事例紹介
ベトナムでの海産物取り扱い企業調査と訪問アテンド

目次
お客様からBizmatchへのご依頼相談内容
Bizmatch読者のT様から「静岡県の知人が水産業をしており、ベトナム進出を検討しているため紹介したい」というお問合せを頂き、静岡県で水産業を営むS社をご紹介頂きました。
S社では地元海産物を中心に日本国内でビジネスを展開しています。釜揚げしらす、釜揚げ桜エビ、乾物類、加工食品を含めて幅広い商品を取り扱っており、日本国内のコンビニエンスストア向けにも商品展開をされています。
今回S社にとっては初めての海外展開としてベトナム市場を足掛かりとした商品の世界展開を目指していました。
まずはS社の主力商品である釜揚げしらす、釜揚げ桜エビをベトナムで流通させるために、ハノイ在住の日本人向けに食品販売店の視察を兼ねた商品ニーズと卸価格の交渉、流通方法の調査を行いたいという希望でした。
PJ目的
ベトナムでは釜揚げしらす、釜揚げ桜エビは一般的に知られていない高級食材となるため、まずベトナムのローカルスーパーでは取り扱ってもらえないことは事前の簡易調査ですぐに分かりましたので、まずはハノイで釜揚げしらす、釜揚げ桜エビを販売できる可能性のある日系スーパーや食品店の調査、さらに食品店以外の日系和食レストランの商品ニーズ調査や販路開拓ができる方法を見つける方針で今回のプロジェクトを進めることを合意しました。

PJ進行の流れ
ステップ1:ハノイとホーチミンの商品ニーズ調査とハノイ市内の視察・商談先のご提案
紹介者T様を通して今回の依頼元となるS社の希望として、Bizmatchに掲載されている日本食品販売を取り扱う「ハノイ商店」のオーナーとのアポイントをお願いしたいというご要望を頂きました。
ご相談を受けた時点で、S社がハノイに来日されるまで2週間を切っており、早急にハノイ商店のオーナー様への訪問交渉に加えて、他にも取り扱い候補店の調査・提案が必要と考えて、ウォンズチーム(Bizmatchサービス)では釜揚げしらす、釜揚げ桜エビの販売ではなく、現在のベトナムの海産物の輸出入の現状や需要について、主マーケットとなるハノイとホーチミンの食品流通市場とニーズ調査を同時並行で進めることで決定しました。
ステップ2:流通調査と訪問アポイントメント
ハノイ商店のオーナーは日本人からベトナム人へ譲渡されていましたので、改めてベトナム人オーナーへ今回のプロジェクトの目的と主旨をお伝えした上で、視察受け入れとS社との情報交換についてご協力の依頼とアポイントメント調整を実施しました。
またハノイで最大の日系スーパーチェーンを経営する日本人オーナー兼社長にも同様の目的と主旨をお伝えし、情報交換の場をセッティングすることができました。通常ルートのアポイントメントでは中々お会いすることができない社長でありましたが、私たちBizmatch独自の人脈ルートによって商談の場の機会を設けて頂くことに成功できました。
さらに私たちは小売店のルート以外でのニーズ調査も必要と考えて、ハノイ市内で最も人気の高い和食レストランにもご協力の交渉をして、日本人店主とのアポイントメントを取ることができ、スケジュールが決まっていきました。
同時並行でウォンズチーム(Bizmatchサービス)はベトナムにおける日本食材の流通事情を把握する必要があると考えて、ホーチミンにてJETROアドバイザーを務められ、食品市場に詳しく、自らも食品関連事業を営んでいるA氏に情報提供の協力を要請し、主マーケットであるハノイとホーチミンにおける商品ニーズの確認と食品流通経路のあり方の最新の情報収集を同時並行で進めました。
当初S社はハノイ商店1社への訪問予定でしたので、3社訪問に加え、ハノイとホーチミンにおける商品ニーズ調査と食品流通経路の情報提供のご提案にとても喜んでいただけました。
ステップ3:視察アテンド・経営層との打ち合わせ
S社にベトナム(ハノイ)へお越しいただき、ウォンズスタッフがアテンドをしました。
ハノイ商店ではオーナー夫婦とベトナムの変化(経済発展、人件費、人口増加など)について話し合いました。またハノイ商店の事業や主な取扱商品などの説明を受け、輸入の際の関税対策について意見交換をしました。
打ち合わせの最後にS社が持参した釜揚げしらす、釜揚げ桜エビのサンプル品をハノイ商店のオーナー夫婦、スタッフに試食してもらい感想を聞くことができました。「もしベトナム人をターゲットとする場合は、サンプル品の状態では彼らの口には味が薄すぎるため、商品改良が必要である」と具体的なアドバイスを頂けたことは、とても参考になったと喜び頂けました。

次はハノイ市内で複数店舗を運営する大手日系スーパーの社長との意見交換です。ベトナムの魚介類の需要と供給についてや仕入れについて具体的なお話をお聞きできました。これまでS社はベトナム大手スーパーへの販路開拓を検討してきましたが、価格や基準面で大きな課題があり、実現に至っていませんでした。そのため、アドバイスを含めて日系スーパーの販売網を通じて、流通方法や輸送方法について具体的な商談が進みました。大手日系スーパーでは、S社の取り組みや駿河湾産のしらすと他地域産のしらすの品質の違いについて理解が進み、最終的にはS社へ商品の見積をご依頼いただけました。
最後の訪問先である日本和食店では、ベトナムの日本人滞在人口の変化と和食ブーム、流通について話が進みました。店主の情報では「現在、ベトナム在住の日本人は減少傾向にあり、一方でベトナム人の中で日本食を食べる人は増加傾向にありますが、その多くはホーチミン市在住です。ベトナムにも類似の商品はありますが、品質や調理法が異なります。」という情報を得て、S社ではホーチミンへの流通やベトナム市場に指示される味を含めた商品開発を考えるきっかけとなりました。
PJの成果
当初、S社が訪問を希望していたハノイ商店だけでなく、日系の大手スーパーチェーン、日本和食店へアポイントを取り、ベトナムの魚介類の需要と供給や流通について、ベトナム市場で指示されるために必要な商品開発など多岐に渡った情報収集と話し合いができました
今回のハノイ訪問で手応えを得たため、S社より「次回はホーチミン視察の際はまたウォンズチームにお願いをしたい」とご要望頂き、今後のベトナムへの輸出で成功するために必要な戦略の見直しと課題の確認ができたことを喜んで頂けました。

Bizmatchチーム(ウォンズスタッフ)が大変だったこと
今回、S社からベトナム企業視察のご依頼を頂き、ハノイ訪問までに2週間を切っていたため、限られた時間での視察先の手配やスケジュール立案、釜揚げシラス、釜揚げ桜エビを流通させるための調査によるプロジェクト取りまとめと提案は無駄のない計画遂行は少し大変でした。
当初お客様からのご依頼は「ハノイ商店の訪問希望」のみでしたが、お客様の最終的な目的は「ベトナムへ釜揚げシラス、釜揚げ桜エビを販路開拓して、海外市場開拓の足掛かりとする」ことであったので、これを実現させるためには最適な流通経路や食品インポーター業者との情報交換と情報収集など、輸出入の流れを含めたビジネス企画ご提案が必要でした。
ウォンズスタッフは限られた時間の中で、S社の流通につながる企業の選定、JETRO専門家からのハノイとホーチミン市場の最新情報の収集、商談につながる訪問先の選定と事前交渉を進めていきました。特に日系大手スーパーチェーンの社長とのセッティングでは、通常はなかなかお会いできない方のため独自の人脈のご支援を得て商談の場のセッティングまでの準備は大変でしたが、サービスの付加価値が高かったとご評価を頂きました。
今回は相談からご訪問までの期間がかなり短く、その間にS社のご要望確認、訪問先企業調査、訪問の事前説明と交渉、アポイントメント調整やスケジュール作成を短時間でまとめることが一番大変でした。しかし、これまでのビジネスマッチング経験と企業情報の蓄積により、ベトナム企業の調査、選定に早急に対応できて良かったです。
日本スタッフが工夫したこと
今回のプロジェクトは限られた時間と予算でのご依頼ということもあり、最小の労力とコストで、最大の成果を出す工夫を、プロジェクト着工前にウォンズ日越両国メンバーでよく話し合ってプランを立てました
ハノイ市内移動は最低限のコストで移動できる移動手段をナビゲートしたり、通訳は最低限必要な場と時間に抑えたこと、また関係各社ともに初顔合わせになるため打ち合わせと商談がスムーズに流れるよう、事前にウォンズスタッフにてレジュメを組み立てて、関係者へ当日の流れを事前に説明をして理解をいただいておく工夫をいたしました
ベトナムでの企業訪問では、時間帯による道路渋滞で到着が遅れること、訪問先企業とアポイントメントの約束していたはずの決済者や担当者が同席できなくなること、企業側の通訳者のレベルが低く実になる商談にならないといったことが頻繁に起こりやすいです。
ウォンズスタッフがスケジュールを立てる場合は事前に最適な移動ルートの調査、時間帯ごとの道の混雑状況を把握し、タクシー乗車時には最短ルートを検索し運転手に指示を出します。さらに訪問前にベトナム企業側へご依頼主の企業情報の共有や、前日には企業側へ決済権のある責任者のスケジュールと同席を念入りに確認します。また、企業側が通訳を手配する場合には事前に通訳担当者と打ち合わせし、通訳レベルを確認しています。
今回S社はウォンズからの提案でウォンズスタッフによるアテンドサービスをご利用いただき、とてもタイトなスケジュールでしたが訪問当日はどの訪問先も予定通りで遅れることなく訪問先へ到着できました。
顔合わせの際には、ウォンズスタッフから訪問先企業へ効率よくS社のご紹介をし、それからすぐ会談がスタートできたため、双方にとって大変スムーズに打ち合わせを進められました。
また移動中にはタクシーの運転手への指示出し、打ち合わせ内容をレポートにまとめたり、S社の商談の様子を写真撮影し議事録レポートを作成するなど、総合的に安心感があり、とても満足いただけるプロジェクトだったと高いご評価をいただけました。
特にS社 M社長からウォンズスタッフのサポートと同席が終始大変心強かったと労いのお言葉を頂戴しました。
PJリーダーの総評
今回のS社 M社長は、とにかく熱心な方でした。私たちがプロジェクトをお引き受けする前に、自社のサンプル品を私たちの会社まで送ってくださり「我が社の商品をぜひ評価が欲しい」「何としてもベトナムを海外販路開拓の足掛かりをつくりたい」と何度もアプローチがありました。
当初は限られた時間と予算のため十分なサービスが提供できそうにないとお断りを検討していましたが、S社M社長の情熱に打たれて、ご依頼を引き受けさせていただくことにしました。
ウォンズチーム(Bizmatchサービス)には本件のように日本企業からベトナム企業への訪問や商談セッティングのご相談を多く頂きます。しかし一方で、ベトナムに限らず海外での販路拡大や取引を安易に考えている方も多くいらっしゃいます
そのため市場調査やビジネスマッチング企業候補の提案に対して、最初からあまりにも少ない予算(1,500ドルに満たない)でご依頼をされる方には基本的にお断りをしています。理由としては、海外取引ビジネスでは契約にかかる法律や経費処理の会計諸手続きなど様々な管理にかかるコストは、日本よりもより金銭的な負担は大きく、商習慣や企業文化の違いに対しての歩み寄りのための話し合いは精神的なタフさも求められるからため、すぐ簡単に良い結果は導き出せないからです。
また目的や目標が曖昧で市場調査や企業選定の予算を確保せずに来越される方の多くは、銀行や公的機関から無料で紹介された企業と簡単にビジネスがスタートできると勘違いされているケースが多く、ひとつ課題にぶつかるとすぐに断念されるケースが多いです。無料で市場が開拓できる海外市場は甘くないですし、中途半端な取り組みはWINーWINの関係には至らず、双方にとって時間とお金の無駄になると考えています。
ハノイでは日本人駐在員の数はコロナ禍前の半数になり、海外における日本企業の存在感はどんどん小さくなっていることが実情です。日本企業であればベトナム企業は喜んで取引してくれると考えることは大きな間違いです。今やベトナムでは、日本企業は多くの無理な要求をするが、小さな取引にしかならない、と考えるベトナム企業が増えています。
ベトナムの魅力は、日本よりも若くて安い労働力があり、彼らには手先の器用さがあり、海外企業との資本業務提携にも積極的で国際ビジネスや国際市場ニーズへの変化対応力もあります。それらの強みを活かし、ベトナムを製造拠点とした欧米諸国への販路拡大は、より多くの売上と利益を生み出せる可能性に満ち溢れています
ウォンズチーム(Bizmatchサービス)は、ベトナム企業からの商品や部品の調達、日本や中国からベトナム企業への製造工場の移管はもちろん、ベトナムを拠点とした世界市場販路拡大のための有益なビジネスパートナー企業とのマッチングなど、本気で取り組む日本企業皆様と一緒にビジネスをしたいと考えて日々サービスの研鑽に努めてまいります。