人生はギブ・アンド・ギブ、コロナ禍にあきらめず立ち向かう24歳起業家

  • 2021/7/10
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株式会社Capichi/森大樹インタビュー

 コロナ禍でレストランでの飲食が禁じられている今、ハノイとホーチミン市の在留邦人の中で便利なスマートフォンアプリができた。その名も「Capichi」。来店しての飲食ができない中でデリバリーをはじめた飲食店と顧客とをつなげるデリバリー注文アプリだ。日本語での表示とLINEでの日本語カスタマーケアにも対応しているので、ベトナム語に自信のない人にも便利だと人気だ。

 このアプリを開発したのがCapichi Inc.。同社のCEOが今回Bizmatchインタビューに登場する若干24歳の森大樹。「1997年、丑年生まれなんですよ。ベトナムでは水牛年ですよね?」ベトナムで水牛年生まれは働きづめにはたらいて苦労するといわれている。「そういえば寝る時間以外は働いていますよね、水牛みたいに」と笑う。

 奈良県に生まれた森は神戸大学に進学、国際文化学部ではITコースで情報工学、プログラミング、統計を学んだ。「ITの世界が好きだったんです。国際学部なのにね」2年生からインターンとしてIT会社で働いたり、サマーインターンにも参加した。

 「学生時代からインターンで働くなんて意識高いっていわれますけど、いざインターンで働いてみると、その意識高い系のひとたちも同じ価値観で横並び、自分だけの世界がないなと感じられたんです。一流大学を卒業して大企業に勤める、というレールとは違う道を進むといってベンチャーに勤めようとする人たちもまた違うレールの上を歩んでいるに過ぎないじゃないかと思った」と森はいう「僕は自分の世界をもちたかったんです」

 当時、海外旅行によくいっていた「アルバイトでお金を貯め10万円ぐらいたまると、東南アジア各国にいっていました。ただタイやベトナムは2〜3週間、非日常体験としての旅行にはいいけど、住むのはごめんだなと思っていました。日本の環境はよいし、住みやすいし、日本最高だなと思っていました」

 就職してしまえば日本に居続けることになってしまうであろう自分だから、学生時代のうちに海外で暮らすという経験をしてもいいかな?と思い直し、休学してベトナムのIT企業で1年間インターンをすることに決める。

 2017年には念願のベトナムでの海外インターンシップ。しかしベトナム人経営のIT企業、職場に日本語を喋る同世代はいない。日本語を喋るのは管理職だけだった。最初の1〜2ヶ月は友人もなく寂しかった。「はやくインターンが終わってくれないかと思っていました」

 そんな森に転機が訪れた。「ハノイ大学に日本語クラブがあり、夕方5時から7時までベトナム人学生と日本語で会話する場所です。そこに参加してはじめて同年代のベトナム人の友だちができました。みな就職してしまって頻繁に会うことはありませんが、今でもよい友だちです」森はベトナムが、ベトナム人が好きになった。

株式会社Capichiオフィス

 インターンで働くうちに森は自らの新しいITサービスを産み出したい、自分のアプリによって誰かの生活が少しでも楽しくなればいい、そう思うようになった。最初に考えついたのは観光地やお店をシェアしてデータベース化、それをAIでユーザーに合わせてレコメンドするアプリだった。だが実際に開発してたら面白くない、ユーザーが外国人であれば繰り返し利用することがない、と試行錯誤した。

 最終的には「食べログ」のようなコメントではなく、店の雰囲気や料理を各自が動画でシェアすることで、SNSとお店の紹介ができるFood Vlogという飲食動画アプリになった。店舗は集客を狙えるし、ユーザーはお気に入りの店を紹介したり、新たな店に「出会う」ことができる!

 インターン先の社長に相談し、まずは元々の仕事を続けながらチームを作ってサービス開発を進めることにした。プロジェクトを進めるなかで、これは自ら会社を設立し、資金を集め、開発に望むべきだと思い始めた。そうなると大学を卒業するまで待ってはいられない。森は大学の休学を延長し、2019年日本に会社も設立した、ピッチイベントに参加、投資家からの資金を集めた。そして目標の2000万円も調達、彼はベトナム人の開発者を集め本格的に新サービスアプリ、Capichiの開発に取り組んだ。

デリバリー注文アプリ「Capichi」

 大学での告知イベントで好評を得、新サービスを売り込むために飲食店への飛び込み営業もし、アプリのアップルストアでのリリースも決まって順調にいくかと思えた。

 しかし突如悲劇が森を襲う。2020年1月末からコロナウイルスによる世界的な感染が広がり、ベトナムでも罰則付きのロックダウンが開始され、飲食店は店内での飲食が禁止されてしまったのだ。

 飲食サービスの検索アプリなのに飲食店は営業停止ばかりか閉店する店も続出した。このままでは期待した利益を得られないばかりか、銀行預金も減っていくばかりだ。このままではジリ貧になる!森は頭をかかえた。

 飲食店はどこも生き残りのためにデリバリーサービスを開始した。しかし慣れない受発注でミスもおきる。特に知人の日系飲食店は日本語の注文をベトナム人スタッフが電話で受けているので、聞き間違えやオーダーミスが起きていた。

 そこで森はコロナ感染の閉店措置期間は無料の日系飲食店と在留邦人を結ぶデリバリー受発注ウェブサービスを会社の仲間とたった3日間で開発し、2020年3月末にリリースした。このサービスのおかげでアプリCapichiと森の知名度は在留邦人の中で一挙に広がった。

 「実はこのころ経営的にはとても厳しく、寝られない日がつづいていたんです。ただなんとかなるさと心の底では思っていましたし、新たな融資も受けることができて救われました」と森は思い出すように語る。

ベトナムでの森大樹

 悪いことは重なる。2020年10月、深夜バイクを運転中に飲酒運転していた車に跳ねられ、鎖骨を粉砕骨折する事故で入院、手術もした。その中で気づいたことがある。現場で自分を介抱してくれた見ず知らずの人、ベトナム人スタッフ、それがみな自分を心配し、手助けしてくれた。会社の仕事で行き詰まりを感じていたが、こんなにも自分を助け、愛してくれる人たちに囲まれて生きていることに森は気づいた。

 「人生はギブ・アンド・テイクじゃないですよ。ギブ・アンド・ギブです。愛を与えて与えて与えまくれば良いんです。そして僕から愛を受けた人はまた他の周りの人に愛を分けていけばいい。そうすれば、世界は愛で溢れてみんな幸せになりますよね」と彼は事故直後、自身のブログに書いている。

 「あの事故で運気がかわって、新しい投資家も見つかって、ホーチミン市での展開も開始して売上の倍増を目指します」と森。

 「自分はあきらめが悪い」と自嘲する森はコロナで苦境にたたされている人たちをもその「あきらめの悪さ」で励ましてくれている。

文=新妻東一

株式会社Capichi/森大樹

森大樹
Capichi Inc. 代表取締役 CEO

プロフィール
1997年生まれ、奈良県出身。2015年に神戸大学国際文化学部入学。大学では東北震災ボランティア団体の運営、ITベンチャー会社でマーケティング・新規事業立ち上げなどを行う。2017年10月より大学を休学して、ベトナム・ハノイのITベンチャーBEETSOFT社で営業・ITコンサルタントとして働く。2019年7月に株式会社Capichiを設立して代表取締役CEOに就任。
URL:https://capichi.jp/

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