コロナ禍のベトナムで短期間に急成長、タピオカをトッピングしたヨーグルトをチェーン展開/ハロンタピオカヨーグルト株式会社
- 2023/01/31
タピオカミルクティー。1980年代に台湾で生まれた飲み物。お茶にミルクと砂糖を加え甘くしたものに、キャッサバ芋のデンプンを固めたタピオカパールを加えたものだ。90年代には日本にも上陸し、今は第三次ブームと言われている。
タピオカミルクティーはここベトナムでも大人気だ。2010年代はじめにベトナム市場にお目見えしたが、2010年代半ばには本場台湾ブランドのタピオカミルクティー店がベトナム市場に進出して流行に拍車がかかり、ベトナム市場にも定着した感のある飲料となった。
私の妻も買い物に出かけたついでに、このタピオカミルクティーをよく買って帰る。子どもたちも大好きなので、よくこの飲料は飲む機会が多い。私はミント・フレイバーのタピオカミルクティーが好みだ。甘さも控えめなので、大人でも飽きがこない味だ。
ベトナムには、タピオカミルクティーの次にくるであろう飲料、デザートとして着目されているタピオカヨーグルトがある。甘さ控えめの爽やかなヨーグルトに生タピオカパールをトッピングしていただくのだが、これがここ数年ベトナムで大ヒット!ベトナム全国40省・都市に260店舗を展開する「ハロンタピオカヨーグルト」がその店の名前だ。
そのフランチャイジーを展開する企業の社長、レー・ホン・フイ氏にお話を伺った。今回もZOOMを利用したリモート取材であることをお断りしておく。
ハロン湾。ハノイから車で約2時間30分のところにある景勝地だ。大小一千とも三千とも言われる奇岩、小島が海に浮かぶ景色で有名だ。その景観が中国の桂林に似ているため、「海の桂林」と称されることもある。ベトナム北部を観光する際には必ずと言っていいほど、ツアーに組み込まれる観光地だ。クルーズ船に乗船し、船中で海鮮料理を食べながら観光したことのある人もいるだろう。
海に面しているハロン市は当然のことながら、海鮮料理が有名だ。エビや魚が豊富にとれる。クルーズ船でも海鮮料理は提供するし、市内にも海鮮料理の店がたくさんある。
そのハロン市でスアチュア・チャンチャウ、つまりタピオカヨーグルトは生まれた。ほどなくしてタピオカヨーグルトはハロン名物となった。
ハロン市は海鮮料理がおいしい。どうしてもお腹いっぱい食べてしまう。そんなときヨーグルトは食べすぎたお腹の消化にもよいというふれこみだった。タピオカヨーグルトを食べて、そのおいしさにおみやげに持ち帰るひともいた。
そんなタピオカヨーグルトにビジネス・チャンスを見出したのが、現在タピオカヨーグルトを販売する「ハロンタピオカヨーグルト」社の元社長レー・ホン・フイだった。
彼は1982年、ハノイ生まれ。国民経済大学を卒業し、コーヒーショップやタピオカミルクティー、レストランなどの飲食業に関わってきた。
彼は友人とともにハロン市にあるタピオカヨーグルトの店の店主であるファム・マイン・ハーにこう持ちかけた。
「タピオカヨーグルトは大人気だ。ハノイにお土産に持って帰るひとも多いほどだ。でもヨーグルトだから冷蔵が必要だし、品質を保って客が持ち帰るのに不安が残る。そこでハノイに店をださないか。ハロン湾で注文をとってもハノイの店からお客様に届けることもできる」そう持ちかけてハノイ市内に1号店をもうけた。2019年のことだった。
タピオカヨーグルトの販売をはじめると、これが飛ぶように売れる。最初は一店舗出しただけだったが、旺盛な需要に一号店だけでは供給がおいつかない。次々に店を市内にオープンした。
当初はフレイバーなしのタピオカ入りヨーグルトだったが、コーヒーショップやタピオカミルクティーの店を経営した経験から、抹茶、カカオ、カフェ、ストロベリーなどのフレーバーを加えた商品も開発した。
消費者の健康面のことを考えて、保存料や増粘剤などの食品添加物は使用せず、牛乳やタピオカなどの原料も品質のよいものを選ぶよう心がけた。価格も3万〜3.5万ベトナムドン(約170円から200円)とリーズナブルな価格設定だ。
人気がでると当然類似商品や類似点が現れた。フイが確認しただけでもベトナム全土で20から30ものニセ商品、ニセブランドが現れた。しかしほとんどの模倣商品を売る店は2、3ヶ月で市場から消えていった。それは彼らに商品に対するこだわりがないからだとフイいう。2022年、ついにほとんどの競合相手が姿を消した。
2019年に創業し、2020年にはいるとベトナムはコロナ禍に見舞われた。タピオカヨーグルトはしかしその店舗数を増やし、全国に63省・都のうち、40省・都市に店舗が存在し、その数は260を数える。そのうち直営店は20店舗だそうだ。工場はハノイ、ダナン、ニャチャン、ホーチミン市に4つあるとのことだ。
どうしてコロナ禍にあって、これだけ拡大できたのだろうか、フイに質問した。
「コロナ禍にあって人々は健康についてよく考えるようになったんです。食べ物を選ぶ時に、人々はより身体によいものを摂るようにようになったんですね。ヨーグルトは身体や胃腸にによい食品であるとのイメージがあったことがコロナ禍のベトナム市場で消費者に広く受け入れられたのだろうと思っています。もう一つ、タピオカミルクティーは台湾で生まれたものですが、タピオカヨーグルトはベトナムで生まれたものだ、自国産だという認知を得られたのも大きいと思います」そう、フイは答えた。
ヨーグルトのおいしさをマイナス45〜55度に冷やしフリーズドライ技術で固形化した「ピクニック」という商品も開発した。同社のヨーグルトを気軽に、どこでも食べられるようなスナック菓子になった。ベトナムの技術による機械設備に投資をし、製造・販売も2022年に開始した。
最後に個人あるいは会社としての夢、これから目指す方向性はなにか?そう社長のフイにたずねてみた。
「ヨーグルトはどちらかというと大人向けの食べ物ですよね。子どもたちはヨーグルトよりアイスクリームが好きです。当社としては今後の新商品としてタピオカヨーグルトに加えて、良質な原料から作られたタピオカ入りアイスクリームを開発中です。早めに市場に送り出したいですね」そうフイは語ってくれた。
そしてさらなる成長のために海外進出も考えている。コロナが一定収束している今、海外市場に挑戦したい、なかでも日本はその進出先として有望だとフイはいう。
昨年2022年12月には日本のテレビ局の取材も受け、2023年1月には日本でタピオカヨーグルトが紹介されたそうだ。メディアへの露出をきっかけに日本市場でのフランチャイズ展開を考える企業があれば、ぜひ紹介してもらいたい、そうフイはいう。
ベトナム生まれのタピオカヨーグルト。タピオカミルクティーの次にくる商品として期待をもって、その将来をこれからも見守って行こう。
ハロンタピオカヨーグルト株式会社
Ha Long Pearl Yogurt Joint Stock Company
プロフィール
2019年ベトナムに創業。同社のタピオカ入りヨーグルトはコロナ禍にあっても急速に店舗を拡大、この3年間でベトナム全土40省・都市に260店舗をフランチャイズ展開、工場もハノイ、ダナン、ニャチャン、ホーチミン市に持つ。タピオカミルクティーの次にくるスイーツ、飲料として期待されている。
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