屋根なし二階建て観光バスで45分間のホーチミン観光はいかが?/ホーチミン市
- 2022/09/19
コロナが一定収束し、ホーチミン市の街にも外国人観光客が戻ってきました。すると街中で目立つようになったのが、二階建ての真っ赤なバス!です。ロンドン名物の二階建てバスみたいですが、見たところ二階部分には天井がありません。その二階席から観光客とおぼしき白人のお父さんが手を振ってカメラのシャッターをきってます!ホーチミン市の夏なら突然襲ってくるスコールに遭ったらどうするんでしょう?そんな心配もよそにお客様は楽しそう。
コロナが蔓延するようになる前から気になっていましたが、今回試乗してきました!ホーチミン市のホップオン・ホップオフバス。みなさんも誌上での試乗にお付き合いくださいませ。
この観光バスの乗車場所はホーチミン市の目抜き通り、ドンコイ通りにあるオペラハウス前。カラベール、コンチネンタル、パークハイアットなどホテルの真ん前です。まずはチケット売り場で乗車券を購入しましょう。バスと同じ赤い色のかわいいブースがオペラハウスの脇に建てられています。料金は149,000ベトナムドン(約930円)です。
市内の観光スポット10ヶ所を約45分で巡ります。毎日9:00から17:00まで、30分ごとに出発します。
雨季ときくと日本人は梅雨のようなジトジト雨が降り続くイメージをもられるのでしょうか、旅行の時期として雨季を避ける傾向にありますが、私の経験からは雨季でも観光は十分にできます。ホーチミン市の雨季はバケツの底が抜けたような雨が日に1〜2時間降るだけだからです。それだけに雨の降らない時間は比較的天気が良く、晴れています。ですので、太陽が出ている時間に屋根なしの二階部分に例え45分でも日射がきついので、16:30、夕方発便に乗り込みました。
旅行をして初めての街では、わたしはまず半日程度の観光バスに乗ります。東京で言えば「はとバス」です。皇居、浅草観音と仲見世、東京タワーを巡る半日コースのその街の観光バスに乗ります。
バスで走り、街の雰囲気を感じとったら、公共交通機関を利用してガイドブックと地図を片手に自分の足で街を歩きまわります。そうすると、その街を使いこなしたような気分になれます。たとえ短時間でも自分で道に迷ったり、発見した方が思い出深い旅になること請け合いです。
出発ギリギリに乗車したので、待ち時間なくバスは出発しました。乗車口では赤と黄色のカラフルなイヤホンを渡されます。このバスにはガイドは乗車していませんが、代わりに8ヶ国語、GPS連動の自動音声ガイドがついています。座席の前の差し込み口にイヤホンジャックを差し込めば、目の前に見える観光スポットの案内が流れる仕組みです。もちろん日本語にも対応しています。ネイティブの発音なので日本語も聴きやすくなっています。長年ベトナムに暮らす私でも知らないような建物や人物の歴史的なエピソードなども紹介されるので、自動音声ガイドといえど優れものです。
チケットを購入するとかなり大きめな観光マップ(ただし英語)も渡されるので、こちらも広げながら街を楽しみましょう。
同乗者の顔ぶれを見ると、スペイン語や英語を喋る白人客やサリーをきたインドからのお客様が目立ちます。ベトナムのLCC航空会社がインド/ベトナム間の直行便を就航させたおかげでしょうか、ポストコロナのベトナムではインド人観光客が目立ちます。一方中国、韓国、日本からの観光客はほとんど見当たりませんでした。ベトナムには各種証明書なしに入国できるものの、帰国の際に陰性証明書やワクチン接種証明書を求められるので、いまだ海外旅行が敬遠されているからでしょう。
バスの2階部分はハイデッガーバスの屋根部分に座席があり、地上からかなり高い位置になります。ですので、二階の座席からの見晴らしは最高です。スコールが降ってきたら、バスの中央にある階段から下の一階席に移動することが可能です。
バスはまずホーチミン市のランドマークとして有名な人民委員会(市庁舎)を経て、中央が歩行者道路になっているグエン・フエ通りを進みます。サイゴン川の川沿いの道を左へ曲がって前に進むと、ピンク色に彩られたフランス風の建築物、「ホー・チ・ミン博物館」が見えてきます。
ホー・チ・ミンはベトナム独立運動の指導者で建国の父として慕われています。その彼が1911年、この博物館のある場所から船員として世界に旅立った場所として知られています。元々フランスの海運会社の建物でしたが、南北統一後はホー・チ・ミンの生涯と革命運動を紹介する博物館になっています。このツアーでは下車観光はありませんが、歴史好きならば改めて訪れてみても良いでしょう。
サイゴン川沿いの道をUターンして今度は道を北上します。市内でも開発の進むエリアが正面に見えてきます。ベトナムのみならず東南アジアで最も高いビルである「ランドマーク81」とマンション群です。心地よいサイゴン川からの川風に吹かれて川沿いにバスは進みます。
元寇を三度まで打ち破ったベトナムの将軍・チャンフンダオの銅像を経て、向かうのはサイゴン動植物園です。
実はこの動植物園は1864年コーチシナ総督府によって開設された「百草園」をその前身とし、アジアでは最も古い動物園と言われています。なんと明治元年から4年も前!ちなみに上野動物園は1882年、明治15年に開園しました。
動植物の保存とインドシナの科学者の研究を目的に建設されました。総面積20haもの広い敷地に哺乳類、鳥類、爬虫類などの動物一千個体、260種の樹木、23種のベトナム固有種のラン、33種のサボテンを観ることができます。
パンダのような希少種はいませんが、週末は親子連れで賑わっています。コロナのために一時期存続が危ぶまれましたが、市民からの寄付を募り、今にいたっています。園内にはベトナム歴史博物館もあります。
バスはヴォーバンタン通りへと進みます。通りの途中には「ベトナム戦争証跡博物館」があります。
この博物館にはベトナム戦争で米軍が使用した兵器、武器が陳列され、従軍記者たちが撮影した戦争写真が多数展示されています。枯葉剤の被害、ソンミ事件などベトナム戦争の悲惨さを今に伝える博物館です。日本のフォトジャーナリストに石川文洋氏と中村悟郎氏の特別展示もあり、見応えのある展示となっています。
バックパッカーで賑わうファムグーラオ通りを経て、バスはベンタン市場へ向かいます。
現在市場の前は日本の政府開発援助(ODA)による都市鉄道1号線の地下駅建設中ですので、景観として今一つです。コロナで3年近く外国人観光客が訪れることのなかったベンタン市場ですが、地元の生活市場としての顔は今も健在。コロナがあけて、お土産市場としての顔も次第に取り戻すことでしょう。
続いてバスは独立宮殿(統一会堂)へと向かいます。この建物は元々フランスのコーチシナ総督府でしたが、1955年南ベトナム・ゴ・ディン・ジエム政権は独立宮殿と名称を変更、大統領は家族と共にこの独立宮殿に暮らしました。しかし1962年、反政府派の空爆により独立宮殿は破壊されました。そこで同年この元フランス植民地政府の総督府だった建物を取り壊し、新たにローマ建築賞を受賞したベトナム人建築家・ゴー・ベト・トゥーの設計による大統領府の建築を決定します。
ジエム大統領は翌年軍のクーデターで暗殺され、結局大統領として独立宮殿の主となったのはグエン・バン・チュー大統領でした。サイゴン「陥落」の際に北ベトナム軍の戦車がこの独立宮殿に突入するシーンは北が南に勝利した象徴的なものとして有名です。
バスはかつてケネディ広場と名付けられた公園の並木を抜けてサイゴン大教会、中央郵便局へと向かいます。
この二つの建築物はフランス植民地時代を象徴する建物として知られています。サイゴン大教会は1880年に、中央郵便局は1891年に完成しました。
残念なことにサイゴン大教会は現在改修中のため内部に入ることはできません。改修のための足場が組まれているため、その美しい姿を観ることもできません。2027年には改修が終了するとのことです。
中央郵便局は中に入ると円弧の高いドームとなっていて、正面にはホー・チ・ミンの写真が掲げられています。入口を入ったすぐの壁にはサイゴンの古い地図も掲げてあります。郵便局の外壁にはフランクリン、ボルタ、ファラデー、ガルバニーなど世界の電気に関する研究者の名前が刻まれています。
最後にまたオペラハウスに戻り、ツアーは終了となります。
初めてホーチミン市に訪れた方が土地勘を得るために、あるいは仕事でホーチミン市に何度も来ているけど、観光をしたことがない方にはオススメの観光バスです。
文=新妻東一
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