福岡に支社を設け、日本向けオフショア開発で大躍進めざすIT企業/テックヴィファイ・ソフトウェア株式会社

 これまでこのベトナム企業インタビューではZOOMを利用したリモートでの取材を行ってきた。ベトナム南北中部どこへでもリモートなら移動時間をとられることなく取材を行うことができる。
 これまではベトナム国内の都市に立地する企業を取り上げてきたが、今回リモート取材を行った企業は福岡に支社をもつベトナムのIT企業だ。2018年に起業、そして2021年には日本に支社をもつまでに急速に発展したアプリやシステムのオフショア開発企業だ。社名をテックヴィファイ・ソフトウェア株式会社という。
 同社日本支社の副社長はなんと25歳、そして女性、なおかつ日本語と英語が堪能というから驚きだ。今回のインタビューの言語は何にしましょうか?と冒頭日本語でたずねたところ、「そうですね、日本語でインタビューいただいて、説明しきれなかったらベトナム語にかえましょうか」そう流暢な日本語で答えてくれた。彼女の名前はサラ・チャンさん。今回のインタビューはすべて日本語で行われたことをお断りしておく。

 テックヴィファイ社は5年前に創業。ハノイとダナンに開発センターを有し、福岡の支社には副社長のサラ・チャンが営業とマネジメントを担当している。日本語のできる技術スタッフを常駐させ、お客様と開発センターとを橋渡しする役目をおっている。
 同社は主にウェブアプリとモバイルアプリの開発、クラウドサービス、AIやデータサービスなどの受注を受けて開発を行う。主な使用言語はJAVA、PHP、それに.NETだ。エンジニアは全員英語が話せるほか、その3割は日本語の話せるエンジニアでもある。
 主な顧客はグローバル、なかでもシンガポール、香港、オーストラリアなどで、全体の仕事の7割を占め、他に日系企業からの受注は残り3割だという。
 得意な産業の分野は、物流、教育、医療だ。ウェブでの事例紹介をみても、日本企業の美容室チェーン向けソーシャルアプリやシンガポールの顧客向けの拡張現実(AR)対応のモバイルアプリから、ベトナムの顧客向けのドキュメントワークフローや、医者と患者向けのコールセンター向けのコミュニケーション用のウェブアプリといった幅広い分野での開発を手がけている。
 実はグローバル向けの海外支店を有していたのだが、コロナ禍にあって一時閉鎖した。一方、それまでグローバル向けがほとんどであった同社のマーケットを日本にまで広げるために福岡に日本支社を設けたのが2021年の春だった。
 なぜ福岡に日本支社を設けたのか?という私の質問にサラは答えた。「日本に海外企業がオフィスを構えるのは通常、東京か横浜などになりがちですが、私たちのような企業が東京や横浜での競争に勝ち抜くのは容易ではありません。また生活コストが大都市より安い福岡は企業にとっては魅力的です。当社の日本人協力者の生まれ故郷であったり、JETRO福岡の支援などもあって、福岡への出店を決めました」
 私もこの5月に福岡へ出張したが、何よりも国際・国内空港までのアクセスが短時間ですむことは企業にとってはとても大きいと感じた。韓国人をはじめとするアジアの人々が気軽に訪れている街であり、福岡で接客する人たちが外国人慣れしているとも感じた。外資系の企業、IT企業の進出先として今後注目されていくに違いない。

 同社副社長のサラ・チャンは1997年、ダナン生まれ。ダナン経済大学で貿易を学び、3年になって京都大学との交換留学生として1年間日本に留学した経験を持つ。日本語の翻訳・通訳者として活躍していた姉の影響を受けて、日本と日本語が好きになった彼女は、進学した経済大学に日本語科がなかったため、ダナン工科大学の日本語科で理系の学生たちに混じって日本語を勉強したという努力家だ。
 大学卒業後、彼女はベトナムのオフショア開発大手に入社し、同社CEOのもとで営業を学んだ。
「CEOとともに顧客のもとを訪れて、どのようにお客様に接し、注文を引き出すのか、その営業ノウハウも学ぶことができました」とサラ。
 ただリッケイソフト社は主に日本企業を相手にしている。英語も得意で、日本だけではなく、世界どこへでも出かけて行って、営業をし、仕事をしたいという希望をもっていたサラはリッケイソフトから、まだ起業して3年と経っていなかったテックヴィファイ社に移籍した。
 同社は当時、日本との取引がほとんどなかった。しかし社長のヒューはぜひグローバル、日本の比率を50・50にまで引き上げたいとの希望をもっていた。サラは日本企業への営業を開始する。ただ、日系企業にアプローチするのに、日本に支店がないと顧客は当然心配をする。そこで、サラは日本支社設立を提案する。彼女は支店設立案を作成し、社長に提案した。同社は、その年齢や役職を問わず誰であっても良いアイディアであれば取り上げ、問題もない計画であればただちに実行すべし、という企業文化があり、サラの提案が受け入れられ、日本支店設立へと動き始めた。
 コロナ禍の中にあっても、同社はジェトロと日本人協力者の支援を受けリモートで2021年3月に日本支店を設立した。ただ、日本支社を設立してもコロナによってベトナムと日本を結ぶ航空路線は運航していない。彼女が日本に入国できたのは設立後1年経った2022年の3月であった。当時は日本入国後の隔離期間があって、東京で10日間の隔離を経ての日本入国だったという。1年間の留学経験があったとはいえ、日本で支店を設立し、営業で仕事を開拓しながら、海外で生活する、それもコロナがまだ収束していない時期を選んでの進出だから、その度胸たるや並みではない。そして日本支店の責任者という地位も獲得した。
 「テックヴィファイ社に入社した当時は日本向けの仕事は皆無だったのですが、私が一つ一つ営業して仕事を増やしたんです」とこともな気にいう彼女は営業という仕事が心底好きなのだろう。
 日本の取引先企業では女性エンジニアや企業幹部というのはほぼ皆無だという。年齢も若い人が少ない。翻って日本以外の他の国の企業では幹部の年齢も若く、女性の幹部などとも交渉になることがある。
 「日本の企業ももっとオープンマインドで開かれた企業であるべきだと思います。取引先でも最初は日本語だけでコミュニケーションしていたものが、相手も英語を少しづつ学んでくれるようになってくれています」

 最後に彼女はこうも付け加えた。
「私のテックヴィファイ社が日本の人材不足に対してリーズナブルなコストで、当社の優秀な技術者たちが応えると同時に、相手先の企業もテックヴィファイ社のグローバルなチャンネルを利用して、世界的にも開かれた企業としてともに発展することを期待しています」
 同社は2025年までに3千名を超えるエンジニアをかかえる大企業へと成長することを目標に掲げている。そのため採用スピードも加速させている。ベトナム・テックヴィファイ社とともにグローバルな日本企業へと脱皮しようとする企業こそ、同社にコンタクトしていただきたい。

文=新妻東一

日本支社副社長/サラ・チャン

TECHVIFY SOFTWARE .,JSC
テックヴィファイ ・ソフトウェア 株式会社

プロフィール

創業2018年。本社はハノイ。社長はグエン・スアン・ヒュー。ハノイとダナンに開発センターを有するオフショア開発受託企業。従業員数は2023年現在250名。福岡・博多駅近くに日本支社をもつ。支店長のサラ・チャンが営業にあたり、日本語のできるエンジニアを常駐させ、ベトナム開発センターとの橋渡しを行う。

>> この企業のプロフィール情報を見る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメントは利用できません。

おすすめ記事

カテゴリー一覧

ビジネスに役立つベトナム情報サイト
ビズマッチ

ページ上部へ戻る