ベトナムに於ける新型コロナ感染症(COVID-19)の状況

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新型コロナ感染症(COVID-19)

1)ベトナムに於ける新型コロナウイルス呼吸器感染症の状況

ベトナムに於ける呼吸器感染症(COVID-19)の累計感染者数は、2020年12月20日現在1,413名で、その内、既に回復している人は1,269名、又、不幸にして亡くなられた人は35名となっている。
2020年1月23日、感染発生が確認されて以来、2020年7月までは死者数ゼロが続いていたが、2020年8月に初めて死者を出した。
海外帰国者からの感染、謂わば第2波の感染によるもので、8月の1ヶ月間で感染者数は547名、死者は32名に達してしまった。
とは言え、世界全体の感染状況と比較すると、ベトナムの感染者数・死亡者数ともに極めて少なく、制圧に成功している事が窺える。

 人口(百万人)感染者数回復者数死亡者数
全世界7,83276,760,89343,300,0001,692,151
日本112199,168167,5132,917
ベトナム961,4131,26935
 内Can Tho市1.310100

※データは米国ジョーンズ・ポプキンス大学の統計による。

2)中国に於いて今回発生した新型コロナヴイールス呼吸器感染症の発生経緯

2019年12月31日、中国武漢市で新型ウイルスに依る呼吸器系疾患の感染者27名が発症し、中国は世界保健機関(WHO)にも感染発生の事実を報告していた。
尚、WHOは2020年2月1日、この疾患を「COVID-19」と命名。
更に、2020年1月10日、同じ武漢市で41名が集団発症し、その内感染者1名と中国人医師が死亡した。その時点で人を介する感染症として認定され、感染予防対策(武漢市の完全封鎖)が執られた。
その後は世界的に人の往来が活発になっている事も禍いし、イタリアを初めとする欧州、北米(米国、カナダ)、東南アジア諸国、韓国、日本へと瞬く間に世界に感染拡大していった。

3)ベトナムに於ける新型コロナウイルス呼吸器感染症発生経緯

ベトナム於いても、2020年1月中旬になり、新型ウイルスに依る呼吸器系疾患が拡大し始めた。
それを警戒したベトナム政府は、感染予防策(飛沫防止の為のマスク着用、手洗・うがいの励行、ソーシャルディスタンスの確保)を直ちに打ち出した。それに加え、国外からの人の往来を制限する為、2020年1月31日、中国との国境を封鎖し、翌日2月1日には、中越間定期航空便の運行を停止した。
その後も感染予防策(不要不急の外出自粛、感染者の隔離、感染者が収容されている地域の完全封鎖、外国人の入国制限、海外との航空便の停止等々)を矢継ぎ早に予防策を打ち出していった。
感染状況は、2020年1月から7月の期間、感染者を効果的に抑え込んだ第一フェーズと、2020年8月、外国からの入国者から感染した多くの感染者、及び死亡者が出た第二フェーズとに別れている。
感染予防策は、ややもすると経済停滞を招く事になるが、経済よりも人民の生命・健康を優先するとの政府の呼び掛けに国民も応じ、それら政府指示を受け入れ、感染予防策が実施されてきた。その精神は現在でも継続されている。
現状、一日当たり平均2件程の感染者が報告されているが、国内感染は略制圧されたと思われ、この事実は世界からも高い評価を受けている。
一方、世界各地での感染拡大は止まる事なく推移しており、今後共、外国人の入国規制など水際対策は継続されると思われる。
また、2020年12月14日、英国で新型コロナウイルスの変異種に依る感染が見つかり、これに対する水際での警戒がベトナムに於いても必要となっている。
日本に於いても、2020年12月27日、入国規制を実施している。

**SARS(重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス呼吸器感染症について**
実は、ベトナムは2003年2月に、中国広東市を発祥地とする同じ様な感染症:重症急性呼吸器症候群(SARS)に見舞われた。当時、中国からの出張者がハノイのフレンチ病院に入院し、発症した。
WHOから派遣されていたイタリア人医師が献身的に治療した結果、出張者は幸い回復した。治療中、イタリア人医師は病室の換気に十分留意する様にとの指示をしていたとのこと。残念ながら、このイタリア人医師はSARSに罹患して死亡し、本国に送られた。
筆者もその当時、ハノイに在住していたが、得体の知れない感染症で、それも飛沫感染と聞いて不安を覚えた事を記憶している。
欧米の駐在員の家族はタイ、シンガポールに避難する動きもあった。本感染症の対応策につき、ベトナム政府からの要請に基づき日本の医療センターからも専門家が派遣され、SARSの拡大予防措置を施した。
この経験が今回、ベトナム政府のCOVID-19の感染拡大防止に遺憾なく発揮された。

SARS感染状況(幸い日本の感染症例は無し)

 感染者数死亡者数
全世界8,098774
中国5,327349
ベトナム635

4)ベトナムに於ける新型コロナウイルス呼吸器感染症(COVID-19)の今後

本コロナ禍は、WHOの予測でも世界的に感染収束・感染拡大を繰り返しながら2021年末頃迄継続すると言われている。
ベトナムに於いては、感染拡大をある程度抑えた結果として、2020年後半において消費経済、製造業にも回復の兆しが出てきている。
今後も可能な限り経済発展を阻害しない事を前提に、感染防止策(例えば人的接触の回避)を継続しながらWith COVID-19で国の運営を図って行くと思われる。
その間、有効なワクチンが開発されれば、効果が出たその暁にはPost COVID-19時代として本格的に経済回復・経済発展政策が実行される。
注)既に主要ワクチン製造企業4社(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ等)が開発、治験を終了し、英国・米国等で接種を開始している。ベトナムに於いても、ベトナム企業がワクチンの開発を行っており、2020年12月17日より第一次治験(対象者60名)が行われている。

5)COVID-19の経済面での影響

2020年前半は感染防止策の徹底により経済面で否定的影響が出ていたが、2020年後半から回復の兆しが出てきている。
一方、人の往来を抑えた事もあり、特に観光業、航空会社に大きな影響が出た。

①経済成長の減速
成長は減速しているが、ベトナムは2020年、世界中で唯一プラス成長になっている。

 2019年2020年2021年
全世界2.9%△4.0%5.8%
ベトナム7.0%2.8%6.5%
タイ2.4%△8.0%3.6%
インドネシア5.0%△1.0%5.3%
マレーシア4.3%△5.0%6.5%

※World Bankの予測値

②2020年自動車販売台数の推移
コロナ感染が抑制された後、8月から自動車需要が大幅に回復している。

 2019年
通年合計
2020年
Q1(1月~3月)
2020年
Q2(4月~6月)
2020年
Q3(7月~9月)
2020年
Q4(10月~11月)
販売台数(台)322,32240,46254,84480,185117,074

※販売台数はVAMA(ベトナム自動車協会)の統計データベース。

③ベトナムへの日本からの投資状況
2020年の投資件数、投資額の減少は、日本の景気の落ち込みも影響している。しかしながら、サプライチェーンの見直しが行われる可能性があり、今後、部品製造業の中国等からベトナムへのシフトが見込まれる。

 2019年1月〜6月
(上半期)
2020年1月〜6月
(上半期)
増減
件数(件)701586△115
投資額(百万米ドル)1,9501,464△486
 2019年7月〜10月
(下半期)
2020年7月〜10月
(下半期)
増減
件数(件)494227△267
投資額(百万米ドル)1,236318△918

※データは外国投資庁発表の数字に基づく。
※件数は新規投資、追加投資、証券投資の合算ベース。

④観光産業
今回のコロナ禍に於いて最も打撃を受けた産業の一つ。2019年国内外の旅行者の総数は130百万人、その内、海外からの旅行者(主に中国から)は18百万人(17%)になっていた。
2020年はコロナ禍で、海外からの旅行者は略ゼロとなっている。しかし、潜在的国内旅行者が100百万人いる訳で、感染が落ち着いた2020年4月より、ベトナム政府も感染予防策を取りながら国内旅行を促進する事となった。
5月からは主要都市間、ハノイ─ホーチミン間のフライト32便を52便に増便し、座席利用率も70~80%となっていた。
更に、観光地のホテル運営が再開され、宿泊費につき割引を適用する事例も出ている。本キャンペーンを実施しているが、幸いその後に感染者が増える兆候は出ていない。

⑤航空会社
航空業界も今回のコロナ禍に於いて最も打撃を受けた企業の一つ。
Vietnam Air Linesは、日本路線(往復)を2021年2月26日まで運休、VietJetは、日本向け便(ホーチミン─成田便)を2020年9月29日より週一便で再開。
2020年12月17日、越国会は、ベトナムのナショナルフラグキャリアであるVietnam Air Linesに対する救済措置を採択した。
救済措置の内容は、ベトナム中央銀行が商業銀行を通じて優遇金利(年4%)で8 兆VND(約182億円)を融資する。更に、株主割当増資:増資額8兆VND(約364億円)が認められ、政府株主(国家資本投資経営総公社:SCCI)持分86.2%が割当てられた。
ベトナムの民間航空会社2社(Vietjet Air、Bamboo Airlines)も厳しい経営状態にあるが、今回、救済措置は見送られた。何れの航空会社も海外便は大幅減便をしており、厳しい経営状態が今後共続くと思われるので、政府の支援策が何時実施されるのかが注目される。

⑥電子機器製造用部品及び生活用品に関わるサプライチェーンの見直し
従来、電子機器製造用部品及び生活用品の製造拠点が中国に集中してきたが、今回のコロナ禍もあり、サプライチェーンの見直しを図る最終製品製造企業(例えばApple社等)が、部品の調達先を今回、感染防止に極めて上手く対応したベトナムも調達先に加える動きが出てきている。ベトナムとしては、この動きを確実に拘えて誘致する事が求められる。

最後に、今回のコロナ禍が完全終息し、世界中の人々が国内・海外を自由に行き来し、直接コミュニケーションが出来る時が早く来る事を切に祈りたい。
(アドバイザー 市川 拝)

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