＊＊グエン・フー・チョン現書記長（77歳）が再任＊＊

　ベトナム共産党は、2021年1月25日から2月1日までの間、ハノイ市内の国家会議場で第13回共産党全国代表者大会を開催し、最高指導者で党序列１位の書記長をはじめとする第13期党指導部の人事決定を行った。併せて、第12期（2016～2020年）決議の実施評価と向こう５年間の党、国家の運営方針を討議・決定した。全国の党員510万人を代表して、過去最多の1,587名が出席した。

１）党首脳人事
　党の人事は、まず中央執行委員200名（中央執行委員180名、補欠20名）が選出され、その新たな中央執行委員によって政治局員をはじめ、書記長、書記局員、中央検査委員が選出された。
　党の「実質的な最高権力機関」である政治局員には18人が選出された。そのうち、再任は8名、新任は10名だった（添付資料ご参照）。平均年齢は62.5歳で、前期よりも平均年齢が上がった。女性は前期の3人から1人に減った。出身地域別にみると、前期よりも中部、特にゲアン省出身者（3名）が多い結果となった。
　第13期の書記長には、グエン・フー・チョン現書記長が再任された。チョン書記長は1944年4月14日生まれの77歳。ハノイ市党書記、国会議長などを歴任し、2011年1月に第11期の党書記長に就任。2016年1月に第12期の党書記長に再任されており、今回で３期目となる。一時、高齢及び健康不安もあり引退説もあったが、最終的に13期書記長に引き続き選任された。党の規約は、書記長の任期を「連続２期まで」と定めており、書記長を３期連続で務めるのは異例で、1976年の南北統一以来初めて。
　日本との関係では、チョン書記長は2015年9月に訪日して安倍晋三首相（当時）と会談し、2017年1月には訪越した安倍首相（当時）と会談。2018年11月には国家主席としてAPEC首脳会議に出席し、安倍首相（当時）やAPEC加盟各国の首脳らとの会談を行った。また、2020年10月に訪越した菅義偉首相とも会談を行っている。

　書記長は、ベトナムの最高指導部と呼ばれる18名の政治局員のなかで最重要（序列第一位）で、書記長を含め「四柱」と呼ばれるポストの一つ。他の３柱となる国家主席にはグエン・スアン・フック首相（66）、首相にはベトナム日本友好議員連盟会長でもあるファム・ミン・チン党中央組織委員長（62）、国会議長には副首相の経験があるブオン・ディン・フエハノイ市党書記（63）が候補に挙がっている。国家主席、首相、国会議長をはじめとする他の要職は、2021年5月末から開催が予定されている次期国会で正式決定される。ベトナムは、2021年5月までは政府内閣人事、国会議員の選挙、地方政府党書記、更には人民委員会委員長の人事等があり、謂わば政治・人事異動のシーズンとなる。
尚、13期は４柱（書記長、国家主席、首相、国会議長）の首脳人事に南部出身者が含まれておらず、従来からの地域バランスが崩れた事が筆者としても些か気になるところである。

２）2025年まで５年間の国家発展計画
　今回の共産党大会で、チョン書記長は2025年までの発展目標・実行施策として次の様に言及。『工業化を更に進め中所得国（下位）を脱する。』その為には第12期（2016～2020年）の間実行してきた政策を第13期も一層確実に実行する。具体的には、成長を継続する為のフレーム（法整備、行政の効率化、ビジネス環境の改善整備、高度人材育成、経済・社会インフラの整備）、更に経済発展と共に重要な環境への配慮、国土に対する安全保持を充実・強化する事を基本路線としている。

＜ベトナムの政治体制　ご参考＞

現体制（４柱）（12期）

書記長 Mr.Nguyen Phu Trong 北部：Hanoi
国家主席 Mr.Nguyen Phu Trong（兼任） 北部：Hanoi	首相 Mr.Nguyen Xuan Phuc 南中部：Quang Nam
国会議長 Ms.Nguyen Thi Kim Ngan 南部：Ben Tre

 

新体制（４柱）（13期）

書記長 Mr.Nguyen Phu Trong 北部：Hanoi
国家主席 Mr.Nguyen Xuan Phuc 南中部：Quang Nam	首相 Mr.Pham Minh Chinh 北中部：Thanh Hoa
国会議長 Mr.Vuong Dinh Hue 北中部：Nghe An