ベトナムのネット通信インフラ事情

ベトナムのインターネットインフラ事情
ベトナム通信大手VNPTのWEBより

現代、あらゆるビジネスにおいて欠かせないのがインターネットのインフラです。海外進出、特に新興国への進出時に気になる点の1つとしては、インターネットの通信速度があることでしょう。

2021年10月現在、ベトナムのインターネット通信速度やインフラはどのような状況で、どういった問題点があるのか。現地メディアでの報道や各種統計データなどから調べてみましたので紹介します。

1. ベトナムの通信速度

ベトナムの通信速度
ベトナムでも通信速度への関心は高い(ベトナムメディアの報道より

2021年9月18日付の報道によると、ベトナム情報通信省の下でIPアドレスやAS番号の割り当てなど、インターネット運用のいくつかの側面を管理する行政機関ベトナムインターネットセンターと、ベトナム大手のISP(インターネットサービスプロバイダー)であるNetNam社とが共同で、ベトナム国内から東南アジア地域の国際回線の中継地である香港やシンガポールにあるアクセスポイントまでの通信速度を計測し、7日間の平均速度の計測結果を発表しています。

その結果、平均インターネットアクセス速度は、

■モバイルブロードバンド利用時
・ダウンロード:34.34Mbps
・アップロード:14.41Mbps

■固定ブロードバンド利用時
・ダウンロード:38.76Mbps
・アップロード:30.38Mbps

という結果でした。

ベトナムのモバイルブロードバンド事情
ベトナム携帯電話会社VinaphoneのWEBより

興味深いのは、シンガポールや香港といったベトナム国外宛てだけではなく、ベトナム国内のアクセスポイント宛てで計測した場合の速度も出ており、

■モバイルブロードバンド利用時
・ダウンロード:38.84Mbps
・アップロード:19.26Mbps

■固定ブロードバンド利用時
・ダウンロード:61.58Mbps
・アップロード:56.9Mbps

という結果でした。モバイルでも固定でもベトナム国内へのアクセスポイントで計測した方が、通信速度が早いという結果が出ています。

ベトナムの通信インフラ整備
ベトナム通信大手VNPTのWEBより

NetNam株式会社のゼネラルディレクターであるVu The Binh氏の話によると、その理由としては、ベトナムのインターネットトラフィックの大部分がベトナム国外のサーバとの通信であるため、国際回線部分のトラフィックにより通信速度が影響を受けやすいこと、またその調査時点において2本の海底ケーブルに障害(断線など)の問題もあって速度が低下していると語っています。

実は、この後者である「海底ケーブル」での障害に伴う速度低下は、ベトナム現地で頻繁に目にするニュースとなります。

2. ベトナムインターネットのアキレス腱「海底ケーブル」

例えば2021年9月7日の報道では、AAE-1(アジア-アフリカ-ヨーロッパ1)海底ケーブルシステムにおいて、障害が発生し、ベトナムの国際インターネット接続容量の約20%に影響を及ぼしているとありました。実はこのAAE-1回線での問題発生は今年2回目であり、前回は2021年5月末に問題が発生し修理完了は7月中旬と1ヶ月半ほど時間がかかっています。

ベトナムの海底ケーブル保守
海底ケーブル保守の様子(KinhteSaigonOnlineより

現在ベトナムには、AAE-1だけでなく、AAG、APG、IA、SMW3といった計5つの海底ケーブルがあり、複数の接続経路が確保されていますが、この内APGでは2021年1月9日に香港から日本間で障害が、IAでは2021年1月1日にシンガポール付近でそれぞれ障害が起きており、ベトナムから海外へのネット接続に影響を及ぼしました。(2021年1月10日の報道より
また、2021年6月22日と2021年7月19日には、AAGで障害が起き、香港やシンガポールへのトラフィックの約15%に影響、FacebookやGmailなどへも影響が出たと言われています。(2021年7月20日の報道より

ベトナムの海底ケーブル保守APG
ベトナムと日本が繋がる海底ケーブルAPG(VNPTのWEBより

なぜベトナムでだけ海底ケーブルにおいて頻繁に障害が起こるのかという理由ですが、そこには単に物理的な障害発生だけでなく、先ほど通信速度低下の理由の1つめに挙げられている「対外接続への多さ」も関係していると考えられます。

例えば2021年1月、日経新聞の「頻繁に切れる海底ケーブルの謎 ベトナムの「風物詩」」には、「ベトナム国家に関わる重要なイベントがある時に起きる」といった現地でもよく知られた噂が書かれており、政治的に重要な出来事の際は、ベトナム国民がネットを通じて外国から得る情報を制限したいといった“大人の事情”の一端も見えてきます。

ベトナムの政治上の重要なイベント党大会
2021年1月末に開催された党大会(ベトナムメディアの報道より

とまあ時期に応じてそういった一時的な要因もあるにせよ、国際回線の総容量自体は増えています。

ベトナム情報通信省、電気通信局のWEBで発表している統計データの「総国際インターネットの接続容量(Mbps)」のグラフ(下記図)では、2013年以降の接続容量がいかに拡大しているかが分かります。

総国際インターネットの接続容量
総国際インターネットの接続容量(Mbps)

同じサイトには 、「ベトナム国内の総インターネット接続容量(Mbps)」のグラフ(下記図)も乗っていますが、先に挙げた総国際インターネットの接続容量の伸びの方が急ですね。

ベトナム国内の総インターネット接続容量
ベトナム国内の総インターネット接続容量(Mbps)

公開されているのが2019年までのデータであるものの、ビジネスインフラとして必要不可欠な国際回線の容量を増やすことに、国策として力を入れている様子が伺えます。

3. ベトナムのインターネット速度の国際比較

では、ベトナムのインターネット速度を他国と比べるとどうなのでしょうか?

世界的に利用されている「Speedtest」が公開している2021年8月のデータで見てみます。
まずは、ベトナムの結果日本の結果の比較です。

日本とベトナムのインターネット速度比較
日本とベトナムのモバイルインターネット速度比較

■モバイルインターネット:世界57位(日本37位)
・ダウンロード:41.16Mbps(日本61.32Mbps)
・アップロード:18.95Mbps(日本11.66Mbps)
・反応速度(Latency):28ms(日本43ms)

日本とベトナムの固定ブロードバンド速度比較
日本とベトナムの固定ブロードバンド速度比較

■固定ブロードバンド:世界59位(日本17位)
・ダウンロード:75.3Mbps(日本180.35Mbps)
・アップロード:67.93Mbps(日本159.13Mbps)
・反応速度(Latency):8ms(日本20ms)

という結果でした。モバイルのアップロード速度や反応速度はベトナムの方が早いものの、固定の速度では日本の半分以下という結果です。

では、他の東南アジア新興国と比較するとどうでしょうか?(DL:ダウンロード速度、UP:アップロード速度、msが反応速度です)

■モバイルインターネット

タイ:50位、DL49.37Mbps、UP15.4Mbps、30ms
★ベトナム:57位、DL41.16Mbps、UP18.95Mbps、28ms
フィリピン:73位、DL33.77Mbps、UP8.63Mbps、30ms
ラオス:82位、DL32.04Mbps、UP13.88Mbps、31ms
マレーシア:89位、DL29.14Mbps、UP10.87Mbps、33ms
ミャンマー:93位、DL27.94Mbps、UP14.19Mbps、33ms
カンボジア:104位、DL23.71Mbps、UP10.33Mbps、33ms
インドネシア:112位、DL21.96Mbps、UP12.44Mbps、35ms

■固定ブロードバンド

タイ:5位、DL221Mbps、171.4Mbps、8ms
マレーシア:46位、DL103.28Mbps、UP54.52Mbps、16ms
★ベトナム:59位、DL75.3Mbps、UP67.93Mbps、8ms
フィリピン:63位、DL72.56Mbps、UP72.16Mbps、19ms
ラオス:87位、DL47.01Mbs、UP43.11Mbps、15ms
インドネシア:114位、DL26.95Mbps、UP16.10Mbps、18ms
カンボジア:120位、DL25.82Mbps、UP26.65Mbps、12ms
ミャンマー:139位、DL19.78Mbps、UP18.91Mbps、27ms

モバイル、固定共に東南アジアの新興国の中でベトナムは意外と上位にあり、かつ通信速度の絶対値も下位国の2~3倍と早いことが分かります。

参考:タイフィリピンラオスマレーシアカンボジアインドネシアミャンマー

4. 速度だけじゃないコスパの良さ

ベトナムの家庭用光ファイバー
ベトナムで光ファイバー(FTTH)サービスを手がける会社の紹介より

なおベトナムは、世界で比較した時に通信コストが安いという特徴があります。イギリスで通信コンサルティングなども行うCable.co.uk社が、2020年10月から12月の期間中、世界211の国と地域の計3,288の固定インターネットサービスプロバイダーのデータを集計し発表した結果によると、ベトナムは安さの順で世界12位、アジア6位、東南アジア1位でした。固定インターネットの料金は、

  • 世界1位:ウクライナ 月6.41ドル
  • 世界12位:ベトナム 月11.27ドル
  • 世界平均:78.14ドル

となります。(2021年3月16日付けの報道より

上記は、固定インターネットですが、モバイルインターネットも安いという特徴があります。

Vittelの新プラン
ベトナムの携帯電話会社Vittelの新プランを伝えるベトナムメディアの報道より

参考までに筆者がベトナムで利用しているプリペイド式の4Gデータ通信プラン(VinaphoneのMAX100)では、月10万ドン(約490円)で30GBまで通信可能と日本の格安SIMもびっくりの価格設定です。別途有料ですが通話もSMSも可能です。

VinaphoneのMAX100
VinaphoneのMAX100

つまり通信速度比較的に早い割に費用も安い、世界の中でもコスパの良い通信環境であることが分かります。そういった恩恵を受けてベトナム国内の加入者も増えており、情報通信省のデータで2021年8月時点においては、

■モバイルインターネット
・約6,780万契約

■固定ブロードバンド加入者:18,412,040契約
└光ファイバー契約(FTTH):17,521,303契約
└ケーブルテレビ経由:818,406契約
└専用回線:19,209契約
└xDSL経由:53,122契約

となります。

ベトナムの5G
ベトナムでは、より高速な5Gも始まっている(現地メディアの報道より

参考までに1年前の2020年8月のモバイルネットユーザーが約6,500万、固定ブロードバンド加入者が16,146,827(内FTTHが1,518万)でしたので、1年でそれぞれ+2~300万ほど増えたことがわかります。
ベトナムの人口は2020年で9,758万人ですので、モバイルネットで70%弱、固定ブロードバンドで19%弱が人口普及率となり、ベトナム人を対象にしたネットビジネスも盛んです。

5. 日本企業がビジネスで契約する際の注意点とコスト感

今まで見てきたようにコストも安く、速度もl早い、ベトナムは通信インフラの面で魅力的だ!・・・というのは、ある点では正しいですが、実は、日本企業が現地に進出して回線契約する際の注意点(落とし穴)もあります。
それが既にあげた「海底ケーブル」などにも関係する「国際帯域幅」です。

例えば、ベトナムの大手インターネットサービスプロバイダー(ISP)であるFPT Telecomが提供するプランSUPER 500のページで見てみます。

FPT Telecomが提供するプランSUPER 500
Super500のプラン紹介のページより

Download/Upload 500Mbpsとあり、一見十分な速度の様に見えますが、これはベトナム国内での通信速度です。その下には「Băng thông quốc tế」(国際帯域幅)という項目がありこの速度は、18.9Mbpsしかありません。この国際帯域幅というのがISPが保証するベトナム国外への通信速度となります。

ISPが保証するベトナム国外への通信速度

インターネットの利用用途はベトナム国内の企業とのやり取りがほとんどで、利用するWEBサービスもベトナム国内にサーバのあるサービスを使う用途がほとんどということであれば、この「国際帯域幅」はあまり重要ではない項目となります。しかし、日本本社や日本国内にいる取引先、欧米や東南アジア他国にいる取引先と頻繁にビデオMTGをする、しかも複数の国外とのビデオMTGを同時に実施するとなると、この国際帯域幅が非常に重要な項目となります。

また「国際帯域幅」は通常、月額料金プランが高いほどより大きく設定されており、この速度が欲しい場合は、高いプランを選ばざるを得ない事があります。例えば下位プランのSUPER 300の紹介ページを見ると、

FPT Telecomが提供するプランSUPER 300

■SUPER300 国内300Mbps、国際帯域幅10.6Mbps
・初期330万ドン(約1.6万円)、月額141万ドン(約6,900円)

■SUPER 500 国内500Mbps、国際帯域幅18.9Mbps
・初期660万ドン(約3.2万円)、月額812.5万ドン(約4万円)

といった違いがあります。なお、ベトナムの特徴としてインターネット費用も一括前払いをすると月額料金が安くなるプランも多く、上記SUPER500では、
・6ヶ月前払い:4875万ドン、1ヶ月あたりは同じだが初期費用が半額の330万ドン
・13ヵ月前払い:9750万ドン、1ヶ月あたり750万ドン相当で初期費用無料
といった優遇もあります。(いずれも2021年10月の調査時点)

ベトナムに進出してインターネット回線契約をする際は、「国際帯域幅」がどのくらいか、一括前払いすると値引きがあるのかといった2つの点を確認することをお勧めします。

筆者:石黒健太郎 ベトナムでのオフショア開発を行う(株)バイタリフィにて現地ビジネス情報を日々調査しています。

さらに詳細な情報を知りたい場合は
下記よりお問い合わせください。


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