープンしたそうです。1階のカフェはベトナム人が多く利用するそうですが、2階のギャラリーには世界中からバイヤーが訪れるとのこと。親交のあるベトナム人アーティストがどのくらいいるのか聞いたところ、はっきりした数はわからないけど、200人以上はいるかな?とのことでした。毎年12月には、“ART for You”という大規模な展示・販売イベントを行なっていて、18回目となる今年は11月27日から12月9日まで開催するそうです。
またこちらのカフェから徒歩1分ほどのところに期間限定のイベントなどを行う展示専用スペースもあります。開催中のイベントは、お店のSNSで確認することができます。
Manzi ArtSpace and Cafe
住所 14 Phan Huy Ích, Trúc Bạch, Ba Đình, Hà Nội
アクセス ハノイ大教会から車で約10分/徒歩約25分
営業時間 8:00〜19:00
入場料 無料
Facebook https://www.facebook.com/manzihanoi
*12月に開催される展示・販売イベント“ART for You”の詳細はこちらで確認できます↓
https://www.facebook.com/artforyouvietnam
Manzi Exhibition Space
住所 2 Ng. Hàng Bún, Trúc Bạch, Ba Đình, Hà Nội
アクセス Manzi ArtSpace and Cafeより徒歩1分
営業時間 11:00〜19:00 *月曜は定休日
*住所で検索すると、全く別の場所が表示されるので注意。
まずはManzi ArtSpace and Cafeに来て、徒歩で向かうのが安心です。
3.ハノイ随一のアートなギフトショップ <Collective Memory>
アートも旧市街の街並みも堪能し、観光シーズンのハノイを満喫したところで、頭をよぎるのは日本で待つ家族や友人たちへのお土産。コーヒーやドライフルーツもいいけれど、ベトナムのおしゃれな雑貨も気になる。そんな時に便利なのが、こちらのCollective Memoryです。ハノイ大教会から徒歩1分の好立地で、旅行客だけでなく、ハノイに住む駐在員の奥様方の間でも人気のセレクトショップです。


「雑誌を作るように自分たちの良いと思ったものを集めています。理想とする雑誌をそのままお店にしたという感じですね。」そう話してくれたのは、オーナーでトラベルジャーナリストでもあるホアンさん。パートナーのチャンさんはフォトグラファーで雑誌のお仕事を通じて知り合ったそうで、コロナ前の2017年にこのお店を始めました。ベトナムで作られたキャンドルやオーガニックフレグランスなどもおしゃれなアイテムを揃えているのはもちろん、ベトナム人やベトナム在住の外国人アーティストの作品も多く取り扱っているのも、このお店の人気の理由でしょう。現在20名のアーティストの作品(商品)を扱っているそうですが、ホアンさん自ら、新たなアーティストの発掘も積極的に行っています。
今回ホアンさんがお勧めしてくれたのは、サンマを模したポーチ。ファスナーを開けると、魚の骨も描かれていて、とてもキュート。思わぬところで秋らしい食材も見つけてしまいました。サンマポーチは長さが30cm程度あるので、ペンケースだけでなく、箸入れやスリムなスマートフォンの三脚などを入れるのに良さそう。また毎年11月頃に発売されるオリジナル卓上カレンダーもおすすめです。その月のハノイを代表する花が描かれているのですが、毎年少しずつデザインが変わるので、来年はどんなデザインになるか、今から楽しみです。


Collective Memory
住所 12 Nhà Chung, Hàng Trống, Hoàn Kiếm, Hà Nội
アクセス ハノイ大教会から徒歩1分
営業時間 10:00〜18:30
Facebook https://www.facebook.com/collectivememory.vn
4.街を歩けば、アートに出会う<無料スポット>
ハノイは古い建物も多く、ちょっとした日常のもアートに見えるのが不思議です。
先に紹介したManzi ArtSpace and Cafe からCollective Memoryへ向かう途中で見つけたスポットを紹介します。
◆フンフン(Phùng Hưng)通り
別名、壁画通りとも呼ばれているハノイの有名なフォトジェニックスポットです。ベトナムと韓国の友好条約締結25周年を記念して、両国のアーティストたちがハノイ駅―ロンビエン駅間を走る列車の高架のアーチ型の石積み部分に絵を描きました。ハノイの古い街並みやベトナムを題材にしたトリックアートが描かれており、週末はアオザイを来たベトナム人や観光客で賑わいます。


更に線路沿いを南下すると、背の低いトンネルを見つけました。その側にある食事処のウォールアートも、ベトナムの代名詞、低いプラスチック椅子と相まって、素敵なアートスペースになっています。


ベトナム人の友人に「ベトナムの秋と言ったら?」という質問をしてみました。困ったような顔をしながら、出てきた答えは「コム(緑色のまだ成熟していないもち米のことで秋のハノイの名物)」。日本でよく言う、食欲の秋や芸術の秋に近いニュアンスの言葉はないそうで、逆に「秋って言ってるけど、いつの季節でもいいものばかりじゃない?」と返されてしまいました。日本を離れていても秋を感じたい。秋に対する特別な思いは、日本人だけが持つ感覚なのかもしれません。
文=土佐谷 由美
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