「従業員は家族」「会社の責任の第一は従業員に」ベトナムのローラーコンベア、工場内搬送設備メーカー/ベトナム技術工業グループ株式会社

 インターナル・マーケティングという言葉がある。顧客満足度を高めるにはまず従業員自身の、勤めている会社や労働条件に関する満足度をあげることが必要だとする考え方だ。企業にとっての最初の「お客様」は自らの会社の「従業員」であり、従業員の満足度を高めることが顧客満足度を高めることは経営学の研究でも知られているところだ。

 ただ実際に自らが企業の経営者や管理職だとそれを実践するのは容易ではない。従業員すなわち労働力の賃金を生産コストとみたときには、会社の経営が思わしくない時には削減の対象となり、賃金の削減で従業員の満足度は下がってしまうからだ。

 今回ご紹介するローラーコンベアをはじめとする工場内搬送設備メーカーであるインテック社は、自社のウェブサイトで「会社の趣意」として5つの責任をあげている。その第一は「従業員に対する責任」だ。その後に「顧客」「管理職」「社会大衆」「株主」への責任と続く。

 インタビューをする前に、私はまずその会社のウェブサイトを熟読することにしている。私もこれまでに50社以上のベトナム企業、日系企業の幹部、経営者の方をインタビューしてきたが、自社の趣意に「従業員に対する責任」を筆頭にあげている企業などみたことがなかった。今回紹介するインテック社に興味を持ったのはまずこの点だった。

 企業は株主のものだとする考え方もあろう。でもそれを最後にして、まずは従業員への責任を筆頭にあげているインテック社とはどんな会社なのだろうか。

 今回お話をうかがうことができたのはインテック社の営業担当であるチャン・ヴァン・トアン氏である。彼は日本の家電・電子メーカー数社で働いた経験があったが、縁あってインテック社に転職したという。今回もZOOMを利用したリモート取材であることをお断りしておきたい。

 ベトナム技術工業グループ株式会社、略称インテック社は2011年ハノイに創業した。同社は創業社長のホアン・フゥ・タンと兄、そして友人の三人で立ち上げた小さな会社だった。最初作った工場の面積は150平米というからささやかな工場だった。

 タンはベトナム北部バクザン省の貧しい家の出身だった。ハノイの理数系の大学としては最も難易度の高いハノイ工科大学を目指したが、入学試験は不合格、結局ハノイ工業大学に入学した。卒業後は生活のために彼の専門にはほど遠い、保護帽・安全ヘルメットの販売に入社した。入社当時ベトナムでは保護帽・安全ヘルメットの需要は大きく、生活するに困らなかった。しかしときは2008年の通貨危機から経済の回復途上にあり、日系企業をはじめとする外資の生産工場がこぞってベトナムにふたたび進出をはじめた時期に重なった。

 ベトナムの工業分野は著しい発展を遂げることになると確信したタンは将来性のない保護帽の販売の仕事を辞めて独立することに決めた。

 工場の生産に必要な機材部品を提供することを思いついた。工場であればどこでも必要となる生産ラインに使用するローラーコンベアや搬送設備やその部品を提供することを思いついた。

 もちろん自分は作ったこともない商品だったので文字通りゼロからの出発だ。

 製品は日系大手を含むベトナムに進出した外資系企業から評価を得た。工場も2014年には350平米に、2016年には2000平米、そして現在はハノイに6000平米、ホーチミン市に2000平米もの工場を有するまでに拡大している。全社員数は現在南北合わせて380名だそうだ。

 創業11年にして工場の面積は創業時のなんと50倍。失われた30年、日本は経済的に発展はおろか衰退すらしている一方で、ベトナムではこの10年でうらやましいほどの発展を遂げている企業があるのだ。なんだかうれしくなってしまうではないか。

 同社の主力製品は工場内の搬送用設備であるローラーコンベアとその部品が主力製品だが、ほかに精密機械部品加工や、ファクトリーオートメーションを支えるロボットや無人搬送車(AGV)、スマートウェアハウスなど搬送設備にIoTを組み合わせた自動化ソリューションの提供もサービスのひとつだ。

 同社の顧客には日系の電子、電気、自動車・オートバイの大手メーカー、ベトナム資本の食品、通信の大企業、外資の日用品、飲料メーカーなど、ベトナムで有名なブランドを持つ企業が並んでいる。彼らの商品がいかに信頼されているのかがわかる。

 2021年の売上は2600億ベトナムドン、日本円にして15.8億円、その内ベトナム国内での売上が90%以上を占めているとのことだ。ローラーコンベア搬送設備の分野ではベトナムにおいて間違いなく1位、2位を争うトップメーカーなのだ。

 今後は日米欧の市場への輸出拡大にも挑戦したいと意気込みを語ってくれた。11月には大阪で開催された展示会にも参加、今回急な出張でインタビューできなかったタン社長もドイツへのトップセールスの出張にでかけたのだという。

 インテック社のウェブページに「企業文化」「会社の趣意」に従業員への責任を第一に持ってきている理由を伺った。

 創業社長のタン氏は自らの企業のあり方として、企業はひとつの「家」「家族」であり、従業員は自らの家族の一員とみなし、企業活動は生活や暮らしの一部であるという考えだそうだ。時間厳守や身だしなみ、顧客への丁寧な対応を同社の企業文化として対外的に示している。そのために社内研修を絶えず行い、従業員全員が自社の企業文化を大切にするよう求めている。企業の発展には技術などの知力も必要だが、同時に道徳をも大切にすべきだとの考えに根ざしている。

 ウェブ上の文言も絶えず社長が見直して手を加え、5、6年かけて改善してきたという。同社のビジョンやコアバリューも絶えず見直して手を加えてきたの結果だそうだ。

 

 トアン氏は日系企業に勤めていたので日本に出張と旅行で数回訪れたこともある日本びいきだ。初めて日本に出張した際には空港の案内が丁寧であることや、車もほとんどクラクションを鳴らさず走行し、街も清潔で服も汚れることもない。そういう日本の良さを感じたという。

 トアン氏はまた日系企業で学んだ経験をインテック社で活かし、ベトナムという国とインテック社にも自ら貢献したいとのおもいで、日系企業を退職し、同社に勤めたのだと語ってくれた。

 同社の平均年齢は40歳を超えない若い人材ばかりの会社だと胸をはるトアン氏にベトナムの工業の未来を見た思いがした。

ベトナム技術・工業グループ株式会社
Vietnam Industrial and Technical Group Joint Stock Company

プロフィール

2011年ハノイ市に設立。創業者は現在社長のホアン・フゥ・タン。資本金500億ベトナムドン、従業員数380名、ハノイとホーチミン市にそれぞれ工場を有する。主に工業用ローラーコンベア、搬送設備とその部品、精密機械部品加工、板金加工等を得意とする。国内外の有名メーカーが取引先。

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