サムスンベトナム、今後は研究開発分野に注力
- 2021/03/19

サムスンベトナムのチェ・ジュホ社長が、コロナ禍でもおよそ600億米ドルの輸出を維持できた理由や、今後のベトナムにおける事業展開について、インタビューに答えた。 ジュホ社長はベトナムについて、世界で最も重要な生産拠点であるだけでなく、研究開発(R&D)分野においても戦略的に重要な国だと述べている。
輸出は前年より落ち込んだが、コロナ禍としては好調
サムスンベトナムは2020年の輸出目標額として、前年の585億米ドルを上回る、600億米ドルを掲げていた。ジュホ社長は当初、達成が難しいと思っていなかったものの、新型コロナで見通しが完全に変わってしまったと語る。
2020年上半期は世界的な経済の停滞により輸出も減少したが、下半期はその反動で電子製品の消費需要が戻り、回復の兆しが見られた。結果、コロナ禍としては好調な570億米ドルに達し、従業員の解雇や手当なしの休職もまったくなかった。
2021年は、ベトナム政府が定める感染予防策を引き続き遵守しながら、生産を安定化させ、輸出目標の達成を目指すとジュホ社長は答える。
事業拡大から生産性・品質向上、研究開発へ
ジュホ社長によると、多国籍企業の多くがベトナムに生産拠点を移転している背景には、優秀な人材が豊富なこと、安定した社会情勢、有利な投資環境、多様なインフラ設備、コロナの封じ込めに成功していることが挙げられる。
サムスンベトナムは2008年以降、サムスン電子ベトナム(SEV)の全国6工場に対し、総額175億米ドルを100%自己資金で出資し、毎年数百万ドルを増資し続けてきた。
これまで急速に事業を拡大してきたため、直近では新たに大規模な投資を行う計画はなく、工場の安定稼働や生産性・品質向上に注力するとジュホ社長はビジョンを示す。今後投資を拡大するのであれば、R&Dセンターを設立してベトナム企業との連携を強化し、公共インフラ事業に参画するとのことだ。
R&Dセンターで国際的な地位向上を狙う
ハノイで建設中のR&Dセンターは今年12月末に完成予定で、サムスングループにとって外国初のR&Dセンターとなる。規模は東南アジア最大級だ。
同センターでは数百人の技術者を新たに雇い、これまでの電話・パソコンなどの商品に加え、ハイテク分野の研究も強化する。第4次産業革命による技術革新に対応できる優れた環境を創出し、ベトナムおよびサムスンの国際的な地位の向上を図るとジュホ社長は語った。
また、建設にあたっては18万人を雇用し1兆6,000億ドン(約80億円)が出資されているため、ハノイの経済への直接的効果も見込まれる。
サムスンベトナムは13万人もの従業員を抱えているにもかかわらず、マスク・ソーシャルディスタンスの徹底やオンライン健康調査などにより感染予防に成功した。
コロナによる社会的隔離終了後、社員と食べた食事がとても心温まるもので、人生で数本の指に入るほどおいしく幸せだったと語るジュホ社長。ベトナムは今後も第3波を乗り越え、感染を抑え込んだ国として世界のモデルケースとなると述べた。
各企業が生産拠点を中国からベトナムへ移転する動きが強まる中、サムスンによる品質向上や技術開発の動きに他企業が続けば、業界全体の水準が上がっていくことが期待される。(ベトナムニュース邦訳ライター 鶴田 志紀)
さらに詳細な情報を知りたい場合は
下記よりお問い合わせください。