工場用の棚、作業台からスーパー向け什器の生産・販売/ニューテックベトナム株式会社

 工場には棚が必要である。当たり前のように思うが、それが30年前のベトナムでは、それは「常識」ではなかった。私はそのことを商社マンだったころに思い知らされた。

 時代は1980年代から90年代初頭のこと。私の勤めている貿易会社は縫製品のベトナムからの開発輸入に取り組むことになった。日本の縫製品のメーカーと提携し、ミシンなどの縫製ラインの機械の一部を提供し、日本人技術者の技術移転によって、縫製品をベトナムの工場に製造させ、その製品を買い取る仕組みだ。

 身生地はベトナム工場側が自ら調達、ラベルや個装、ゴムなどの縫製付属品は日本側から支給する約束だった。

 日本から出荷された付属品類はカートンボックスに入っている。それがそのまま、工場の付属品倉庫に乱雑に並んでいる。棚もない。内容物がなんであるかを表示する文字もない。カートンボックスの口が空いて地べたに並んでいるだけだった。だから必要な副資材を必要なだけ取り出すのは容易でなかった。カートンのフタを開けて見ないと中身がわからない。時間がかかる。

 ある時は倉庫係が倉庫の鍵をかけて、食事に出かけてしまい、生産に必要な付属品を取り出すことができない。縫製工たちは倉庫係が倉庫に戻るのを待って、付属品を受け取ってから、また生産に取り掛かる。その間はラインが止まってしまうのだ。

 これでは納期どころではない。指導に入った日本の技術者たちが縫製工場のトップに掛け合い、棚を作り、内容物を書いた紙をカートンボックスに貼り付けた。倉庫の管理者は複数にして、ひとりが不在でももうひとりが対応できるようになった。

 今時のベトナムの工場で、こうした整理整頓、5Sの初歩ができていない企業など見ることもないが、30年前のベトナムの国営工場はまずこんな感じだった。

 90年代に第一ベトナム投資ブームが起き、それも97年ごろのアジア通貨危機で収まった。だが2000年代に入ると、電子、電気企業、オートバイ・自動車メーカーが北部ハノイ近郊に次々と工場進出を決める。系列企業もやってくる。ベトナムは製造業の進出ラッシュで大賑わいとなった。

 工場を建設するとなると、必要になるのは機械設備を収める上屋に倉庫の棚や作業、検品台、ラインのコンベヤーなどだ。

 機械設備は外国から輸入する。工場のラインや倉庫に使用する作業台や棚、ラックを作り、供給するメーカーが必要だ。

 今回ご紹介するNewTek社は、元々日系工場に倉庫用ラックや棚、作業台などを製造して納めていた会社である。

 それがスーパーマーケットが次々と作られる時代になって、棚や什器を供給するようになり、スーパー向けの什器、棚も製造供給し、それが大きく会社の発展に大きく結びついた。

 そう語ってくれたのは同社の営業担当部長であるファム・ティ・ビンだ。

 創業者のドー・テー・フォン氏がNewTek社の前身である工場を立ち上げたのが1996年。主に日系工場向けに工場に必要な棚や作業台などを製作し、納入したのがはじまりだったことは先に述べた通りだ。

 Newtek社と名付けた会社を発足させたのが2006年のことだった。新技術、ニューテクノロジーという言葉をつづめてNewtek。印象がよく、覚えやすく、一度聞いたら忘れられない社名だ。

 主な製品ラインとしては、従来の工場向けのラックや大型の倉庫の棚など工場まわりに必要な製品に加えて、スーパーや小売店で使用する陳列棚、什器の類がもう一つの製品ラインだ。

 倉庫用の棚の素材は重量物を載せるとあって鋼材が使用されているが、スーパーや小売店などの什器、陳列棚の素材としては鋼材の他、ステンレスやガラス、木材も使用した多様な什器を製造し、販売している。

 顧客はベトナム国内外の大手自動車製造メーカーや電子機器メーカーがずらりと並ぶ。スーパーや大型小売店ではベトナムでは名の知れた大手大型小売店の名称が顧客としてウェブサイトに紹介されている。棚、什器の専門メーカーとして高く評価されていることがうかがわれる。

 国内の顧客のみならず、最近ではホールセラーを通じて米国にも輸出されるようになったと誇らしげだ。

 同社ではスポーツウェアやスニーカーなどのファッション性の高い商品を扱う小売店向けには店のブランディングや什器の配置などコンサルティングも行いつつ、什器を納めるサービスも行っている。什器デザイン専門のデザイナーも5名を擁しているという。小売店にとっては強い味方だ。

 工場はフンイエン省イェンミーの工業団地に立地している。ハノイから自動車で1時間以内という距離にあって、北部ベトナムの企業にとっては便利がいい。

 従業員数の内訳は、工場労働者は平均して130名程度、時期に応じて120人から150人まで変動するという。事務、営業など間接部門の従業員は35名とのことだ。

 昨年の売上は1500億ベトナムドン(約7憶5,000万円相当)。この数字をぜひとも上向かせたいというのがビンの希望だ。

 ビンはベトナムの日系企業にNewTek社を紹介し、売り込んで欲しい、とせがまれた。製造工場でも小売業でもよい、営業を手伝ってくれないのか、というのだ。

 私ができるのは、このベトナム・ビズマッチのウェブサイトで、同社の記事を書き、紹介することだ。もし、この記事を読んで、NewTek社に仕事を依頼したい場合には、ぜひ本オウンドメディアの所有者であるWons Vietnam社にご連絡をいただきたい。

新妻東一

ニューテック・ベトナム工場(フンイエン省)

ニューテックベトナム株式会社
Newtek Vietnam Joint Stock Company

プロフィール

2006年創業。創業者はドー・テー・フォン。工場はフンイエン省イエンミー工業団地に立地。主な製品ラインは倉庫用の棚、ラックおよび小売店向けの陳列棚、什器の設計、製造、販売。従業員数は165名。ベトナムに進出した日系企業との取引をもとめている。

>> この企業のプロフィール情報を見る

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