シーズン別おすすめ観光地「夏」(6月〜8月)
- 2025/05/28
- ベトナム観光旅行記

亜熱帯に位置するベトナムは夏暑いし、雨も多い、観光向きでないシーズンなのでは?そう思う読者も多いと思います。事実、私の住むハノイは、特に6、7月は40度を超える気温で、その暑さには閉口します。確かにこの季節のハノイや北部ベトナムの平野部を訪れるのは避けた方がよいと思います。
しかしベトナムは日本と同様南北に長い国。同じ季節でも北海道と沖縄では気候が異なるように、ベトナムも場所を選べば、夏にも快適な旅を楽しむことができます。
南部ベトナムはこの季節は雨季なので旅行には不向きであるとガイドブックには書かれています。でも、気温が高く、不快なのは実は雨季に入る前の3、4月ごろ。5月にもなると雨季に入り、逆に雨の後はとても過ごしやすくなります。
雨季というと日本人は「梅雨」の一日中、ジメジメとした雨が降り続くイメージですが、ベトナム南部の雨季は1日の間に1、2時間、大雨のスコールが降って、雨がやむと気温も下り、過ごしやすくなるのです。
晴れている間に観光を楽しみ、雨がふりはじめたら美術館や博物館を巡ったり、カフェで雨宿り、その後はからっと晴れた市内を再び歩くことができます。夜はエアコンなしでも過ごせるほど、涼しく感じられることもあります。
夏にも快適に過ごせる観光地をいくつかご紹介いたします。
ベトナム中部:ダナン

ベトナム中部で人気のビーチリゾート。近年はリゾート開発が進み、ひきの長い白い砂のビーチにいくつもの高級リゾートホテルが立ち並んでいます。
また、ミーケビーチなどベトナムの庶民が遊ぶビーチもあり、浜辺にシーフード料理店やカフェ・レストランが立ち並んでいます。市内や海岸通りに面したホテルに泊まれば、リーズナブルに海を楽しむことができます。
ベトナム中部、ダナンの雨季は10月から1月の秋から冬場にかけてです。そもそもこの季節には気温もかなり低くなるので、海やプールに入ることもできません。海水浴やビーチリゾートを楽しむには乾季の6〜8月はベストシーズン!
雨季と異なり、乾季のダナンの海は比較的透明度が高くなり、美しい海の色も楽しめます。海は東側に面しているので、海に沈む夕日を楽しむことはできません。かわりにちょっと早起きして、朝日ののぼる海を楽しんではいかがでしょう。
高級ビーチリゾートならプライベートビーチやプールが楽しめます。ミーケビーチに地元のベトナム人は朝早くか、夕方の涼しい時間でないと海水浴にはでかけません。日が高く、日焼けしやすい時間に海水浴にでかけるのは、太陽のひかりをたっぷり浴びて、日焼けをしたい外国人のお客様に限られます。プライベートビーチでなくても、思いのほか、日中はゆったりすごすことができます。
海に飽きたら、1300mの高さにある避暑地バナヒルズの遊園地や、16〜17世紀に日本人街のあったホイアン、チャンパ王国の聖域ミーソン遺跡を訪ねられてはいかがでしょう。
中部高原:ダラット

ラムドン省のダラット周辺は海抜1300m〜1500mの高さにあり、中部高原の名に相応しい場所です。いわゆる熱帯の高原地帯にあり、そのおかげで野菜や花卉の生産に適した土地柄です。
平野部で35度を超えるような暑さにある夏場でも気温は平野部に比べて5〜10度程度低く、夏も過ごしやすい温暖な気候です。
感染病学に優れ、その名がベトナムの通りの名前や研究所の名称としても知られているパスツール。その教え子として知られている医学者イエルシンがダラットを高原の避暑地として開発するよう当地の植民地政府に提言したことから、この地域が広く知られるようになりました。
街の小高い丘にはパレスホテルがあり、仏領時代に建てられた建物はロマンチックな雰囲気を醸し出しており、新婚旅行先や結婚写真の撮影場所としても人気があります。林芙美子の小説「浮雲」には、このホテルに主人公が訪れるシーンも描かれています。
季節の花が植えられたフラワーパークや、ダラット市場などを訪れたり、古くからあるカフェでお茶をして街をそぞろ歩きするのもよいでしょう。
ダラット市郊外にでると滝の名所もあります。風変わりなところでは、ハンガー・ゲストハウス、通称「クレイジー・ハウス」を見学してはいかがでしょうか。この別荘は、元ベトナム共産党の書記長であったチュオン・チン氏の一人娘である建築家ダン・ベト・ガーが建てた家で、まるでガウディを彷彿させるような奇妙で有機的なデザインをしており、ビジターも内部を見学することができます。
ベトナム北部山岳地方:サパ

サパもダラット同様、古くから避暑地として開発の進んだ場所です。高度はやはり1500mほどの高さにあり、夏なお涼しい場所です。
このサパには赤ザオ族やモン族の人々が多数住んでおり、いわゆる狭義のベトナム人より少数民族の方が多数住んでいる場所でもあります。
サパ市内を散策して、カフェやレストランをひやかすのも楽しいものがありますが、サパを訪れたら、ぜひやまあいにある少数民族の村を訪ね、自分の足で村の中を歩いてみてください。なかでもタフィン村の赤ザオ族の人々はひとなつっこく、ホスピタリティにあふれていますので、自宅に案内してくれますし、薬風呂などを試すよう勧められることでしょう。
赤ザオ族の伝統的な衣装の柄の入ったランチョンマットやコースター、壁掛けなども、ハノイで購入するよりは安く手にはいります。
最近では山のリゾートホテルが多数建設されていますので、快適なリゾートホテルライフが楽しめます。
サパの名物には馬肉の鍋、「タンコー鍋」が有名です。また近年サパでは淡水での魚の養殖が盛んで、チョウザメやサーモンなどの魚の料理や鍋も風変わりで、楽しいものがあります。ベトナム北部はかなり暑い夏場ですが、この季節のサパは緑が美しく、気温も平野部より低いので、夏旅をするにはよい観光地です。
雨季の南部ベトナム

ほとんどのガイドブックで、雨季の旅行は勧められていません。しかし、ベトナムに長年住んでいる私としては、南部ベトナムこそ、雨季に訪れて欲しい場所です。特に1日1回はふる大雨、スコールを体験することそのものが、異国情緒あふれるものです。
南部の田舎にいくと、スコールが降り出すと、子供たちがシャンプーを片手に道の真ん中に飛び出してきて、はだかんぼうになって頭を洗い、スコールで洗い流す姿がみられたりします。
スコールは降っても1日1回ぐらい。降っている時間も1、2時間と短いものです。スコールの時には、その雨足の強さから傘などなんの役にもたちません。着るとしてもゴム引きの雨合羽を着込むしか、雨水を防ぐことはできません。多くの人々は軒先に入って雨がこやみになるのを待つか、家の外にでることをあきらめます。
観光客もそれにならって、軒先で雨がやむのを待つか、カフェや博物館など屋内で過ごせる場所で観光や休憩を楽しんでください。
南部のオープンエアなカフェでは、いくつもハンモックが吊るされている「ハンモック・カフェ(Cafe Võng)があります。スコールが降っている間は、そこに寝転がって左右にゆられ、ときどきアイスコーヒーやアイスティーを口にすると、最高の南国気分が味わえます。
文=新妻東一