運気があがる?ハノイのパワースポットを訪ねてみよう!/ハノイ
- 2024/08/14
- ベトナム観光旅行記
世界各国の観光地では、観光スポットとして各国の宗教的な建造物を訪ねることが多いでしょう。ヨーロッパの都市を訪れれば、その多くがキリスト教に関連する建造物ですし、中国や韓国であれば、儒教や仏教に関する建造物、中近東や中央アジアであれば、その多くはイスラム教に関係する建築となります。
さて、ベトナムではどうでしょう。ベトナムはインドと中国いずれの文化的影響が強いかを比較すると、隣国のタイ・ラオス・カンボジアがインドからの影響が強いとすれば、ベトナムは中国からの影響を強く受けています。インドシナ半島のチュオンソン山脈を隔てて、東側にベトナムが、西側にラオス、カンボジアが位置しているからでしょうか。
中国の宗教といえば、儒教、仏教、道教の三教がたがいに影響しあって、中国人の精神世界が形成されているように思われます。ベトナムでも同様で、儒教、仏教、そしてベトナム独自の祖先崇拝や聖母信仰、陰陽五行説や風水といった民間信仰とによって形作られています。
ハノイを訪れた際には必ずといっていいほど訪れる宗教建築、建造物の数々を、どの建物にだれが祀られているかを明らかにしながら、運気のあがるパワースポットとしてとらえて、ご利益を期待して参拝してはどうでしょう。今回はハノイにある5つの建造物についてご紹介します。
名称:Đền Ngọc Sơn(玉山祠)
所在地:P. Đinh Tiên Hoàng, Hàng Trống, Hoàn Kiếm, Hà Nội
祭祀対象:チャン・フン・ダオ、文昌帝君、関公、呂洞賓
ご利益:護国繁栄、学業成就、商売繁盛、無病息災
このビズマッチでもすでに取り上げたことのある玉山祠。ハノイ市内中心部にある湖、ホアンキエム湖に浮かぶ島にしつらえられた祠です。ベトナム語ではĐềnとよばれる建物で、拝殿の意味です。日本の古い橋のように湾曲した、40mほどの赤く塗られた橋を渡ると島に渡れます。島には両側がコンクリートに固められた拝殿が湖の中心に向かってしつらえてあります。
中堂と呼ばれる拝殿の前で、線香を香炉にあげ、祈りを捧げるベトナム人の姿があります。中堂の中に入ると、まず俳壇があり、3つの像がたてに並んでいます。一番奥が文昌帝君、その次が呂洞賓(りょどうひん)、そして一番手前が関帝または関公、すなわち三国志の武将、関羽です。
関帝は元々三国時代の武将ですが、その後中国では財神として商売の神様に祭り上げられ、中国の民間信仰のなかでは一番人気の神様です。日本にも横浜や長崎など、中国人が多く住んだ場所には関帝廟があります。ベトナムでは武芸の神として知られています。
その次の呂洞賓は日本ではあまり馴染みがありませんが、中国の八仙のひとりで、道士であり、仙人でもあります。元代には雑劇などでとりあげられた人気のある仙人で、長年信仰の対象となってきました。科挙に挑むも二度落第、その後道士となって、民衆の苦難を救う仙人となったと伝えられています。ベトナムでは医薬の神とされています。
一番奥に控えているのが文昌帝君です。文昌とは中国で奎星とよばれた北斗七星のうち第4星をいい、奎星が文章を司る神とされたことから、文昌帝君もまた科挙合格を祈願する受験者や知識人から崇拝の対象となっています。中国では関帝とならぶ、人気のある神様です。ベトナムでも科挙受験者、知識人の信仰の対象となりました。
さらに中堂の奥にすすむと、13世紀、3度にわたる陳朝・大越国のモンゴルの侵攻に対峙し勝利に導いたチャン・フン・ダオ将軍が祀られています。元朝の侵攻から国を守ってくれた将軍とあって、ベトナムではベトナム民主共和国建国の父ホー・チ・ミンにつぐ人気の英雄です。
名称:Văn Miếu(文廟)・Quốc Tử Giám(国子監)
所在地:58 P. Quốc Tử Giám, Văn Miếu, Đống Đa, Hà Nội
祭祀対象:孔子
ご利益:学業成就、入試合格
通常「文廟」とだけ、ガイドブックには記されていますが、ただしくは「文廟・国子監」といいます。文廟は、中国でいう孔子廟で、ベトナムの文廟でも孔子とその弟子たちが祀られています。孔子を祀る大聖殿の手前には大きな四角の蓮池があり、その両側には進士題名碑といって、歴代の科挙合格者(進士)の名前が刻まれた碑が並んでいます。科挙とはベトナム科挙王朝時代の官吏登用試験のことで、いわば国家公務員試験のようなものです。
かつては科挙合格を祈願して、孔子様にお願いをしましたが、現代では高校や大学受験をする学生たちが、この文廟に祈願に訪れます。東京でいえば「学問の神様」菅原道真を祀った湯島天満宮や、福岡なら太宰府天満宮にあたる場所です。
多くのツアーでは大聖殿を見学しておしまいですが、時間があるなら、大聖殿の裏にまわってさらに国子監をお参りしましょう。ベトナム儒学の祖と評価され、13〜14世紀の陳朝時代に活躍した儒学者チュー・ヴァン・アンや、ハノイ遷都をなしとげ、文廟・国子監を創立した李朝三代の王たちの像も拝むことができます。国子監とは科挙受験者に儒学を教授した、現在でいえば大学のようなものです。
現在、国子監には科挙制度の時代に用いられた書物や筆、硯、衣装などが展示されています。「賢材是国家之元気」(賢い人材は国家の元気のもと)という15世紀、黎朝の王レー・タイン・トンに信頼された儒者チャン・ニャン・チュンの言葉も掲げられています。
名称:Chùa Trần Quốc(鎮国寺)
所在地:46 Đ. Thanh Niên, Yên Phụ, Tây Hồ, Hà Nội
祭祀対象:阿弥陀仏、釈迦牟尼、観音仏(関平、関羽、周倉、スダッタなど)
ご利益:家内安全、健康、国家安寧
ハノイには小さい湖と大きい湖があります。小さい湖はホアンキエム湖といい、市の中心部にある。大きい湖は市の北側にある西湖(ホータイ)です。日本人の感覚からするとホアンキエム湖は池にしか見えませんが、西湖は立派な湖です。
その西湖のほとりにあるのが、6世紀にリー・ナム・デーによって建立されたとされる鎮国寺があります。ここは仏教の寺として知られ、長らくベトナム仏教の中心地となった寺です。
祀られているのは、阿弥陀仏、釈迦牟尼(お釈迦さま)、そして観音菩薩です。阿弥陀仏とは、極楽浄土に存在する仏でおもに浄土教で信仰されている仏様です。ベトナムでも南無阿弥陀仏との念仏は「ナムアジダファット」と唱えます。釈迦牟尼はお釈迦さまのこと、観音菩薩は、大乗仏教で代表的な仏で、仏教の慈悲の精神を人格化したものとされています。日本と共通する仏様が祀られているので、親近感がわきます。
面白いのは、ベトナムではこうした仏教の寺で中国の民間信仰でも人気の「三国志」の武将たちが祀られていることです。ベトナム的な神仏習合をみることができます。
名称:Phủ Tây Hồ(西湖府)
所在地:52 P. Đặng Thai Mai, Quảng An, Tây Hồ, Hà Nội
祭祀対象:柳杏聖母
ご利益:現世利益、健康、財産、幸福、国家守護
鎮国寺とおなじく、西湖沿岸にある西湖府。中国の道教にベトナムにおけるアニミズムが習合したベトナム独特の信仰である「三府聖母道信仰(マウタムフー)」の重要な宗教施設です。海外からの観光客が訪れることの少ない場所ではありますが、ベトナム人の宗教観や世界観を知る上でも訪れてみたい場所です。聖母信仰にかかわる祭日ともなると大勢のベトナム人でにぎわいます。祭礼の日はベトナム人でごった返しますが、ベトナムの文化を知る上ではぜひ祭礼の日に訪れてください。生きた信仰に触れることができます。
この西湖府に祀られているのは、柳杏聖母と呼ばれる女神です。中国の道教の最上神である玉皇上帝の2番目の娘とされます。上天聖母、地仙聖母の化身とされ、元は実在の人物で、神格化されて、聖母として祀られるようになったと伝えられています。
聖母道は他の宗教のように死後の世界を扱うのではなく、健康や財産などの現世利益のために祈りを捧げます。今も多くの人たちの信仰を集めているのはそのためです。
名称:Đình Ứng Thiên(応天亭)
所在地:7 Đ. Láng, Láng Hạ, Đống Đa, Hà Nội
祭祀対象:后土(こうど)
ご利益:不動産取引、商売繁盛、雨乞い
高層マンションなどの開発が進むハノイ市西部のランハ地区。そんな中に取り残されたように応天亭はある。ここに祀られているのは后土(こうど)といって、土地の神、それも女神とされている。中国の民間信仰がベトナムにも伝わって土地神としてあがめられている。
「大越史略」という史書には、李朝時代の1171年、リー・アイン・トン王の時代、干ばつに苦しみ、雨乞いの祭壇を設えたところ、王の夢の中で神様が、「木と春を司る『句芒神君』を祀った拝殿に祈れば雨が降るだろう」とのお告げがあり、王はめざめると早速官吏を使わして祭礼を行った。すると確かに大雨が降ったので、王はただちに『応天后土夫人』と拝殿との名を贈った、との言い伝えがある。
20世紀にはいっても、応天亭が土地の神様であることから、不動産業者が不動産取引の成功を祈って、こぞって参拝するのだという。
不動産投資や土地・家屋の購入の際には、この応天亭に訪れて、参拝してはどうだろう。ご利益があるかもしれない。
文=新妻東一