「タイニン省にいったい何があるというのですか?」カオダイ教寺院とバーデン山

ベトナム観光旅行記:第9回「タイニン省」

「ラオスにいったい何があるというのですか」という書名の本があります。作者は村上春樹。ラオスを訪れようという村上にベトナム人がそうたずねたそうですが、それがそのまま書名になっています。

 ベトナム人である私の妻は隣国ラオスに対してまったくと言っていいほど興味がなく、ラオスに観光に行くという私に対して同じようにたずねたことがあります。

 その妻の実家は実はタイニン省にあります。タイニン省はホーチミン市から車で約2時間、100kmの距離にあります。このタイニン省には世界的にも有名な観光地が存在するかというとそうではありません。「タイニン省にいったい何があるというのですか」と私の方が妻にたずねたいほどです。

 そんなタイニン省ですが、妻の実家があることが理由で夏休みや旧正月休みに訪れるにつれ、いわゆる高名な観光地ではないベトナムの地方都市・タイニンの魅力についてご紹介したいと思います。

ベトナムのソルトレイクシティ・カオダイ教総本山のあるタイニン市

カオダイ教総本山の教会建築

 米国ソルトレイクシティはモルモン教徒の街としてしられていますが、タイニン市はカオダイ教の宗教都市、ベトナムのソルトレイクシティです。ホーチミン市から車を走らせるとタイニン市の市街地に入る前にカオダイ教の総本山ともいうべき特異な教会建築がそびえたっているのが見えます。壁は極彩色に彩られ、龍などの霊獣たちが柱にまとわりついています。その色の鮮やかさからディズニーランドにでもまよいこんだかのようです。

 タイニン市に住む人々の多くはカオダイ教徒です。私の妻の両親もカオダイ教徒ですし、妻のIDカード(人民証明証)の宗教欄には「カオダイ教」と記されています。

 カオダイ教とは1928年、ベトナム南部がまだフランスの直轄植民地であった時代に教祖レー・ヴァン・チュンが興した新興宗教で、タイニン市は教徒たちが開墾してつくりあげた街です。

 この宗教は人類の救済を求めるもので、華人たちの崇拝する仏教、儒教、道教の三教を中心とし、キリスト教など外来の宗教の要素も取り入れ、統一された宗教です。至上の神である天帝は一期目にユダヤ教のモーセを、二期目に仏教の釈迦、キリスト教のイエス、道教の老子を、メシア(救世主)として遣わしたされます。そして三期目に使わされたのは自分であるとの啓示を受け、チュンはカオダイ教を興しました。

 祭壇画には神の神ともいうべき天帝を表す一つ目の「天眼」の下に道教、仏教、儒教の創始である道子、釈迦、孔子、その下には観音菩薩、李白、関帝(関羽)、次にキリスト、一番下位には周の戦略家・呂尚(太公望)が描かれています。

カオダイ教の祭壇画

 フランス植民地時代にカオダイ教は弾圧されますが、日本と結んでベトナムの独立を勝ち取ろうとし、日南造船に若者のカオダイ教徒を集めて訓練をほどこし、カオダイ軍を創設しました。日本に亡命していたグエン朝の王子、クオンデを担いでフランス植民地からの独立をも企図しました。

 第二次世界大戦の戦後はフランス側についたり、南ベトナム政権時代には懐柔されるなど毀誉褒貶の激しい時代を経ました。1975年のサイゴン「陥落」によって共産主義政権による全土統一がなされると一時は反政府運動をおこなって弾圧されました。90年代には政府公認の宗教として復活しました。ベトナム政府宗教委員会のウェブサイトでは現在、信徒124万人以上とされています。

 教会の内部は一般にも公開されています。1日のうち礼拝は4回行われています。全身真っ白のアオザイを男女とも着込んで礼拝を行う姿を見ることができます。入場の際には靴を脱ぎ、裸足で男女別に左右の入口からはいります。多少の傾斜をのぼっていくと教会の奥には大きな目玉がひとつ鎮座しており、天帝の「天眼」を表しています。

 ベトナムという国の歴史の複雑さを体感できるカオダイ教の教会観光。ベトナムをリピーターで訪れるならぜひ一度は訪ねてほしい場所です。

バーデン山はベトナム南部最高峰標高986m!ロープウェイで山頂へ

バーデン山のロープウェイ

 ベトナム、いなインドシナ半島の最高峰はベトナム北部ラオカイ省にあるファンシパン山です。標高3143m、富士山には600mほど低い山です。以前は2泊3日かけて登らなければならない山でしたが、現在はロープウェイで山頂まで軽装で登ることができます。

 タイニン省にはベトナム南部の最高峰の山、バーデン山があります。その高さ986m。ホーチミン市から車を走らせると、ベトナムからカンボジアまで続く平野にぽっかりとおわんを伏せたような形の山がみえてきます。それがバーデン山です。

 東京に住むひとなら御岳山に遠足にいったことがあるでしょう。御岳山は標高929mなので、それより57m高いことになります。御岳山は奥多摩の山々の一つなので、山としては目立ちません。バーデン山はタイニンの街からはどこからでも見える山です。

 このバーデン山は御岳山と同じく信仰の対象でもあったと見え、山の中腹にはお寺もあります。カオダイ教の寺院かと思いきや、この寺は仏教のお寺です。

 このバーデン山は徒歩での登山も可能ですが、ロープウェイも設置されていて、多くの観光客はこのロープウェイを使用して山頂へ登ります。このロープウェイを経営しているのはベトナムの不動産・アミューズメントパーク開発業者のサングループです。

バーデン山のロープウェイ

 同社はハロン湾、カットバー、ファンシパン、ダナン、フーコックにロープウェイを設置し、アミューズメントパークの目玉としています。それぞれのロープウェイは世界最長、世界最高低差などでギネスブックに掲載されていることをうたっています。ここバーデン山のロープウェイは「世界最大のロープウェイ駅」として認められている大きな駅であることを誇っています。長さでも高低差でもなかったら大型な駅を作ってしまえ、ということなのでしょうか。

バーデン山のロープウェイ頂上駅

 ロープウェイは秒速6m、通常山登りすると2時間かかる山道を、ロープウェイなら8分で頂上駅に到着します。頂上に登ると標高1000m近くありためか、気温は地上より10度ほど低く夏でも快適です。平野にポツンとある山だけあって、タイニン省の平野が遠くまで見通せます。頂上付近には花壇やビュッフェレストランも設置されています。

 なおコロナで入場が断続的に閉鎖されていましたが、2022年12月まで観光促進のためロープウェイ搭乗券は通常25万ベトナムドン(約1125円)を無料にて提供するとの報道もされています。ホーチミン市から車で2時間、バーデン山をロープウェイで頂上に登り、昼食をとってからカオダイ教寺院を訪れ、またホーチミン市へ帰る日帰りツアーも楽しめます。

文=新妻東一

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