脱バイク社会を目指すベトナムに貢献するAIオンデマンドシェアバスサービス

WILLER VIETNAM/高田功太インタビュー

WILLER VIETNAM/高田功太

 私の事務所の最寄り駅が大崎駅だった関係で成田空港に向かうバスとして利用していたのがWILLER社の「成田シャトル」。現在はコロナのために運休中のようだが、大崎駅西口から成田空港まで片道1300円、24時間前までのWeb予約による早得プランなら1000円という安さだったので、事務所から成田空港までの往復によく利用させていただいた。だからWILLER社の社名はよく知っていた。

 ちなみに羽田空港から成田空港へのリムジンバス利用なら3,200円。WILLERの成田シャトルならリムジンバスの3分の1の料金だ。その安さのほどが分かろうというものだ。消費者である我々にとっては嬉しいサービスだ。

 同社を高速バスを運行している企業だとぐらいにしか認識していなかった。WILLER社がベトナムに進出していたことも知ってはいたが、ベトナムで何をしようとしているのかもわかっていなかった。

 今年8月、JETROは「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」としてベトナムにおいてWILLER社の提案する「ベトナム社会主義共和国ハノイ市におけるルート型AIオンデマンドシェアバス実証事業」を採択したと報じられた。

 高速バスのサービスを展開するWILLER社がAIを用いたシェアバスサービスの実証実験を、それもベトナムで展開する?これは面白い!

 早速WILLER VIETNAM社の責任者である高田功太氏に実証実験と今後展開する商業サービスについてお話を伺った。

WILLER VIETNAM社のシェアバスサービス

 高田は1985年名古屋生まれの36歳。父親が転勤族であったので大学卒業までは主に関東圏に暮らしたというが、新卒で就職後は名古屋で働いていた。彼が新卒で選んだのは火力発電所などのインフラに関わる仕事だった。

 「大学時代、インドネシアで英語の先生として派遣されたことがあるんです。今から10年ほど前のことで、当時インドネシアは電力不足で1日の間に10回も20回も停電する。そうすると水も出ない、熱帯なのにエアコンもないといった過酷な状況でした。自ずと発展途上国での社会インフラを整備する仕事への興味へとつながりました」という高田。

 高田はモザンビークやコートジボアールといったアフリカ諸国や中近東を担当し、南アフリカのヨハネスブルクにも一年間赴任した経験もした。主に火力発電所の建設に関わる仕事だった。

 2015年12月、パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で気候変動抑制に関する多国間の国際協定、いわゆる「パリ協定」が採択された。CO2やメタンなど温室効果ガスの排出増による世界的な平均気温上昇を産業革命前から1.5度未満に抑制するため、温室効果ガスの排出削減、吸収といった「緩和」と、その影響への「適応」を目指す国際的な取り決めだ。温室効果ガスの排出量世界第5位の日本はその削減を強く求められる立場にある。

 自ら念願かなって社会インフラを作る仕事についたが、関わっているのは火力発電所だ。CO2の排出抑制が世界的な課題となり、火力から太陽光や風力といった再生可能なエネルギーへの転換が求められている今、自分の関わっている火力発電所のさらなる建設はその時代の流れに逆行するものではないのか、高田はそう自問自答した。それがWILLER社への転職への契機となった。

 「就職面接を受けたとき、WILLERって随分くだけた会社だなあと思いました。インフラ設備関連で重厚長大産業の歴史の長い会社からの転職だったので。WILLER就職の最終面接はWILLER GROUPの代表、村瀨から受けました。シンガポールからオンラインでの面接でした。面接といっても村瀬自身が新しいこと、今までにないものを創造する、こうしたい、ああしたいと夢と希望を語って時間終了みたいな面接でした。社長といってもサラリーマンがやっている会社では社長が夢を語ったりしませんよね。WILLERには夢を語る社長がいました」

 そして高田がWILLER社へ入社したのが2020年2月。村瀨社長の下で働いたのち、ベトナム赴任の辞令が出たのが2021年4月。でも実際にベトナムへの入国できたのは7月。ベトナムへの入国ビザの取得が遅れたためだ。まさにコロナに翻弄されたベトナム赴任だった。高田のベトナムでの使命はベトナムが脱バイク社会を築くための公共交通サービスの構築と提供だ。

 ハノイ市人民委員会は2030年から市内中心部へのバイク乗入れを禁止する計画を2017年発表した。個人車両の急増を抑制しつつ、公共交通を促進し、バイクなどの個人車両の増加による交通渋滞と環境汚染の悪化、そして交通事故の軽減を目指している。専用バス路線を走るバス・ラピッド・トランジット(BRT)の運行開始、予定から6年遅れて都市鉄道2A号線もようやく運行を開始し、公共交通の整備も進められている。

 ただ長年バイクでの自宅から職場・学校へのドア・ツー・ドアでの輸送に慣れてしまったハノイの人々にとって、それを公共交通で代替するのは容易ではない。例え200mでもバイクに乗る人たちだ。自宅から最寄り駅まで徒歩で移動するように行動を変えるとはとても思えない。
 「そこでWILLERでは日本の京都(京丹後市)と東京(渋谷区)、名古屋(千種区)ですでに展開しているAIオンデマンド交通をこのハノイで実証することにしたのです」と高田は胸を張る。

 同社のAIオンデマンド交通「mobi」は自宅から2km程度の日常生活圏内を走る回遊型シェアモビリティで、料金は定額、スマホで呼び出すことができるサービスだ。走行ルートは人工知能AIが最適化する。ベトナムでのサービスの想定は毎朝自宅から最寄り駅やショッピングセンターへの買い物、通学・放課後の習い事に利用することができる。複数名のプロのドライバーが運行するため顔馴染みになれるので、子どもの塾・習い事サービスの送迎にも便利だ。ベトナム都市部で発達しているバイクタクシー的な使い方をこのシェアモビリティサービス「mobi」が実現してくれるのだ。
 
 「幸いにもこの2021年8月に当社のAIオンデマンド交通が『日ASEANにおけるアジアDX促進事業』の一つに採用され、この11月からハノイで実証実験が行われることになったのです」と高田。彼によればハノイ在住の在留邦人の皆さんにはぜひ実証実験に参加してもらいサービスの便利さを実感してもらいたいとのことだ。

 WILLER社はこのAIオンデマンド交通の実証実験のほか、全国にタクシーサービスを提供しているマイリン社と合弁会社を設立しベトナムの地方都市とを結ぶ高速バスサービスや、アプリ開発の拠点となるWILLER VTI社も設立して、ベトナム企業との協業に実績をつけている。

 「7月に赴任して1ヶ月はホテルに隔離されました。毎日ベトナムのご飯を食べました。最初はベトナム料理もおいしいなと感じましたが、食べ続けるとさすがに日本食が恋しくなりましたね。英語が思うように通じないのでベトナム語の勉強もはじめました。レジデンスの受付の方に日本語を教える代わりにベトナム語を習っています。ベトナム人は素直で真面目、親しみやすく、住むには良いところだなと気に入っています」

 2022年には家族をハノイに呼び寄せて一歳半になる娘と一緒に暮らすことになるという。

 インドネシアの度重なる停電で社会インフラの重要性に気がついた高田。今度は脱バイク社会を目指すベトナムで、交通モビリティという社会インフラの新たな発展をWILLER社の企業活動を通じて高田が実現する日を見届けよう。

文=新妻東一

WILLER VIETNAM/高田功太

WILLER VIETNAM

高田功太

プロフィール

日本国内におけるオンデマンド交通&自動運転関連プロジェクトの立ち上げを担当。また、各外部パートナーとのコラボレーションを推進。ベトナム / ハノイにおけるAIオンデマンド交通サービス事業化を目指し、2021年7月にWILLER VIETNAMに着任。日本政府と連携し、11/18よりハノイ市中心部でAIオンデマンド交通の実証実験を実施中。ぜひ参加ください。

https://willertrip.com/jp/vn/mobi/

さらに詳細な情報を知りたい場合は
下記よりお問い合わせください。


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