ベトナムでの建設資材テーパーライナーの企業調査、発注と輸送

テーパーライナー製品の製造プロセス

プロジェクト概要

茨城県の商社I社が、テーパーライナー製品を低コストかつ高品質で製造できるベトナム工場を探し、技術移転と安定供給体制を構築。市場調査、品質管理、輸送サポートを通じて、日本市場の製造拠点移管を達成。

Bizmatchへのご依頼内容

1954年設立の茨城県本社の製造業向け総合商社の会社(以後I社)は、国内の石油化学プラントへのコンサルティングや大手商社、国内の製造工場向けの資材供給の経験が豊富で、単なる部品卸商社ではない取引先の業務改善サービスをセットとした営業力が取引先顧客から高い支持を得ています。

I社からウォンズチーム(Bizmatchサービス)へのご相談内容は、日本市場で自社製造している既存製品と同等以上の品質のテーパーライナー製品をより低価格で生産できるベトナムの工場を探してもらいたいと要望をいただきました。テーパーライナーは機械等のレベル調整(床との水平バランスを調整)をする時に使用する部材接続中の高さを調整する製品です。また、製品の製造と調達を目的とした契約ではなくターゲット価格の確保や、製品の品質とベトナムにおいて長期で安定的に取引継続ができる主要パートナーとの契約条件交渉と信頼関係も確保する必要があります。

ベトナム企業の工場内背景
ベトナム企業の工場内背景

プロジェクトの目標

本製品は、ベトナム市場では流通しておらず、日本の既製品をもとに設計図の書き起こしから加工方法を新たに確立させることを第一目標としました。またその要求を満たせる技術や機械、部材の仕入れルートを持ち、希望価格内で製造卸ができるベトナム企業を探すことを第二目標としました。

最終目標は、日本で行っている製造をベトナムへ完全に移管させ、技術移転を実現することでした。

プロジェクト進行の流れ

ステップ1: 依頼主(I社)のニーズ整理と専門知識の研究と調査

ベトナム企業を探すために、ウォンズ日本とベトナムの両国スタッフはテーパーライナーについて製品の公差、使用方法や機能、製造に使用する機械や製造方法について詳しく調査する必要があります。それも製品の調査時間も重要なことです。

テーパーライナーについて詳しく調べていく中で、この製品は製造機械などを設置する上で土台の公差レベル調整(床との水平バランスを調整)をする時に使用する部材接続中の高さを調整する重要な部分であることを理解しました。特に、高精度な品質が求められる製品の製造のための機械や設備の設置において必要不可欠です。それは異なる高さの面同士を接続し、水平に調整する役割を果たします。そのおかげで、接合部分の不一致を修正し、高い密閉性とバランスを提供する部品であることを正しく理解を深めました。 

ステップ2: 候補企業の調査・選定

ステップ1でウォンズベトナムのスタッフは製品の理解を正しく深めた上で市場調査を行い、高い生産能力を持ち、顧客の要望に応じた技術・加工機械・部品調達力・実績を保有し、さらに適正価格で高品質を保証するベトナム企業をホーチミン周辺を中心に探しました。10社程度の候補企業をリストアップして、スタッフによる事前の交渉を実施した上で、おすすめ企業3社をリストアップしご提案を差し上げました。

ステップ3: 工場視察アテンド・ベトナム経営層との意見交換の実施

ご依頼主様にベトナム(ホーチミン)へお越しいただき、私たちウォンズベトナム『Bizmatch』スタッフがおすすめする3つの候補企業の現地工場視察を行い、ベトナム企業各社の経営者・工場長・営業責任者との初回面談と交渉のサポートを実施いたしました。

工場内で製造プロセスの視察
工場内で製造プロセスの視察

ステップ4: ベトナム企業との契約交渉と契約書作成・締結サポートの実施

ウォンズベトナム『Bizmatch』はご依頼主のニーズと権利を最大限に保護しつつ、日越企業間の法律・会計に準じた方法で相互の信頼関係を損なわないように配慮をしながら、ご依頼主のニーズに基づいた条件を盛り込んだ契約書の作成と交渉代行を粘り強くサポートいたしました。またサンプル品の製造を基準をクリアするために、細かな仕様や仕上げのズレを修正する中間サポートを行い、ご依頼主の品質基準合格まで導くことができました。ウォンズベトナムの顧問法律専門家のアドバイスのもと、スタッフにてベトナム語と日本語で構成された契約書Draft作成サポート、リーガルチェックサポート、署名・捺印の調印式に至るまで、日本とベトナムの文化融合を目指して、丁寧かつ慎重にサポートし、基準を満たす工場との契約締結を支援できました。

ステップ5: サンプル品制作・大量生産・検品サポートの実施

サンプル品は基準をクリアしても実際に納品される製品が基準を下回るトラブルはベトナムでは頻繁に起こります。そのためウォンズベトナム『Bizmatch』では、実際の大量生産において製品品質を担保するために、日本とベトナムをオンラインビデオで接続し、実際の製造過程のチェックや完成した製本の品質基準の抜き打ちチェックを数回にわけて提案・サポートいたしました。実際の検品中に品質に満たないケースや作業工程を変えてしまう課題に直面し、ベトナム企業側に根気よく基準と工程のルールを説明し、大量生産ながら不良品率0%を実現させることができました。

ステップ6: 製品梱包ならびに輸送サポートの実施

ウォンズベトナムが特に注意していることが、輸送時の梱包状態です。せっかく品質基準をクリアした製品を製造しても、輸送時に傷がついたり、錆びては台無しになります。梱包状態についても、日本企業が求める梱包基準をベトナム企業に説明を行い、協力をしてもらいました。

また日本への輸出に関して、ベトナム企業側が日本への輸出実績がありませんでしたので、ウォンズスタッフにてベトナム国内における輸送会社の手配、荷受けの中間サポート、書類準備サポートなどきめ細やかなサービスを提供し、無事に日本で製品をお届けすることができました。

プロジェクトの成果

プロジェクトの最大の成果は、日本の製品品質以上の製品をベトナムで製造し、円安や輸送費を含めても希望価格内で調達できる製造・仕入ルートを構築できたことです。

また日本では人材不足、物価高、エネルギー高で国内における製造維持が困難になる状況であったので、今後も安定した商品提供ができる体制が構築できたこともご依頼主から大変喜びの声をいただいております。

ベトナムスタッフが大変だったこと

昨今における日本企業に対してベトナム企業の多くが、製品品質を高く求められるが手間がかかる割に小ロットの注文で、欧米や韓国企業と比較すると手間がかかる割には儲からないという印象があります。そのため、日本企業のニーズや条件を満たせるベトナム企業を探すことはたくさん企業と事前交渉をする必要があります。実際今回のプロジェクト案件においても、ベトナムでは認知されていない商品であり、技術や品質面の条件も厳しかったため、多くのベトナム企業からお断りをされて大変苦労をしました。

また、日本とベトナムでは支払い条件を含めた商慣習の違いで大きな隔たりがあります。例えば日本では納品後の支払いがスタンダードで、ベトナムでは納品前に支払いがスタンダードです。こういった商慣習の違いは色々な面で起こりますので、ウォンズベトナム『Bizmatch』では両国間のニーズを汲み取った段階的な契約取引の仕組みで両国企業の妥協点を見出す努力をしています。

他にも日本ではサンプル商品は製造側の負担で準備することが多いですが、ベトナムではサンプル商品は依頼主が負担することが多いため、こういった少しの隔たりが信頼関係構築に溝を作ることになります。そのようなベトナムの商慣習についてもご依頼主へ丁寧に説明を行い、両社の歩み寄りを実現サポートしています。

ベトナムスタッフが工夫したこと

ご依頼商品はベトナムで認知がない商品だったので、その商品の理解を深めることが非常に苦労しました。ご依頼主のニーズを正しく認識できないとご提案するベトナム企業とミスマッチが起こってしまうため、ウォンズでは商品の用途だけではなく、材質、製造工程、仕上げなど基準を明確にしてご依頼主から提供される図面の他に、ベトナム企業向けに必要な情報を仕様書にまとめて調査開始するよう工夫しています。

またただ翻訳するだけでは、同じ用語でも、日本とベトナムでは意味・範囲・定義が異なることも少ないため、ベトナム企業側に色々な製造工程や角度の写真撮影に協力してもらい、事前の認識齟齬をなくす工夫をしています。

日本スタッフが大変だったこと

ベトナム企業へ製品の製造を依頼する際、必ず図面を送り見積書を算出してもらいます。その後、サンプルを製造してもらう流れになります。図面には製品の寸法、交差、加工など全ての情報が記載されており、図面を元にベトナム企業は製造をします。

しかし、今回のサンプルをI社がチェックすると、加工の違いでI社が希望されている製品と違ったサンプルとなりました。この時は、日本スタッフもベトナムスタッフも図面や加工についての知識がなくI社から細かな加工方法の説明を受け理解しながら進めていきました。

さらに今回は、ベトナム企業側も図面や写真のデータだけでは気づくことができませんでした。万が一、写真データのチェックのみで製造がスタートしてしまった場合は、全てが不良品となってしまいます。

I社が要望されている製品を作るために、I社が注文先のベトナム企業へ訪問した際に、加工についてI社とベトナム企業で話し合う時間を取りました。私たちも機械や加工について理解ができていたため、ベトナム企業へI社の要望を通訳し、お互いの認識を合わせることをしました。

製造する機械や加工の方法で完成品が変わるため、私たちも機械や加工について理解を深め、ベトナム企業へ加工についての明確な説明をすることが必要となります。

その後、2回目に出来上がったサンプルはI社の納得いただける製品となり大量の数の注文が決定しました。

オンライン会議で不確実性の責任分岐点や条件交渉のサポート
オンライン会議で不確実性の責任分岐点や条件交渉のサポート

日本スタッフが工夫したこと

今回のテーパーライナーはI社が大量の数を注文されました。そのため、安全に製品に傷がつかない輸送をすることが重要です。さらにI社は倉庫で保管します。倉庫内で直ぐに製品が分かるように段ボールに製品ラベルを貼る必要がありました。また、保管した製品に注文が入り運ぶ役割を任されていたのは女性スタッフでした。そのため、あまりにも重すぎる量のテーパーライナーを段ボール箱に入れてしまうと運ぶことが困難になります。

そのため、I社、ベトナム製造企業、輸送会社の全ての意見を確認しつつ、関税を無事通過できる工夫が必要でした。ラベル一つを取っても、必要項目が抜けていると関税で引っ掛かり製品を日本へ届けることができなくなってしまいます。

まず、テーパーライナーの梱包についてはI社の女性スタッフが運べる重さを確認し、小さい段ボールに詰めることにしました。さらにI社の倉庫内で製品が分かるラベルをベトナム企業と協力して作成し、輸送会社にもチェックをしてもらいました。関税ではラベルチェックがはいるため、必要な項目を英語と日本語で表示をし、日本のI社に分かるようにしました。このラベルを全ての段ボールに貼ることができました。

コンテナに入れるための梱包はベトナム製造企業と話しあい、安全性重視とコストを節約を考え、製品を4つの梱包に分け、下2つはパレット木箱、上2つはストレッチフィルムにすることしました。安全性とコスト削減を実現できます。話し合いの中で、コンテナ内で荷物がずれないよう、コンテナ内にある紐で固定する案も出てきて、念には念を入れた輸送の準備が進められました。

プロジェクトリーダーの総合評価

Bizmatchへビジネスパートナーのマッチングのご相談をいただく日本企業の多くは、ベトナムであれば安く委託製造できて、簡単に取引ができると勘違いしている経営者も多いです。また日本企業と取引できることはベトナム企業にとっても喜ばしいことで、条件交渉も色々と融通が聞くと安易に考えてしまう方も多いですが、今やベトナム企業にとっての日本企業は国際的な取引において、欧米や韓国企業と比較すると、無理に取引する魅力やメリットがないという評判が多くなっています。
今回のご依頼主も当初、ベトナムとの商慣習の違いやベトナム企業側かの強気の交渉に戸惑っていましたが、私たちウォンズスタッフの支援にご信頼をおいていただき、粘り強く、最後まで諦めずに取り組んでいただけたことが、プロジェクト成功の一番の要因だと感じています。
また、円安で日本国内への工場移転を進めている企業も多いですが、ご依頼主は日本国内における中小製造企業の高齢化による廃業、人材不足は根本的に止められず、技能実習生頼りの製造維持は遠くない未来に限界が来ることの先見の明をお持ちでいらっしゃいました。
そのため時間と予算の許す限りで、今後も日本国内で付加価値の高くなるであろう商品を対象にベトナムへの技術と製造移転を進めていきたく、引き続きウォンズスタッフを頼りにしていると継続したお取引とご評価いただいています。

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