オートバイの部品として欠かせない「ニッチ」な製品、グラスファイバーでベトナム進出/ニチグラベトナム

 今回インタビューに応じてくれた企業の名称は「ニチグラ・ベトナム」。なにをつくっているメーカーさんなんだろうと、同社のホームページを開く。「ニチグラ」のニチは「日本」のニチ、「ニチグラ」のグラはグラスファイバーの略称だ。同社の親会社の名称は日本グラスファイバー工業株式会社という。

 グラスファイバーといわれて、かつてオーディオマニアだった私が思い出すのはスピーカーの吸音材だ。スピーカーの箱の内部にどの程度の量の吸音材を詰め込むかによって、音色がまったく変わってしまう。スピーカー内部のグラスウールの量の調節をして音質や音量の変化を楽しんだものだ。

 グラスファイバー、といっても多くの方々は実際に目にすることの少ない工業製品。はたしてベトナムに進出したニチグラ・ベトナム社はどういった経緯でベトナムに進出をはたし、グラスファイバー製品の製造を行うようになったのか、ベトナムの代表者に話を伺った。コロナ感染拡大が一定収束しているベトナムではあるが、同社がフンイエン省に所在していることもあり、引き続きZOOMによる取材であることをお断りしておく。

 「ベトナム進出し工場を稼働させたのは4年前の2018年です。自動車、オートバイメーカーからグラスファイバー製品の供給のためにベトナムに進出して欲しいとの依頼があったからというのがもっとも大きな理由です」

 そう語るのはニチグラ・ベトナム社の代表、旗屋智希、58歳だ。

 同社は日本グラスファイバー工業株式会社の100%出資子会社として2017年、ベトナムに設立され、工場を立ち上げた。

 同社はタイ、インドネシア、中国にも工場を有していたが、あらたに工場を立ち上げるため、中国での勤務経験のあった旗屋に白羽の矢があたった。4年前、ベトナム工場を立ち上げたのも旗屋だった。

 「グラスファイバーはガラス繊維ともいわれておりまして、断熱、保温、吸音に優れた素材として、様々な産業分野に使用されてます」

 グラスファイバーとは、ガラスを溶融、加工して繊維状にしたもの​​だ。素材はガラスであり、それを細く、繊維状に加工されているため、保温、断熱、耐熱、吸音、不燃といった性質を持っている。同社ウェブサイトにはグラスファイバーを使用する産業としては「自動車・オートバイ」「造船」「プラント」「建築」「家電」が紹介されている。

 同社が得意とするのは、我々にも身近なオートバイのサイレンサー部分の断熱・吸音材としてのグラスファイバーだ。エンジンの燃焼ガスは5、600度から1000度に達することもある。その熱に耐え、かつ、エンジンの排気音を抑えることができるのは、同社が提供するグラスファイバーのおかげだ。オートバイメーカーから請われて、ベトナムに進出を決めたのも同社のもつグラスファイバー製品あってのことだ。

 「かつて日本でもオートバイの轟音をあげて疾走する『暴走族』が流行りましたが、彼らは当社のグラスファイバーでできたサイレンサーを外して、文字通り暴走したのです。その効果のほどはわかっていただけると思います」と語る旗屋。

 自動車の部品としてもグラスファイバー製品は使用されているが、ベトナムではまだコンプリート・ノックダウン(CKD)の形式でのみ、自動車が製造されているため、海外ですでにグラスファイバー製品が組み込まれた形で部品が輸入されているため、自動車向けには同社の製品の出番はないそうだ。

 「私が乗る社用車は客先の製造する四輪車で、普及価格帯のもの。社長には高価格帯のブランド車に乗ってほしいとの現地スタッフの声もありますが、客先であるオートバイメーカー以外の四輪車に乗るわけにもいきませんし。今年5月までは私も工員と同じ食事を摂るようにしていたぐらいでして」

 何事も「社長用」とか「日本人用」などと現地ローカルスタッフや工員たちと差別があってはいけないという信念を旗屋はもっている。

 「ベトナム料理もおいしくいただいています。ローカルスタッフにネコ、ウサギ、イヌまで食べさせられました」と苦笑する。郷にいっては郷に従え、そう旗屋はいっているようだ。

 旗屋は中国にも駐在したことがある。中国人と比較してベトナム人の国民性の違いを感じている。

 「私のせまい個人的な経験からなので、一般化できるかどうかはわかりませんが、中国人はどちらかというと個人主義的ですね。でもベトナム人は違う。みんなと一緒、一致団結、日本人のいう『和』を重んじる傾向があります」そう語る旗屋。

 ベトナムも中国も同じ社会主義。ベトナムの「みんなと一緒、一致団結」という考え方は社会主義体制にあるからとも言えるが、中国のそれとは異なるという。中国人はどちらかというとアメリカ人に似た、個人主義的な考え方をもっているそうだ。

 実体験を通して旗屋は「みんなと一緒、一致団結」を重んじるベトナム人の心をつかむべく、社用車は普及価格帯の車両を選び、現地社員、工員と同じベトナム料理をおいしく食べる生活をしている。海外でのマネジメントにおいて経営のトップがとるべき必要な態度だろう。

 コロナ感染が広がり、経済的な影響を受けたこの2年間。グラスファイバー製品のメーカーである同社もコロナの影響を受けた。

 「コロナによってオートバイの売れ行きが減った上に、このところの世界的な半導体の不足から、オートバイ、自動車部品が揃わず、結果的にオートバイ生産数量が減少し、それに伴ってグラスファイバーの売上も思う様にはのびていきません」と語る旗屋。

 現在は主に同社製品はオートバイのサイレンサー用がメインだが、それ以外の産業分野での同社製品の開拓はまだ思うようには進んでいない。今後は家庭電化製品用や化学プラント向けにも同社製品の販路を広げていきたいと旗屋はいう。

 「オートバイに限らず他の産業分野であってもグラスファイバーのことであれば、日系、外資、ベトナムの企業問わず、当社にご相談ください」とこの記事を読む読者に呼びかける。

 「ニッチなニチグラ」とのキャッチフレーズのある同社だが、ニッチ、ニッチと自らいいつつも海外生産メーカーとして、ベトナムという地に腰を据え、現地社員とともに王道を歩む旗屋と同社に拍手をおくりたい。

文=新妻東一

ニチグラ・ベトナム有限会社

プロフィール

2017年、愛知県に本社を有する日本グラスファイバー工業株式会社の100%子会社として設立。主にオートバイ向けグラスファイバー製品を製造、販売している。同社は海外拠点8つを有し、ベトナムはそのひとつ。家電向け、化学プラント向けにも製品を提供可能だ。

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